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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
5章:冒険者活動も楽じゃない

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68:スチュアートの夢

キャロルには先に帰ってもらって、スチュアートと二人で向かった先は、前にも訪れたことのある詰所。

この時間は、いつもハーヴィー兄様が兵士達に訓練を行っている。


早朝は騎士団で訓練を行っていることもあり、ハーヴィー兄様は毎日大忙しなのだ。

そんな中、私達と一緒に冒険に出る時間も工面してくれているのだから、頭が上がらない。


「ハーヴィー兄様!」


私の顔を覚えていたらしい兵士に案内されて、詰所の中へ。

書類と羽ペンを手にしたハーヴィー兄様が、私の声に弾かれるようにしてこちらを向いた。


「ルーシー! と、スチュアートか。どうした、今日は依頼ではないのだろう?」


なんと、今日はサービスショットですよ!

ハーヴィー兄様の眼鏡姿!!


書類に目を通していたからか、細い金属フレームの眼鏡をかけている。

ハーヴィー兄様の眼鏡をかけた姿、初めて見ました。

逞しい騎士様というイメージだったけど、こういうのも絵になるね……。


「こんばんは、ハーヴィーさん。今日はお願いがあって来ました」


ハーヴィー兄様の前で、スチュアートが姿勢を正す。


ハーヴィー兄様ほどではないけど、スチュアートも現在鍛えている最中の騎士候補生なんだよね。

逞しいハーヴィー兄様と、成長途中のスラリとした細マッチョ体型のスチュアートの組み合わせ、なかなか眼福です。

なんて暢気に考えていたら……、


「僕の師匠になってください!!」


スチュアートが突然、ハーヴィー兄様に頭を下げた。


え、師匠?

スチュアートがハーヴィー兄様に弟子入りするってこと?


流石のハーヴィー兄様も、羽ペンを握りしめたままヘーゼルブラウンの瞳を瞬かせている。


「王城で早朝訓練を見ているって聞いて、僕もそこに参加させてもらえないかと思って」

「それでルーシーを連れてやってきたのか?」

「あー、はい」


私のことを指摘されれば、スチュアートが少しだけ気まずそうな笑顔を浮かべる。

まぁ、私がお願いすればハーヴィー兄様は大抵のことは断らないもんね。

スチュアートは大事な友人だし、彼の頼みとあらば聞いてあげてほしいって思うもん。


「それもあるんですけど……」


少しだけ言いにくそうに、スチュアートが言葉を続ける。

他にもまだ何かあるのかな。


「僕、ティアニー騎士団に入りたいんです」

「えっっ」


スチュアートの言葉に、今度は私が間の抜けた声を上げてしまった。


「ティアニー騎士団って、うち……だよね?」


当たり前だ。

騎士団を抱えるティアニー姓の家は、他にない。


スチュアートは、伯爵家の三男だ。

確かにうちの騎士団にも貴族家の子弟は居るけど、まさか友人の口から我が家に仕える話が出るとは思わなかった。


「ティアニー騎士団は、王国騎士団よりも遙かに狭き門と言われているぞ」

「分かっています。だからこそ、ハーヴィーさんにお願いしに来ました」


そうなのですか???

騎士団の最高峰は王国騎士団だとばかり思っていましたが……あれー。

チェスターみたいな砕けたタイプでも普通に務まっているから、緩いところだと思っていたよ、うちの騎士団。


「それなら、稽古を付けるくらいは構わないだろう。騎士団の早朝稽古に、一緒に参加するといい。私から話を通しておく」

「ありがとうございます!!」


どうやら、スチュアートのお願いは叶ったようだ。

良かったねーって言いたいところだけど、その内容が斜め上過ぎていまだに受け止めきれていない。


いやいや、うちの騎士団に入りたいんなら、ハーヴィー兄様じゃなく私に言えばいいんじゃない?

縁故採用みたいな形になるのが嫌だったのかな。

外から見たらどうかは分からないけど、割と緩いところよ、ティアニー公爵家。


いまだ呆然とスチュアートを見つめていると、ふと、彼と目が合った。

へにゃりと表情を綻ばせる様は、僅かに少年らしい面影を残している。


「ビックリさせたかな」

「それはもう」


スチュアートの言葉に、こくこくと頷く。


「前はどこの騎士団でもいいやって思っていたんだけどな」

「それが、どうしてうちの騎士団に?」


問い返せば、スチュアートの顔にはにかんだような笑みが浮かんだ。


「……へへっ」


瞬間、パキリと奇妙な音が響いた。

音のした方に視線を向ければ、ハーヴィー兄様が手にしていた羽ペンが、真ん中から綺麗に折れている。


「ハーヴィー兄様?」

「なんでもない」


ハーヴィー兄様は折れた羽ペンを握りしめたまま、わざとらしく咳払いをしている。

どうしたのですか、いきなり。

筋骨隆々な騎士様は、ペンを持つにも力の加減が必要なんです~なんて……んなアホな。


「別に大それた願いは持っていません。ただ、傍に居てお守り出来たらいいなぁって……」

「そうか」


そんなハーヴィー兄様に対し、スチュアートが慌てたように声を上げた。

重々しく頷くハーヴィー兄様に、安堵したように息を吐く。


意味深なやりとりが気になるような、詳しく聞くのが怖いような……。




こうして、スチュアートはハーヴィー兄様に師事して騎士団の早朝稽古に参加することになった。

夢に向かって頑張るクラスメイトを応援したい気持ちは、もちろんある。

あるけど、その夢が自分の家に仕えることだって言われると、なんともむず痒い気分になる。


私が口を利くのは簡単だけど、それじゃ頑張っているスチュアートに対して失礼な気もする。

きっと応援しながら見守るのが一番なんだろうなぁ。


ああ、それにしても何とも落ち着かない。

なんで我が家なんだ~~~~~~!

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