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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
4章:波瀾万丈学園生活の幕開けです

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40:合宿二日目

合宿二日目。

剣術や弓術を専攻する生徒にとっては、数少ない実戦経験を積む場だ。

ダンフォード先生主導の下、希望者を対象に、森に入っての特別授業が開催されることになった。

スチュアートとデリックの二人も、当然参加する。


狩猟で得た獲物は、その場で(さば)いて調理することが出来る。

とはいえ、獲物を狩ることと獲物を(さば)くことは、また別の技術。

流石に学生達に(さば)くのは難しいだろうと、そこは先生達がやってくれるようだ。


「大物を捕ってくるからな!」

「調理はよろしくね」


なんて意気揚々と森に向かう二人を見送って、私はキャロルと二人のんびりと自由時間。


「狩り、上手く行くと思う?」

「どうだろうね。夜ご飯が豪華になるといいけど」


私達はキャロルの誘いで、のんびりと野山を散策していた。

キャロルの手には、野草事典がある。


「最近、国外からも色々な商品が入ってくるようになったから。興味があって、色々調べてたんだ」


そう言いながら、茂みに視線を落とす。


「調べても、うちの領地だとあまり実物を見ることがなくって」

「そうだよね」


海に面したデイヴィス領にも野草くらいは生えているだろうが、伯爵邸は海からそう遠くないところに位置している。

山岳物に生えている野草を直接目にする機会は、あまり無いのだろう。


少し歩けばヨモギやオオバコなど、日本でもおなじみの野草を発見出来た。

この世界、案外元の世界と近いのかもしれない。


「あ、ルーシー。この草、食べられるみたい」

「どれどれ」


キャロルが見付けた野草を手がかりに、二人で事典を覗き込む。


「これかな?」

「クレソンかぁ。二人が大物を捕ってきてくれたら、ステーキの付け合わせによさそうだね」

「わ、楽しみ!」


野草は何も食べられるものばかりではない。


「この大きな葉っぱ、腫れたところに貼ると腫れと痛みが治まるんだって」


なるほど、湿布みたいなものか。

前世の日本ほど医学が発展していない分、こういった民間療法が重宝されるのだろう。


「せっかくだから、食べられる野草を色々探して夜ご飯を豪華にしちゃおう」

「そうだね、二人を驚かせないと」


なんて張り切って、事典とにらめっこしながら野草摘みに精を出す。

戻ってきたスチュアートとデリックが二人で協力して子鹿を仕留めたと聞いて、逆にこちらの方が驚いたのだが、それはそれで良いハプニングだ。


今日は子鹿のステーキだ~なんて皆でウキウキしながら、皆で夕飯の仕度に取りかかる。

先生達に獲物を(さば)いてもらう間、先に他のおかずを仕込むことにした。


「すげぇ、なんだこれ。草がいっぱい」

「ルーシーと二人で摘んできたのよ」


笑顔で説明するキャロルとは対照的に、野草の山を見たデリックは苦い表情を浮かべている。

昨日スープをよそう時、さりげなく野菜よりもお肉を多めにしていたものね。

きっと野菜の類があまり好きではないんだろう。


ちゃんと食べないと、大きくなれないぞ少年。

その点、スチュアートは野菜もお肉ももりもり食べていた。

とても健康的でよろしい。


なんて、今世の私も同い年なんだけどね。

つい年上みたいな目線になってしまう。


「昨日と同じスープでいいかなぁ」

「いいと思うよ。あれ、美味しかったし」

「なら、また作るか~」


四人で手分けをすれば、夕飯の仕度もスムーズだ。

予想外に、スチュアートもデリックも器用に包丁を使っていた。

皆で野菜を切って、鍋でコトコト煮込む。


「そろそろ肉の準備、出来たかなぁ?」


鍋を掻き回しながら、デリックが呟く。

野菜たっぷりのスープより、やはり自分達で仕留めた子鹿肉ステーキが食べたいようだ。


「私、見てくるね」


キャロルがそう言って、軽い足取りで広場へと向かう。


我々の班は、一年Sクラスの二班。

無事に(さば)き終わっていたなら、クラスと班が書かれた札が貼られて、広場に置かれていることだろう。


お肉が到着する前に、採ってきた野草を並べて辞典と照らし合わせる。

鹿肉があるなら、付け合わせどころか香草焼きでも良いかもしれない。


自分達で仕留めた獲物を、自分達で採った香草で焼き上げる。

なんて贅沢だろう。


「は~、腹減った」

「スープならもう食べられるぞ」

「スープより肉が食べたいんだよ、肉が」


男子二人の会話に笑いながら、のんびりとキャロルを待つ。

子鹿肉、私も楽しみだな~。

どうせなら、(さば)く前も見ておくんだったな。

二人の戦果を見逃してしまった。勿体ない。




焚き火で煮込んでいるスープの蓋が、時折コトコトと音を立てる。

森のあちこちから、調理をしているらしい他班の生徒達の悲鳴が上がっていた。

今日の食事作りも、大変みたいだ。

他人事みたいに考えながら、ただ時間だけが流れていく。


「……ねぇ」

「おかしい、よな。やっぱり」

「うん……」


誰からともなく、口を開く。

スチュアートとデリックも、同じことを考えていたのだろう。


「……キャロル、遅くない?」


広場に向かったはずのキャロルは、スープが柔らかく煮込まれた今になっても、いまだ戻っては来なかった。

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