55:パーティー発足?
あれから私とお兄様の仲は急速に進展――する訳でもなく、かといってぎこちなくなる訳でもなく、いつも通りの日常を過ごしております。
そう。いつも通りなのよ。
そのいつも通りが問題だから困ってしまう。
お兄様、過保護過ぎない????
今までは兄妹だからなぁと思っていたが、そのフィルターを取っ払ってみたら、ちょーっとばかり行き過ぎているような気が……しなくも無いのですが……。
朝は一番に挨拶をして、夜眠る前も必ずおやすみを言いに来て、アカデミーでは昼食を一緒にとって、男子生徒達に声を掛けられそうになればいつの間にか後ろに立っていて、帰りはキャロルと一緒に馬車に乗り込むまで視線を感じるし、私に声を掛けようとしていた男子生徒は気付けば私の顔を見るだけで怯えた表情をするようになっていた。
え、何、この状態がいつも通りなの?
疑問に思った私は、堪らずブレンダに確認してみたこともありました。
「平常運転ですね」
返ってきたのは、素っ気ない一言。
こんなのおかしいよ! とばかりに、チェスターにも聞いてみたところ、
「何を今更」
もっと短く終わってしまった。
そうかー。
これが普通かー。
え。いいの、それで。
今まで誰も疑問に思わなかったってこと?
私自身がそうだから、人のことは言えないんだけど……。
これまで、私達兄妹ってどう見られていたんでしょう。
キャロルに聞いたら、生温い微笑みが返ってきた。
ああ、考えたくない……。
という訳で私の日常は今まで通り、いつも通り。
唯一の懸念点であるフィリス・クワイン令嬢だが、聖女だの何だのと言われて王城に呼ばれることが多くなった。
治癒魔法が使える彼女は、騎士団では引っ張りだこなのだろう。
私としては、顔を合わせる機会が減って、とても楽です。
それだけ彼女が王城で力を付けているということなのかもしれないけど、羨ましいとはこれっぽっちも思わないし、私には何の関係も無いことだからね。
こちらはこちらで、のんびり楽しく過ごして行こうと思います。
なーんて考えていた矢先。
「なぁなぁ、冒険者に興味はないか?」
休み時間に、デリックが突然こんなことを言い出した。
「冒険者……?」
「課外活動の一環でさ。ギルドに登録してみようって思っているんだ」
なるほど。
そう言えば、前にダンフォード先生も言っていた。
冒険者向けの講義もあるんだけど、そっちは定員オーバーで弾かれてしまったんだよね。
男子生徒を優先するという理由だった。
そりゃ、アカデミー側としても公爵令嬢に変なことを教える訳にはいかないって考えなんだろう。
この世界では、男女の扱い差はごく当たり前のことなのだ。
「ティアニー嬢は、召喚術を使うんだろう? 冒険者としては貴重だし、凄い戦力になるって聞いてさぁ!」
まぁ、召喚したの猫ですけどね。
ただの猫じゃないのは、この際置いておこう。
「ギルドに登録したら、パーティーを組んで冒険することになるのかな?」
「ああ。今のところ、俺とスチュアートだけ。ティアニー嬢と、あとデイヴィス嬢もどうだ?」
すぐ隣の席のキャロルに視線を移す。
キャロルのスキルは、風魔法。
本人は港町を預かる家らしく「船を動かす時に便利そう~」なんて喜んでいたけど、キャロルも地味に冒険者向きのスキルなんだよね。
冒険者志望のデリックが賜ったスキルは、剛力。
力自慢で、如何にも冒険者向きだ。
騎士志望のスチュアートは、剣豪。
こちらも騎士を目指す彼にとっては、有難いスキルだろう。
「四人でパーティーを組んで冒険するってこと?」
「そっちの方がいいだろ。気心も知れてるしさ」
キャロルの問いに、デリックが頷く。
なるほど、この四人でパーティーかぁ。
確かに気楽ではあるよね。
他に誰かパーティーメンバーを募集するとして、私達学生は冒険に出れる時間に限りがあるし、初めての相手と上手く連携が取れるか、また相手との経験差、分配等の問題も発生しかねない。
学生同士で集まって一つのパーティーを組めるなら、それが一番良いだろう。
「ルーシーがいいなら」
そう言って、キャロルがちらりとこちらを見る。
キャロルが反対しないなら、断る理由は無い。
「うん、いいんじゃない? 楽しそうだし」
「よし、決まりな!」
こうして、四人でパーティーを組んで冒険者活動をすることになった。
まずは放課後、ギルドに行って冒険者登録だ。
冒険者ギルドって色々な噂は聞くけれど、実際はどんな感じなのかなぁ。
楽しみ半分、不安半分。
ま、四人一緒だから、どんなことがあっても大丈夫だよね……!









