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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
5章:冒険者活動も楽じゃない

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63:私の親友は凄いんです

懺悔します。

冒険を舐めていました。


戦闘に自信が無いとか、そんな話ではない。

まさか、移動がこんなにしんどいとは思わなかった。


王都の冒険者ギルドを出発して、そろそろ四時間。

その間、ひたすら歩きっぱなし。


だらだら歩いていたら、日が暮れてしまう。

早めに目的地に着いて、ジャイアントリザードを討伐して、ギルドに戻らなければならない。

そう考えたら、散歩気分で歩いている訳にはいかないのだ。

早足とまではいかないが、私が考えていたお散歩ペースよりは相当に早い。


よくよく考えてみたら、この世界に転生してからというもの、大半が馬車での移動だった。

一応は公爵令嬢ですからね、私。

自分の足で歩くなんて、ごく短い距離くらいだった。


こっそりと皆の様子を窺えば、体力馬鹿のデリックは勿論、日頃から鍛えているスチュアートとハーヴィー兄様も、冒険者として活動していたジェロームお兄様も涼しい顔。

なんと、私と同じご令嬢であるはずのキャロルまでもが皆と同じペースで歩けている。


疲れを表に出さないようにはしているつもりだが、このままでは皆に迷惑を掛けてしまうかもしれない。

いざとなればオセを呼んで、背中に乗せてもらおうかなぁ。

豹の乗り心地って、どうなんだろう。

しなやかそうなイメージがあるから、そもそもちゃんと背中に跨がれるのだろうか。


「ルーシー、大丈夫か?」


そんなことを考えていると、ハーヴィーお兄様が私の顔を覗き込んできた。


「あ、は、はい!」


突然のことで、声が上擦ってしまった。

歩き詰めで疲れてはいるんだけど、私一人の為に休憩なんて、流石に申し訳ない。

咄嗟に笑顔を取り繕うが、ちゃんと笑えていたかどうか。


「疲れたなら、私が抱いていこうか?」

「えっっ」


ハーヴィー兄様の申し出は有難いけれど、流石に気が引ける。

そこまで疲れているように見えたのかなぁ。


「大丈夫です」

「そうかい? 疲れたら、いつでも言うといい」


武器を携えたハーヴィー兄様、騎士として働いている時よりも軽装とはいえ、私よりも大変だろうに。

これだけ歩き続けて息一つ乱れておらず、さらに私を抱いて歩けるって、どれだけ体力があるのだろう。


「おい、ハーヴィーお前っ」


感心していると、ジェロームお兄様が反対側に立って、なぜかハーヴィー兄様を睨み付けていた。


「ルーシー、疲れたらいつだっておぶってやるからな」


こちらはおんぶですか。

二人とも、私のこと子供だと思っていませんか。

まぁ、確かにここまで歩くだけでかなりヘロヘロなんですけど。


「冒険って、移動も大変なんですね……」


二人が相手だからか、つい本音が零れてしまう。


「ああ、俺が学生の頃はパーティーメンバーと一緒に公爵家(うち)の馬を使っていたな」


その手があったか!!

いや、家の力を借りるなんて「これだから貴族の坊々は……」と、馬鹿にされてたりするかなぁ?


荷馬車を借りようにも、それだけのお金がかかる。

全員が貴族家の子弟だからお金には困ってないけど、冒険に出るからには、報酬の範囲内でやりくりしたいよね。


「キャロルは大丈夫なの?」


話題を変える為にキャロルに話しかけようと彼女の隣に移動して、ふと気が付いた。

ふわりと、心地よい風が吹いている。


「あ、私は風魔法を発動しているから」

「これ、キャロルの魔法なの!?」


キャロルの周囲には、涼しげな風が吹いていた。

しかも、方向的にはキャロルの後方から吹いている気がする。

キャロルが足取り軽やかに歩いているように見えたのは、風に後押しされてのことだったんだ。


「あんまり強い風は吹かせられないんだけど、これくらいなら、ね」

「すごいよキャロル!」


キャロルの傍に居るだけで、汗ばんだ身体が癒やされるみたい。

爽やかな風に吹かれて、気分も軽やかになる。

私がキャロルにべったりくっついて歩いていることに、二人のお兄様は複雑な表情をして顔を見合わせていたけれど、まぁいいのだ。

抱っこされたりおぶられたりするより、やっぱり自分の足で歩きたいもんね。




草原を抜けて、鬱蒼とした森の中へ。

キャロルの近くに居たから気付かなかったけど、いつの間にか空気はじめっと肌に纏わり付くようで、周囲の木々には長い蔦が絡み付いている。


「そろそろだと思うんだけど」


デリックが地図を見ながら呟く。

ぬちゃりと、誰かの足音が鳴った。

すっかり足下もぬかるんで、柔らかくなっている。


「気をつけておけよ」


警戒を促す、ジェロームお兄様の声。

ここはもう、ジャイアントリザードの生息圏内なのだ。


「僕達が先に行きます」


スチュアートの言葉にデリックも頷き、二人が先頭に立つ。

その後ろに私とキャロル。

最後尾をジェロームお兄様とハーヴィー兄様が固める形だ。


背の高い木々が生い茂る湿地帯は、日光が遮られて常に薄暗い。

先ほどまで火照っていた身体が、今は寒ささえ感じている。


濡れた足音が続く中で、突然、甲高い金属音が鳴り響いた。

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