表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
5章:冒険者活動も楽じゃない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/103

69:猫吸い?

詰所からスチュアートに送って貰うと、屋敷の玄関でジェロームお兄様が待ち構えていた。


「ルーシーを送って来てくれて、ありがとう」

「あ、は、はい」


お兄様は笑顔なのだが、なぜだか圧が掛かっている気がする。

私の考え過ぎだろうか。


「じゃ、また明日、な」

「うん。早朝稽古頑張ってね」


スチュアートが片手を上げて去っていく。

その姿を見送っていると、両肩に手が置かれた。


「随分とクラスメイトと仲が良くなったみたいだな」


お兄様?

なんだか声が怖いのですが……。


「クラスメイトと言っても、スチュアートだよ?」

「クラスメイトはクラスメイトだ」


一緒に冒険にも出掛けているのに、何を今更。


幼い頃から親友のキャロルは特別として、それ以外林間学校で一緒だったデリックとスチュアートは、私の数少ない友人だ。

う、こう考えると本当に友人少ないな……。


この世界、特に貴族社会は学生といえど魔窟だ。

爵位が高く、王太子に妙に気に入られていた私は、擦り寄ってくる相手も多ければ、疎ましげな視線を投げかけてくる者も多い。

気兼ねなく付き合える友人が二人も増えたと考えれば、御の字なのかもしれない。


私の友人達とは、お兄様も仲良くしてほしいんだけどな。

異性の友人となると、簡単にはいかなさそうだ。

スチュアートがティアニー騎士団に入りたいなんて知ったら、どう反応するだろう……。




「おいで、ルーシー」


夕食を終えてお茶の時間、お兄様に手招きされて大きなソファーの隣に腰を下ろす。

魔王復活の噂と魔の森で起きている異変については、アカデミーとも連携を取っているのか、最近はお兄様もお忙しそうだ。

こうしてゆっくり一緒にお茶をいただくのは、数日ぶりのことになる。


「そっちじゃなくて、こっち」

「わっっ」


ぐいと持ち上げられ、下ろされた先は、ジェロームお兄様の膝の上。

彼の腕に抱きかかえられた形で、膝の上に腰を下ろしている。


「お、お兄様!?」

「ルーシーが足りない」


お兄様はぐいと私を抱きしめると、髪に顔を埋めるようにして深く息を吐き出した。

……既視感があると思ったら、これ、猫吸いだ。

猫に顔を埋めて、すーはーするやつ。

お兄様、私を猫か何かと勘違いしておりません?


いやまぁ、我が家の猫は下手に触れるととんでもない火傷をしかねない猛獣な訳ではありますが……。


「お兄様、私は物ではありません」

「そんなことは、分かっている」


顔を上げ弱々しく微笑むお兄様の目元には、うっすらと(くま)が浮いていた。

ウィレミナお母様に良く似た、整った顔立ち。

その深い海のような色の瞳に、うっすらと影が差し込んでいる。


「お兄様、随分とお疲れなのではありませんか?」


目元を覗き込みながら頬に手を添えると、お兄様の身体が一瞬だけ強張った。


そっと、指先で目の下をなぞる。

やっぱり、(くま)だ。


「ちゃんと眠れていますか?」

「あ、ああ……」


お兄様の返答は、どうも曖昧だ。

落ち着かない様子で、ぷいと視線を逸らされてしまう。


「お忙しいのは分かりますが、ちゃんとお休みを入れてくださいね」

「だから、こうしている」


再び、お兄様の腕が私の身体を強く抱く。

甘えん坊なお兄様、まるで大きな弟が出来たみたい。


トクン、トクンと、心臓の音が鳴り響く。

この音は私のものか、それともお兄様のものなのか。


よくよく考えたら、男女でこのシチュエーションってちょっと……問題よね。流石に。

とはいえ、お疲れな様子のお兄様を振り払う気にもなれない。


頬に添えられたままの手に、お兄様が擦り寄ってくる。

柔らかな銀色の髪が、指先をくすぐる。


ちょっと恥ずかしいけど、たまにはこんな時間もいいかな……なんて。




すっかり冷めた紅茶は、ブレンダが新しく淹れ直してくれました。感謝。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらで公開している短編小説「どうして私が出来損ないだとお思いで?」が、ツギクルブックス様より書籍化されることになりました!

どうして私が出来損ないだとお思いで? 販促用画像


また、現在ピッコマで掲載されている小説

【連載中】二股王太子との婚約を破棄して、子持ち貴族に嫁ぎました

【連載中】捨てられた公爵夫人は、護衛騎士になって溺愛される ~最低夫の腹いせに異国の騎士と一夜を共にした結果~

【完結済】魔族生まれの聖女様!?

こちらもどうぞよろしくお願いします!
どうして私が出来損ないだとお思いで? 表紙画像 二股王太子との婚約を破棄して、子持ち貴族に嫁ぎました 表紙画像 捨てられた公爵夫人は、護衛騎士になって溺愛される ~最低夫の腹いせに異国の騎士と一夜を共にした結果~ 表紙画像 魔族生まれの聖女様!? 表紙画像
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ