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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
4章:波瀾万丈学園生活の幕開けです

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53:兄と妹

序盤から少しずつ加筆・修正しています。

2章に「幕間:悪魔は蹂躙する」「18:二人の兄貴分はどちらも過保護」を追加しました!

お兄様にこってり絞られたらしいチェスターは、廃人のような目をしていた。

対して、お兄様は涼やかなお顔だ。


王都の公爵邸。

当主であるお父様も女主人であるお母様も不在の為に、今の主はお兄様と言っても過言ではない。


使用人達の様子を(つぶさ)に観察し、統率する。

チェスターみたいな不良騎士は、ごく一部。

それ以外は皆お兄様の手足のように働いている。


若くとも、ちゃんと主の風格を秘めているのだ。


「ルーシー、今日の食後は私の部屋でゆっくりしないか?」

「分かりました」


お兄様に声を掛けられ、トクンと心臓が跳ねる。

元々話をしなきゃと思ってはいたものの、いざその機会が訪れると尻込みしてしまうのは人の(さが)と言うものだろう。


食後のデザートと紅茶はお兄様の部屋に運んでもらうことにして、二人で屋敷内を移動する。

席を立った瞬間にお兄様が手を差し伸べて、エスコートしてくれる。


……自然な手つきだ。

慣れている……のかなぁ。


これまでお兄様の交友関係なんて、意識したこともなかった。

気にならないと言えば嘘になるが、お兄様がアカデミーに通っていた頃は、私は領地にいたんだもの。

お兄様からの手紙や、お父様から時折聞く報告でしか、状況を知る術はなかった。


あぁ、そうか。

私は、もっと知りたいのだ。お兄様のことを。

今更ながらに自分が抱く欲求に気が付いて、戸惑ってしまう。


今回みたいに突然噂を耳にして、冷静で居られる気はしない。

きっと毎回取り乱してしまうのだろう。

せめて、最初から知っていたなら……あんなにショックを受けなくても済むのにな。


まぁ、いつ聞いたところで、結局ショックなんだろうけどね。




「ルーシーは、今回の件……耳にしているのか?」


デザートのタルトと紅茶を並べたブレンダは、既にお兄様の部屋を辞した。

静かな部屋で、テーブルに向かい合うようにして、お兄様と二人きり。

自然と、掌に汗が滲んでくる。


「噂……というと?」

「俺と、デイヴィス嬢のことだ」


お兄様の言葉に、小さく頷く。

その瞬間、はぁぁ~……とお兄様の口から盛大なため息が零れた。


「阿呆共がピーチクパーチクと……」


あ。これ、お兄様相当怒ってらっしゃるわ。


「大丈夫です、キャロルが誤解を解いてくれたので」


慌てて声を上げたら、なぜかじっとりとした視線が向けられた。


「誤解を解いたってことは、少しでも真に受けたということなんだろう?」

「あ……ま、まぁ……ほんのちょっとだけ……」


何故だろう、お兄様の視線がとても痛い。

でも、これだけはハッキリさせないといけないんだ。


「お兄様だって、もう成人を迎えた大人ですし……いつかは伴侶を迎えて、共に公爵家を支えていくことになるのでしょう? だから……」


何故だろう、胸が痛い。

言葉の一つ一つが氷柱のように鋭く尖って、胸を抉る。


「いつかはそういう日が来るんだって、覚悟はして――」

「ルーシー」


私の言葉を、お兄様が遮る。

有無を言わさぬ強い語気に、ハッとなってお兄様の顔を見遣る。


この世界に来て、一番見慣れた顔。

いつも一番近くに居て、私を守ってくれる……お兄様の顔だ。


そんな彼が顔をくしゃりと歪め、再びため息を吐いた。


「お兄様……?」


お兄様が無言のまま立ち上がり、こちらへと近付いてくる。

私が座っているソファーは大きめのものだから、隣に座れなくもないけれど……ちょっと手狭ではないかしら。

そんなことは気にせずに、お兄様は私の隣に腰を下ろすと、そのまま私を膝の上に抱き上げた。


「わっっ」


あっという間に、私の身体はお兄様の膝の上。

幼い頃は、よくこうしてご飯を食べさせてもらっていたっけ……懐かしい。

でも、流石にアカデミーに入学するような年になって、この扱いはどうかと思うの。


「お兄様」


頬を膨らませれば、苦笑いが返ってくる。


「別に子供扱いはしていないぞ」

「していますー」


つい、拗ねたような声になってしまう。

こんなんだから、子供扱いされるのかもしれない。


「してない、してない」


そう言いながらも、お兄様は私の髪をゆっくりと撫でつける。


「一度だって、子供扱いしたことなんて無かったんだ」


あやすような、優しい声。

こんな風に言いながら、子供扱いしていないだなんて、全然説得力無いのだけれど。


「それに――」


お兄様が、どこか遠くを見るようにして呟く。


「一度だって、妹だと思ったこともない」

「え――?」


その言葉に、ドキリと心臓が跳ねた。

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