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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
5章:冒険者活動も楽じゃない

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70:指名依頼

数日更新が滞ってしまい、申し訳ございません。

職業病が悪化して、処置したり何だりとしておりました。


他作品との兼ね合いもあり、今後は完結まで週2更新くらいのペースで書き進めていければ良いなぁと考えています。

6章で完結予定ですので、今暫くお付き合いください。

あの後も、私達は順調に依頼をこなしていった。

そろそろDランク昇格も見えてきただろうかというある日、依頼を無事にこなして冒険者ギルドに戻ってきたら、いつもとはどこか空気が違っていた。

下品な笑い声が飛び交うこともなく、妙な静けさが漂っている。


「な……なんか、今日は静かだね」

「そうね……いつも賑やかな人達も、静かに飲んでいるみたい」


冒険者ギルドには、依頼を終えて帰ってきた冒険者達がくつろげるように、酒場が併設されている。

依頼を終えた者、一日中酒場でくだを巻いている者など様々だが、彼等の表情がいつになく重い。

重いというか、やけにシリアス味を感じるような……?


「あ、おかえり」


いつもの受付カウンターで、マイクさんが出迎えてくれる。

彼の表情だけ見るならばいつも通りの冒険者ギルドだが、周囲の空気はまったく違っていた。


「あの、何かあったんですか?」


キャロルが周囲をはばかりながら小声で声を掛ける。


「実はね……魔の森に向かった調査隊と連絡が付かなくなったようなんだ」


魔の森の調査隊。

確か高位ランクの冒険者達が、何人も駆り出されているのではなかったか。


なるほど、仲間の身を案じて口数が少なくなっているのか。

冒険者は常に危険と隣り合わせであるとはいえ、国に雇われた仲間達が突然連絡が付かなくなったとなれば、心配にもなるのだろう。


「暗い話は止めておこうか。いよいよ皆Dランクに昇格だよ。はい、これ新しいギルドカード」

「ありがとうございます!!」


マイクさんがカウンターに四枚のギルドカードを並べ、それぞれ受け取る。

Dランクとなると、若葉マーク卒業なんだって。

冒険者として慣れてきたと判断される頃合いみたい。


「おめでとう、皆」


背後で私達を見守っていたジェローム兄様が、柔らかな表情で声を掛けてくる。

アカデミーの先生だけあって、冒険の時にも何かと私達にアドバイスをしてくれていた。

お兄様にとって私は妹だけど、私以外も可愛い教え子なんだろうな。


「ありがとうございます」

「うっす」


最初は男だからとスチュアートとデリックには厳しめの視線を向けていたが、流石にもう慣れたみたい。

まぁ、スチュアートは今でも時折睨まれているけど。


「これでもっと難易度の高い依頼も受けられるな!」


デリックが拳を握りしめる。

そう、Dランクになれば受けられる依頼の幅がぐんと広がるのだ。

前より難易度の高い依頼が受けられるようになって、報酬も増えるし、ランク査定に必要と言われる貢献度も稼げるだろう。


「それで……だね」


ほんのりお祝いムードが灯るギルドの一角で、マイクさんがなぜか表情を曇らせる。


「Dランクに昇格したからには、君達にもギルド側から依頼をすることが出てくるのだけれど」


ギルド側からの依頼――いわゆる指名依頼というシステムだ。

特定の冒険者を指名して出される依頼で、冒険者側は拒否することも出来るが、その分昇格の為の査定には響いてくる。


「ルシール嬢に、ギルドから指名依頼が出ているんだ」

「私に……?」


皆の視線が集中する。

Dランクに昇格してすぐに指名依頼だなんて、そんな話は聞いたことがない。

指名依頼と言ったら、それこそ先の魔の森調査隊のように高位ランクの冒険者にばかり出されるものだと思っていた。


「調査隊と連絡が付かなくなったことを受けて、今度はもっと大規模な派兵を行うことが決まったんだ」


マイクさんの声音は、どこまでも暗い。


「ルシール嬢には、そこに同行してほしい」

「え……」

「ちょっと待ってください!!」


皆が驚き呆然とする中、真っ先に声を上げたのはスチュアートだった。


「そんな危険な場所に、どうしてルーシーが!?」

「彼女は召喚獣を操るだろう。召喚獣ならば先行偵察も容易だし、かつ羽が生えた召喚獣ならば上空から魔の森奥地の様子を知ることも出来る」


……なるほど。

私よりも、稀少な召喚獣が目当てらしい。

確かに悪魔達を使えば偵察はスムーズに行くだろう。


「ギルドはルーシーが誰か分かっていて言っているのか?」


お兄様の底冷えするような声が響く。

ああ、そりゃお兄様はそうなりますよね……。

先遣隊と連絡が付かなくなるような危険地帯に公爵令嬢を同行させるなんて、正に前代未聞。

ティアニー公爵家としては、喧嘩売ってんのかって思っても不思議は無い。


「無論、彼女の安全には最大限配慮する。その上で、危険地帯の偵察に召喚獣は有益だと判断されたんだ」


判断された(・・・)と言っているあたり、マイクさんにとってもこの指名依頼は本意では無いのだろう。

こちらはDランク上リたての、しかも学生だ。

これから先も冒険を続けていこうと思えば、今ギルドの反感を買うのは得策ではない。

発言力を持たない初心者冒険者に対しての指名依頼は、実質命令と言っても過言ではないだろう。


まぁ、そう言うほど弱い立場でも無いんですけどね。

流石に公爵家の一人娘に対しては、ギルドとしても慎重にならざるを得ないだろうし。

だから実質私達の担当となっているマイクさんから、こうしてお伺い(・・・)が来ているのだろう。


「……まぁ、良いですけど」

「「「ルーシー!?」」」


私の言葉に、皆が一斉に声を上げる。

確かに危険な場所だとは思うけど、私には悪魔達も付いているし。

それに、召喚獣が居れば偵察が捗るというのは、確かなことだと思うんだよね。


Dランクなりたての新人冒険者、しかも公爵令嬢に指名依頼を出さなきゃいけないなんて、ギルドも相当大変な状況なんだろう。

ならば世話になっている冒険者の一人として、少しくらい手伝ってあげても良いと思うんだ。


「ああ、その間アカデミーはお休みすることになるのかな?」

「それに関しては、ギルドから直接話を通しておくよ。公休扱いになるはず」

「だったら問題ないです」


問題ないと言いつつ、お兄様の視線が痛い。

勝手に引き受けて、怒っているかなぁ。


でも、困っている人が居るのに放っておくことも出来ないし……

実はちょっとだけ、興味があったりもするんだよね。


お兄様には悪いけど、この目で直接見てこよう。

魔の森で、今何が起きているのかを。

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