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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
5章:冒険者活動も楽じゃない

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74:襲来

「――マルコシアス!?」


ひらり、ひらりと羽根が舞い落ちてくる。

衝撃波を受けたマルコシアスは中空で体勢を立て直し、キッと一点を睨み据える。


マルコシアスが睨むその先に、()は居た。


「はは、妙な気配がすると思ったら……見たことのない魔獣だな」


騎士達が見上げる、遙か上空。

大地に影を落とす、一つの姿。

漆黒のマントを翻し、黒い仮面で顔を覆ったその姿は、まさに物語の悪役そのもの。


羽根もないのに中空に佇み、下界を見下ろしている。

その男の姿に、歴戦の騎士団長までもが顔色を変えた。


「お前は……魔族か?」

「ただの魔族だと思うか?」


仮面の下、口元が僅かに弧を描く。

男が笑った瞬間、森の木々がざわりと揺れた。


いや、揺れたのは木々だけではない。

空気そのものが揺れている。

気の弱い者ならば、おそらくこの場に立っていることさえ難しいだろう。

それほどのプレッシャーが、上空のあの男から発せられている。


虚空に佇む黒尽くめの男を、闇よりも黒い猫がじっと見上げていた。


「は……魔王復活の噂も、あながち嘘ではないってことか……」


そう言って笑うマクラーレン騎士団長の額には、じっとりと汗が滲んでいる。

バールは平気そうにしているが、普通の人間ならば、おそらく正視出来ないほどの威圧感(プレッシャー)だろう。

そんな中、彼は剣を構えて部下に檄を飛ばした。


「お前等、王国騎士団の根性を見せてやれ!!」

「「「おお!!」」」


自分達を鼓舞するような騎士の声に、上空の男が鼻で笑う。

その余裕を崩さぬ態度を苦々しく見上げながら、騎士団長が傍らのハーヴィー兄様に声を掛けた。


「いいか、この場は俺達に任せて、その子達を連れてさっさと離脱しろ」

「しかし、それでは――」


マクラーレン団長の指示に、ハーヴィー兄様が眉を寄せる。


「いいか、その子は本来ここに居るべき人間じゃない。我等と共に死線に立つ必要なんてないんだ」


――死線。

彼は、今正に死を覚悟しているのだろうか。

じっと上空を見据えながら剣を構える姿に、胸が締め付けられる。


「そして――どうか、このことを王都に伝えてくれ」


ゼフや召喚獣による偵察が出来ない状態では、誰かが持ち帰った情報が全てだ。


先遣隊は既に全滅していて、魔の森奥地に高位の魔族――おそらく魔王が出現した。

そのことを王城に伝えられるか否かで、王国の出方は大きく変わってくる。


――でも。

そこまでの情報ならば、全て魔の森(ここ)に来る前に知っていたの。

おそらく、上に報告しているかは分からないが、ゼフを動かすことが出来るティアニー公爵(お父様)も私と同程度の情報は掴んでいるだろう。


私が力を隠しているから、目立ちたくないからって理由で、伏せていた事柄。

その情報を得る為だけに、彼等は命を()けている。

そのことが、酷く申し訳なく感じてしまう。


そんなことの為に、命を捨てないで――そう叫びたくてたまらない。

でも、言葉を発することが出来ない。

それが彼等の仕事であり、彼等の誇りなのだろう。


私達を逃がす為に立ち塞がるマクラーレン団長の背中が、やけに大きく感じられた。




「行こう、ルーシー」

「お兄様……」


ジェロームお兄様が先を急ぐように、私の肩を抱く。

上空から、黒い魔族によって途方もない魔力が地上に降り注いでいる。

騎士達はそれを(かわ)しながらも、何とか応戦しようと弓や槍を手に構えていた。


「――っっ」


私達の前方を遮るように、土塊が盛り上がって人の形を象る――いわゆる石人形(ゴーレム)だ。

傷付いたマルコシアスに代わって、オセが石人形と戦い、道を切り開く。

後方からは、騎士達の悲鳴ばかりが聞こえていた。


つい、気になって後方を確認してしまう。

今となっては、立っている騎士の方が僅かだった。

黒尽くめの魔族の圧倒的な力により、一人、また一人と倒れていく。


「ルーシー、見るんじゃない!」

「でも……っ」


見るなと言われて、振り返らずに居られるだろうか。

彼等は私達を逃がす為に、敵わぬだろう相手に真っ正面から立ち向かっているというのに。


ズキズキと、心が痛む。

私が力を隠そうとさえしなければ、彼等を助けられるかもしれないのに。

今こうしている間にも、バールの力を解き放てば、あんな魔族に負けはしないのに。


「ルーシー!!」


オセが石人形にのしかかり、石人形が倒れた隙を突いて、ジェローム兄様が私の手を掴んで走り出す。

半ば強引に引っ張られるように走りながらも振り返り、最後に目にした光景は――、




地上に降り立つ黒尽くめの魔族と、それに片腕を切り飛ばされるマクラーレン団長の姿だった。

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