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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
2章:王城は鬼門です

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15:海の男?

目の前にはどこかなよっとした大男。

軽くウェーブした黒い髪が、日に焼けた肌を覆っている。

黙っていれば、美青年と言えなくもない。

しかし――、


「いやだぁ、分からないのぉ? アタシよぉ、レ・ヴィ・ヤ・タ・ン♪」

「レヴィヤたん?」


自分で自分に“たん”を付けるのは、どうかと思う。

それはそれとして、レヴィヤ。レヴィヤ……。


うーん。誰だろう。


「え、本当に分からないの?」


私が腕を組んで考え込んでいると、彼は少ししょんぼりとした様子でこちらに手を伸ばしてきた。

そんな彼と私の間に、お兄様が割り込む。


「妹に手を出さないでいただきたい」

「あらぁ、手を出すだなんて人聞きが悪いわぁ」


大袈裟に嘆いてみせはしたものの、お兄様に腹を立てた様子はない。


「話には聞いていたけど、本当に仲が良いのねぇ。小さな騎士(ナイト)様だわぁ」


ベヘモットのことを知っていた口振りからしても、悪魔の一人だとは思うんだよね。

でも、当てはまる悪魔が浮かばない。


レヴィヤ、レヴィヤ……。

レヴィヤ、たん………………あれ?


「ひょっとして、レヴィヤタン?」

「最初っからそう言っているじゃな~い!」


“たん”は接尾語のたんではなく、そこまで含めての名前でしたか。


レヴィヤタン。

ベヘモットが陸の怪物なら、こちらは対をなす海の怪物だ。

リヴァイアサンという呼び方の方が、一般的に馴染みがあるかもしれない。

悪魔や怪物に分類されてはいるが、神が天地創造の五日目に作り出したとも言われる、規格外の存在なのだ。


それが何故か、デイヴィス領の市場でしなを作っている。


「ルーシー、知っている人?」

「えーと、確かゼフのお友達だったと思う」


お兄様の怪訝な視線を受けて、あらかじめ決めておいた言葉を返す。

嘘は吐いていないんだよね。

だいたいの悪魔は、ベルゼブブのことは知っている訳だし。


「よろしくね、お坊ちゃん」


レヴィヤタンにウインクされて、お兄様がぞわわと身体を震わせる。


「ここに居るってことは、手伝いに来てくれたの?」


海のことなら、レヴィヤタンに任せれば万事解決だ。

クラーケンがどの程度の相手なのかは分からないが、海の中でなら敵無しだろう。


「いえ、久しぶりに潮風にあたりに来ただけよぉ。アビゴールが居るなら、わざわざアタシが出向く必要も無いでしょ~」


カラカラと笑うレヴィヤタンを、お兄様は胡乱げに見つめている。

まぁ、見た目は完全に怪しいオネエだよね。


レヴィヤタンはハマグリ屋さんのおじさんから焼きハマグリ? を受け取って、汁を啜っている。

完全にオフモードというか、遊びに来ているようだ。


でも、ねぇ。


「ね、皆の様子を見てきてはもらえない?」

「あら、どうして?」


レヴィヤタンは目をぱちくりと瞬かせた。

あまり長くない睫毛が、バッチリとマスカラで彩られている。


「お父様とお母様、それに公爵家と辺境伯家の騎士達が向かっているの。万が一にでも、皆に怪我をしてほしくないから」


悪魔にこんなことを訴えるのも、おかしなものだ。

彼……それとも彼女? にどう思われるかは、正直分からない。


それでも、今回は私の我が儘に皆を付き合わせてしまった形だ。

お父様にしてもお母様にしても、わざわざデイヴィス領に手を貸す必要は無いのだ。

いくら恩を売ることが出来たとしても、大事な騎士達を危険に晒してまで危険に踏み込む必要は無い。

私がキャロルを助けることを望み、そして悪魔という確実にクラーケンを倒せる手段があるからこそ、お父様は承知してくださったのだ。


お母様に至っては、悪魔の存在を知らない。

完全に娘可愛さ、娘の友達を助ける為に実家の騎士達を動員してくれている。

そんな人達を、危ない目には遭わせたくない。


私自身は、何の力も持たない。

でも海の魔物として名を馳せているレヴィヤタンなら、きっと皆の役に立てるから――!


「ん~、まぁいいわ。そういうことなら、手を貸してあげる」


必死の説得が通じたのかどうか。

やれやれとばかりに笑いながら、レヴィヤタンが歩き出す。

向かう先は、波が打ち付ける砂浜。

振り向いた彼女は、再び短い睫毛に覆われた右目をパチパチと瞬かせた。


「明日は大物が揚がるから。バーベキューの準備をしておいてちょうだいネ♪」


チュッと軽やかなリップ音を残して、レヴィヤタンが立ち去る。

その背中を見送りながら、お兄様が苦々しげに呟いた。


「ゼフの友達には……変なのが多いな……」


お兄様、ごめんなさい。

それについては、何もフォロー出来ません。




砂浜に超巨大生物が打ち上がっていると連絡が入ったのは、翌朝のことだった。

[小話]

リヴァイアサン、ベヒーモスといった通りの良い名ではなくレヴィヤタン、ベヘモットとしているのは、参考資料と表記をあわせている為だったりします。

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