表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
2章:王城は鬼門です

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/103

17:砂浜の大宴会

港に戻ってきたティアニー公爵家とヒントン辺境伯家の面々の驚きようったら、大変なものだった。

それはそうよね、沖ではクラーケンと軽く戦闘に入ったもののすぐに見失ってしまって、以後捜索を続けていたと言うのだもの。

何度か銛と魔法を射掛けただけで、討伐の手応えなどあるはずもない。


その後水中でクラーケンが暴れた為に、大波が発生。

波から逃れつつ、彼等はいつ海中からクラーケンが現れるか分からぬ恐怖と戦いながら、港まで戻ってきたのだ。


その恐ろしいクラーケンが浜辺で切り刻まれ、焼かれているのだもの。

呆気にとられて当然だ。

とはいえ、そんな彼等も一口食べたらすっかりクラーケンの虜。

戻ってきた騎士達も交えて、砂浜での大宴会突入だ。


「クラーケンといっても、たいしたことはなかったな!」

「ああ。なんと手ぬるい」


騎士達は楽勝ムードで勝利の祝杯を挙げている。

手ぬるいのは当たり前、船団との交戦を避けて海中に沈んだクラーケンは、レヴィヤタンによって仕留められたのだから。

とはいえ、レヴィヤタンの存在を知られると面倒だからね。

このまま騎士団の皆さんのおかげということにしてしまおう。




「この度は本当に、何と御礼を言ったら良いか……」


キャロルのお父さん、デイヴィス伯爵がお父様とお母様に頭を下げている。

せっかく海沿いに領地を構えながら、長年クラーケンのせいでまともに船を出すことも出来なかったのだものね。

あんな恐ろしい魔物、普通に挑んだのならとても倒れるものではない。


子供達が浜辺ではしゃぎ、大人達も酒瓶を持って集まり出す。

長年の恐怖が解けた港町は、まるで祭のように沸いていた。


「良いのよ、デイヴィス領にはいつもお世話になっているのだし」


ニコニコ笑顔で応えるお母様。

人柄の良さが滲み出ている。


「もし今後諸外国との交易を再開するならば、是非我が家にも一枚噛ませていただきたいのだが……」


お父様はと言えば、早々にこのデイヴィス領という駒をどう動かしていくかで頭を働かせているようだ。

内陸に位置するティアニー領にとって、デイヴィス領との繋がりは、今後大きなものになっていくのかもしれない。


「ルーシー、本当にありがとう!」


感謝されているのは、お父様とお母様ばかりではない。

父の姿を見てか、娘のキャロルも目に涙を溜めて私に抱きついてきた。


「良かったね、キャロル」

「ルーシーが騎士団の皆さんを説得してくれたからこそだよ」


今回の港町解放は、私がキャロルとお茶会で仲良くなったことに端を発する。

そう考えたら、あのお茶会も少しは役に立ったと言えるのだろうか。

あまり良い思い出はないのだけど……。


とはいえ、御礼を言われるのは何とも気恥ずかしい。

私は皆をここまで連れてきただけで、後はひたすら浜辺で遊んだりハマグリを食べていただけなんだよね。

クラーケンを倒してくれたのはレヴィヤタンだし、表向きはティアニー公爵家とヒントン辺境伯家の合同騎士団の手柄になっている。


キャロルから向けられる好意がむず痒くて、どうにも落ち着かずにいたら、お兄様がぽんぽんと頭を撫でてくれた。

ティアニー公爵領を出る迄は、あんなにお兄様とぎこちなかったのに。

今では騎士達でごった返す砂浜を歩くにも、お兄様と手を繋いだまま。


「ルーシー、向こうでは貝とクラーケンを一緒に串焼きにしているみたいだ」

「本当?」


お兄様に手を引かれて、砂浜を歩く。

近付くにつれて、香ばしい匂いが漂ってきた。


「ん~~~、やっぱり貝も美味しい!」

「うちでも、もっと食べられるようになるといいんだけどね」


いっぱい食べて、地元の人達からいっぱい感謝されて、皆笑顔だ。

思い付きで提案したことだったけど、デイヴィス領まで足を延ばして、本当に良かったなぁって。


「ルーシー、ちょっと」

「え?」


お兄様がハンカチを取り出して、私の正面に立つ。

そのままゴシゴシと頬を拭かれる様は、まるで幼子にするようで、少し恥ずかしい。

いやまぁ、今の私は六歳。

幼子と言われてもおかしくない年齢なんだけどさ!


「はい、綺麗になった」


もういいよとばかりに頭を撫でられる。


「ありがとうございます、お兄様」


御礼を伝えたら、良く出来ましたとばかりにニコリと微笑まれた。

すっかり子供扱いされている……。

お兄様だって、まだ九歳なのに……。

そう思いはすれど、もっと幼い私には何も反論出来ず、結局こうしてお兄様に面倒を見られてしまうのだ。


おっかしいなぁ。

ついこの前までは、お兄様に嫌われていないか、不安になっていたはずなのに。

王城で婚約者に指名されそうになってからと言うもの、お兄様がすっかり世話焼き人になってしまいました。


「ルーシーはお兄さんと仲が良いんだね」


今ではキャロルにまで言われる始末。

悪いことではないから喜ぶべきなのかもしれないけど、どうにも落ち着かない。


面倒事は全て解決したのだから、良しとするべき……なのかなぁ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらで公開している短編小説「どうして私が出来損ないだとお思いで?」が、ツギクルブックス様より書籍化されることになりました!

どうして私が出来損ないだとお思いで? 販促用画像


また、現在ピッコマで掲載されている小説

【連載中】二股王太子との婚約を破棄して、子持ち貴族に嫁ぎました

【連載中】捨てられた公爵夫人は、護衛騎士になって溺愛される ~最低夫の腹いせに異国の騎士と一夜を共にした結果~

【完結済】魔族生まれの聖女様!?

こちらもどうぞよろしくお願いします!
どうして私が出来損ないだとお思いで? 表紙画像 二股王太子との婚約を破棄して、子持ち貴族に嫁ぎました 表紙画像 捨てられた公爵夫人は、護衛騎士になって溺愛される ~最低夫の腹いせに異国の騎士と一夜を共にした結果~ 表紙画像 魔族生まれの聖女様!? 表紙画像
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ