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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
2章:王城は鬼門です

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14:食欲には勝てません

そう、今回デイヴィス領に足を延ばした一番の目的は、クラーケン退治だ。

せっかく海があるのに、船を出せないんじゃ勿体ない。


当然、悪魔を使って退治したなら目立ってしまう。

だからこそのヒントン辺境伯家の武力と、ティアニー公爵家の権力だ。


聞けば、以前デイヴィス領が交易を盛んにしていた頃の船は、今でも残っているのだとか。

その船をデイヴィス伯爵から提供してもらい、また船の操縦は地元の漁師やかつての船員達に声を掛け、主な戦闘はヒントン辺境伯家とティアニー公爵家の騎士達が行う。

表向きは、そういうことにしてある。


現在、ティアニー公爵家の騎士団には最強の顧問がいる。

その名も、アビゴール。

エリゴルやエリゴスとも呼ばれる、悪魔の一人だ。

戦争に長けた戦略家であり戦術家、こと戦に絡むことならば彼の右に出る者は居ない。


ここ数年騎士団の教育を任せたら、喜んじゃってね。

喜んだのは騎士達ではなく、アビゴール本人とお父様な訳だが。

今回もデイヴィス領に呼び出して、大規模な軍事作戦を指揮してもらおうということになった。


当然、悪魔の手を借りたなんてバレる訳にはいかない。

そこで、デイヴィス領に隣接する生粋の武闘派ヒントン辺境伯家の名を借りようということになった。


デイヴィス領で交易や大々的な漁業が再開されれば、その影響はヒントン辺境伯領にも及ぶ。

武のヒントン辺境伯家と財のティアニー公爵家が手を組んだとなれば、クラーケンを倒せても不思議は無いという筋書きだ。


当然、皆を危険な目に遭わせたくはない。

船にはアビゴールだけではなくゼフとバールにも乗り込んでもらって、クラーケンを始末してもらう算段だ。




クラーケンとの戦いに臨む皆のことは、当然心配だ。

心配ではあるのだが、だからと言ってただじっと待っているだけというのも退屈過ぎる。


と言うわけで、私とお兄様とキャロルは海沿いに遊びに来ていた。

当然子供だけではなく、侍女のブレンダと護衛騎士のチェスターも一緒だ。

バールと比べたら何とも頼りない護衛ではあるが、もし何かあってもそこら辺を飛んでいる蝿に声を掛ければゼフに伝わるから、問題は無いだろう。


「ねぇキャロル、この貝はどうやって食べるのが美味しいの?」

「やっぱり網焼きが一番だけど、スープにしても良い出汁が出るってお母様が言ってたわ」


市場を歩けば、潮の香りが鼻を(くすぐ)る。

前は栄えていたのだろう市場も、人はまばらだ。

クラーケンさえいなくなれば、この港町はもっと活気を取り戻すのだろう。


「興味があるなら、焼いてあげようか?」


露店のおじさんが、そう声を掛けてくれた。

キャロルお嬢様と一緒に居る私とお兄様は、デイヴィス伯爵家のお客人と知られているのかもしれない。

私達を見守る港町の人達、皆の視線が優しい。


「是非、お願いします!」


この世界、コンロなんて便利な物は無い。

魔石を使った魔道具はあるにはあるが、ほとんどが一点物で、とても高価な代物(しろもの)だ。


無ければ作ってしまおうか……なんて考えるから、目立ってしまうんだろうなぁ。

焚き火の上で、朝採れたばかりらしい新鮮な貝を網焼きにする。


大きさは、ハマグリくらい。

網の上でカタカタ揺れるのを観察していたら、そのうちぱっかりと口が開いて、中にはジューシーなおつゆがたっぷりと溜まっていた。


「ほら、出来たぜ。熱いから気をつけるんだぞ」

「はーいっ」


焼き上がった貝の殻を持って、つゆを零さないように、ふーっ、ふーっと息を吹きかけて冷ます。

猫舌はこういう時に損だよね。

すぐに食べられないんだもん。

猫舌だからというより、子供の身体だからかもしれない。


「うわちちっ」


案の定、舌先を少し火傷してしまったようだ。

でも、とても美味しい。

口いっぱいに、磯の香りが広がる。


うーん、この世界に醤油が無いことが残念でならない。

ここに醤油を一垂らししたら、完璧なのに……!


「これは……なかなか良いな」


お兄様も、ハマグリもどきを頬張って目を見開いている。


「美味しいですね、お兄様」

「ああ」

「お土産に持って帰れたら、ベヘモットが美味しい料理をいっぱい作ってくれるんだろうけどなぁ」


デイヴィス伯爵領からティアニー公爵領までは、距離がある。

新鮮な魚貝を持って帰るというのは、なかなか難しい。


とはいえ、魔物が居て魔法がある世界だ。

氷魔法を使えば、冷凍とまでは言わないが、それに近い状態で輸送することも可能だろう。


だが、如何せんデイヴィス領近海にはクラーケンが棲息している。

大量の魚貝を手に入れること自体が、危険を伴うのだ。


「ベヘモットって、誰ですか?」

「うちの料理人。美味しい料理をいっぱい作ってくれるのよ」


キャロルの問いに、笑顔で答える。

うーん、やっぱり魚貝を持って帰って、前世で食べたことのある料理をベヘモットに再現してもらいたいな。

醤油はなくても、食べたい料理がいーっぱい思いつく。


「へぇ、あのベヘモットがねぇ。作るより、食べる量の方が多いんじゃなぁい?」

「あはは、つまみ食いはほどほどにってちゃんと言ってあります」


聞こえてきた声に、笑いながら応える。

応えてから、はて今のは誰だと声がした方に視線を向けた。


そこに立っていたのは、長身の男性。

いや、男性……?


体格は、確かに男性だ。

肩幅は広く、女性のような柔らかさは感じられない。

だと言うのに立ち姿はどこかしな垂れていて、先ほど聞こえた声も、どこか艶めいていた。


「え……誰?」

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