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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
5章:冒険者活動も楽じゃない

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61:「知ってた」

冒険準備万端でハーヴィーお兄様を待っていた私の前に立ち塞がったのは、顔に笑みを張り付かせたジェロームお兄様だ。

顔は笑顔なのに腕を組んでこちらを見下ろすものだから、迫力満点。

お兄様、ちょっと怖いです。


「えーと、クラスメイトから冒険に行こうって誘われまして……」

「なんで俺には何も言ってくれないんだ?」


口元は弧を描いているのに、目がマジです。

あれ、ひょっとして怒っているのでしょうか……。


「言う必要も無いかなぁって……」

「そんな訳無いだろうに」

「ええぇ」


お兄様の指が私のほっぺたを摘まむ。

ちゃんと報告するべきだったのかなぁ。


いつも私の周辺では、ゼフの眷属が様子を見守ってくれている。

だいたいのことはゼフを通じてお父様に報告が上がっているだろうから、報連相がついおろそかになってしまいがちなんだよね。

プライバシーも何もあったもんじゃないけど、慣れてしまうととても楽なんだなぁこれが。


「どんな依頼を受けるんだ?」

「それはまだ……皆で張り出されている依頼から選ぼうって」

「そうか。なら、さっさと出発するぞ」


うん?

今「さっさと出発するぞ」って言いました?


「お兄様……ひょっとして、一緒に行くおつもりですか?」

「俺が一緒だとダメなのか?」


ハッ!?

公爵邸の空気が一瞬で凍り付いた気がする。

そういえば、軽装ではあるけれどもお出かけ準備万端ですね、お兄様。


え、これひょっとしてお兄様にもお声がけした方が良かったのかな。

でも、私だけ保護者二人も伴って行くとか、恥ずかしいじゃない。

皆に何て言われるか……。


「えーと、ハーヴィーお兄様が迎えに来てくれることになっているので……」


空気が凍り付いた公爵邸内部が、さらに猛吹雪(ブリザード)に襲われてしまった。


「だ、だから出発はそれを待ってからということで――」

「俺には何も言ってないのに、ハーヴィーには報告済だと?」


お兄様、目が怖いです。

そんなにずずいと近寄って、見下ろさないでください。

少しずつ後退するうちに、あっという間に壁際にまで追い込まれてしまった。


「ぐ、偶然街中で会ったもので……」

「ほう。詳しく聞かせてもらおうか」


結局冒険者ギルドでチンピラに絡まれたことや、その後街中で襲撃されそうになって撃退したことまで、事細かに報告させられたのでした。

ひーん。




ハーヴィー兄様が到着したのは、それからすぐのこと。


「おはよう、ルーシー。それに、ジェロームも」

「人のことをおまけみたいに言うな」


ジェロームお兄様ったら、ハーヴィー兄様の顔を見るなり不機嫌そうに突っかかっている。

どうしてこんなに反発するようになっちゃったのかしら。

私が覚えている限り、幼い頃はジェロームお兄様もハーヴィー兄様を慕っていたはずなのになぁ。


「別におまけとは思っていないよ。ただ、今日はルーシーを迎えに来たんだ」

「ルーシーなら俺が連れて行くから、心配ない」

「おや、今日の為にわざわざ冒険者登録まで済ませてきたと言うのに」


騎士であるハーヴィー兄様が、冒険者登録までしてくれたんだ。

本当に、一緒に冒険に出てくれるんだなぁ。

なんだか新鮮な感じ。


「冒険者登録なら、俺も在学中に済ませてある」


あれ、ジェロームお兄様は在学中に冒険したことがあるの?

ジェロームお兄様が冒険者活動をしていただなんて、初耳だ。

誰とパーティーを組んで、どんな冒険をしていたんだろう。

今度詳しく聞いてみたいな。


「引率は一人で十分だろ。俺はアカデミーの教師でもあるんだからな」


ジェローム兄様が、ハーヴィー兄様に帰った帰ったとでも言うように、手をパッパッと振る。

ちょっと、せっかく来てくれたのにそんな言い方は無いんじゃない?


「令嬢が二人も居るんだ、護衛は必要だろう。そもそも、最初に同行を申し出たのは私の方だからな」


ハーヴィー兄様?

どうしてハーヴィー兄様まで売り言葉に買い言葉になっていますか。

表向きはいつもの穏やかな表情だけど、目が笑ってないですよ。


「えーと」


どうしたものかと、背後を振り返る。

ブレンダとチェスターが、諦めたように首を横に振っていた。




「……と言う訳で、一人増えちゃいました……」


結局ジェロームお兄様の説得は諦めて、三人で冒険者ギルドまでやってきた。


「知ってた」

「だろうな」

「そうなるでしょうね、当然」


デリック、スチュアート、キャロルの三人はそれぞれ違う言葉を口にしながらも、皆同じ表情でうんうんと頷いている。


ねぇ、どうしてそんな反応なの?

三人とも、こうなることが分かりきっていたって顔じゃない。


キャロルに至っては、二人のお兄様が睨み合う様子を、生温い笑顔で見つめている。

悟りでも開いたかのような表情だわ。

どうしちゃったのキャロル。


「まぁ……こうなるわよね」


何か呟いているけど、一体何がどうなるっていうの。


さらに一人増えての、六人パーティー。

私だけ保護者二人連れって、流石に恥ずかしいんだけど……もう、お兄様達のばかぁ。

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