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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
5章:冒険者活動も楽じゃない

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65:異変の兆候

「オセ、どうし――」


言いかけた私の前に、ジェローム兄様とハーヴィー兄様が立ち塞がる。

デリックとスチュアートもそれぞれ武器を構えて、キャロルを守るように立っていた。


パキリと、枝を踏む音が響く。

じめっとした空気が、一気に冷え込んだ気がした。


音のした方から姿を現したのは、先ほど見たジャイアントリザードに良く似た鱗の浮いた肌。

しかし、ジャイアントリザードとは明らかに違う。

彼等は、二本の足で立っていた。


ギョロリとしたは虫類独特の瞳が、こちらを見据える。

人間の身体と、トカゲのような頭。


「リザードマン……」


そう。私達の視線の先に居るのは、二体のリザードマンだ。

ジャイアントリザードと似た肌を持ちながらも、その瞳には確かな知性が宿っている。

こちらが武器を構えるのを見て、彼等は静かに両手を挙げた。


「争ウツモリハナイ」


リザードマンの人間とは異なる口から発せられたのは、少しくぐもっていて聞き取りにくいけれど、大陸で使われている共通語だ。

両手を挙げるその仕草からも、一般的な常識は持ち合わせているのだろう。


リザードマン。

亜人種ではあるが、エルフやドワーフのように人間に近い姿ではなく、鱗の浮いた肌は獣人以上に魔物に近いと言われている。


我がペンフォード王国は、亜人種にも人権が認められている。

リザードマンだからと、即敵対する訳では無い。

ただ隣国タウナー王国のように、人間以外の亜人種を認めない国もこの大陸には少なくない。

その為に彼等のような見た目でそれと分かる亜人種は人前に出ることは珍しく、私も転生してからというもの、リザードマンを目にしたのは初めてだ。


「この湿地帯にリザードマンが居るとは、聞いたことはないが……」

「我等ハ北部ノ里ヲ離レテ、コノ地ニ避難シテキタ」


ハーヴィー兄様の声に、リザードマンが答える。


「北部の里って、それ――」

「アア、魔ノ森デ起キタ異変ノセイダ」


魔ノ森で起きた異変。

その言葉が聞こえた瞬間、誰かの息を呑む気配がした。




王都北部の湿地帯に避難してきたリザードマンは、二十名ほど。

ごく小さな集落が、魔の森から一時的に避難してきたらしい。


ハーヴィー兄様は彼等から魔の森の状況を詳しく聞くべく、王都の騎士団に連絡を入れた後に、リザードマンの集落へと向かった。

私達はジェロームお兄様に保護されながら、冒険者ギルドへと戻ってきた。


依頼は無事に達成。

初めての報酬も得た訳だが、何とも落ち着かない幕引きになってしまった。




「魔王の復活って……本当のことなのかな」


ギルドを出てすぐに、スチュアートが呟く。


「んー、今頃ハーヴィー兄様が詳しく調べていると思うけれど……」


それ以上のことは、答えてみようもない。


「そんな暗い顔してないでさぁ。初めての依頼を無事に成功させたんだぜ、皆もっと喜べよ!!」


デリックが盛り上げようと、明るい声を上げる。

が、どう見ても空回りだ。

皆先ほど会ったリザードマンの言葉が、気になって仕方が無いみたい。


魔の森の異変。

前に大恐慌(スタンピード)が起きた時は、どこか遠くで発生した出来事のように感じていたけれど、今は違う。


ギルドに戻ってきた頃には、すっかり陽は傾いていた。

少しずつ濃さを増す茜色の陽差しの中、警備隊の兵士達が忙しなく走り回る。


私達が気付かぬ間に、世界は少しずつ変貌を遂げているかのようだった。




次にアカデミーに登校した時、教室の中がどこか浮き足立っていることに気が付いた。

不思議に思いながらも、キャロルと二人並んで自分達の席へと向かう。

教室の中に、普段は見慣れない他クラスの生徒が複数訪ねてきているようだ。


「おめでとうございます、フィリス様!」

「こうなるだろうと思っておりましたのよ」

「発表を今か今かと心待ちにしておりました」


皆の目当ては、どうやらフィリス・クワイン伯爵令嬢らしい。

治癒能力に秀で、巷で聖女と持て囃されているらしい彼女だが、今日のチヤホヤされっぷりはこれまでよりも群を抜いていた。


「お友達が王太子殿下の婚約者に選ばれるだなんて、こんな光栄なことはないですわ」


女生徒の声に、ああ、なるほど――と合点が行った。

騎士団で絶大な人気を誇るらしい聖女様が、ついに王太子殿下の婚約者に決定したと……それで教室内が沸き立っているのだろう。


おめでたい話だが、別に興味がある訳でもない。

これでライオネル王太子殿下が私に絡むこともなくなるなら、嬉しい限りなんだけど……なんて、暢気なことを考えていたら。


「しかも、クワイン令嬢が迷い子だったなんて! 学友として、私も鼻が高いですわ」


予想外の言葉が耳に飛び込んできた。

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