表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/46

14.今さらのチュートリアルは煽り耐性必要?

お読みいただきありがとうございます。

主人公『ラズ』視点に戻ります!

※この作品は全年齢向けBLです。そのことご理解いただきお読み下さい。


 今日は家族みんなで初めてのお出かけです。


 お父様とイヴくんと僕を乗せた馬車は神殿へとまっすぐ向かいます。

 今から行く神殿には、聖女様に選ばれたおじさまもいるし、お友達のアッシュもいるから。

 その2人に会えるのはとっても楽しみ!

 でも、『色無し』の僕はとっても目立つから、少し気をつけないとダメ。



 ジェスター教は漆黒を髪と瞳に纏う創造神を崇める宗教だから。

 あのコスプレ神様は実はとってもすごいらしい。

 この世界の人々はこのジェスター教を必ず信仰。

 特に何の疑問も持たずに髪色や瞳の色で簡単に人を判断、判別する。



 日本出身者からすると驚きだけどね。



 そういう訳で、僕とお友達になってくれたアッシュや婚約者候補のレオはとーっても優しくて素敵な人ってこと。

 あ、イヴくんやお父様、おじさまもか。家族にも恵まれている僕なんだよね。



 僕としては、あんまり近寄りたくない場所ではあるんだけど。

 ちょーっと神様に聞きたいことがあって、神殿にいくことにしたんだ。

 そうしたら、あの事件以降。神殿嫌いなお父様に猛反対された。

 とっても困っていたらイヴくんが神殿に行き聖女様に会ってみたいってお父様に掛け合ってくれ、無事いけることになったんだよ。持つべきものは、可愛い弟だよね。



 あ、もう着きそうだ。僕はいそいそとフードのついたマントを羽織る。

 フードを目深にかぶり、髪の毛が見えないように準備をした。



「ラズ。やっぱり……」


「帰らないよ。大丈夫。礼拝のときには1人になるからコレとるし」



 お父様が心配そうな瞳でフードを見ながら言う。

 僕が大丈夫だよ、と笑いかけると、ちょうど良いタイミングで馬車はゆっくりスピードを落としながら止まった。



「ラズー! おじさまはとーっても会いたかったよー! あ、背も3.24cm大きくなった? ほら! 天使で妖精なぷくぷくほっぺを」


「ラズに触るな。減る」


「はんっ! リヒトっお前しらないのか?! ラズの可愛さは無限に湧くから減りまっせーん! おあ゛っ! あいたたたっ!」



 馬車から降りると、おじさまが自らお出迎えしてくれていた。

 まくし立てるように話しながら、ヌルっと近づき僕の頬に触れようと手を伸ばしたところ。

 お父様がその手を捻り上げた。

 いつもの光景だけど、賑やかすぎる。

 隣のイヴくんなんてお口を開けてポカーンとしている。



 そうだよね。聖女さましている時のおじさましか知らないものね。

 おじさまはお父様のお兄さんで、お父様と全てが真反対な人だ。

 いつもにこにこ笑顔を浮かべて、ペラペラおしゃべりも上手。

 ついでに感情が全てお顔に、いや全身にでちゃうなんとも可愛らしい人なんだ。



 見た目はお父様と瓜ふたつなんだけどね。



「あっ! ラズは礼拝堂に行きたいんだったよな?」


「うん。おじさま。今日はちょっと長めでもいい?」


「いいぞー。あの従者は必ず連れていけよ。まあ、私のとーってもかわいい甥に何かするやつはいないと思うけどな……」



 言い終わった途端に控えている神官様たちをぐるーとゆっくり真顔で睨めつけるおじさま。

 先程お父様とじゃれていた人と同一人物とは思えないほどの、冷えきった眼差しと、どす黒いオーラだ。

 こういうところはすっごくお父様と兄弟なんだなーと思うよね。クレイドルなのに。



 そのあとは、僕と離れるのを渋るおじさまにイヴくんが僕のことを謎に質問攻めにし、足止め。

 僕が赤ちゃんの頃のお話なんて聞いても、イヴくんも楽しくないと思うのにね。

 僕ですら覚えていないよ。イヴくんの勢いにおじさまがかなり戸惑い、しどろもどろ。珍しいよ。


 その隙に僕は、顔色が悪い手と足が同時にギクシャク出る変わった歩き方の神官様に、礼拝堂まで案内してもらった。

 



「では、失礼いたします……」


「……ありがとうございました」



 無事礼拝堂に着き、案内してくれた神官様がちらりとフードに視線を落とす。一瞬さっと顔を歪める。

 僕と目が合った瞬間に慌てて視線を逸しながら、逃げるように足早に去っていった。



 あからさまな態度ではあるけれど、まだ何も言われ無かっただけ、良い人だったな。

 他の人は聞えよがしに『色無し』『忌み子』とか言うしね。

 どうしようもないことだけどね。それが神殿、いや、この世界では当たり前。



「どうします? 一族ごと始末……」


「しなくていいからっ!」


「じゃあ、本人だけですね」


「……しなくていいからっ!」



 エリアスが過保護モードに入ってしまった。神殿に来ると、がるがる警戒心が手負いの獣並み。

 あのさ、物騒だから小型ナイフと毒塗ってある暗器は仕舞ってよ。

 ギラギラ光らせてキレイでも、神殿にあっちゃいけないものだからね。それ!

 おい。視線だけであの神官様の背中を射殺そうとしないでよ。

 な、なんだか頭が痛くなってきたよ。



「もう! 何もしなくていいから。大人しく待ってて!」


「…………御意」



 多少不安が残るけど、外でエリアスを待たせ、とーても荘厳な礼拝堂に1人で入る。



 重厚感溢れて重い扉を開けると、高い天井と巨大で迫力のあるステンドグラス。

 毎回、わかっていてもその印象的な色彩に目を奪われてしまう。

 極彩色の色の中に彩度の違う黒を使用した宗教画は幻想的で異世界。

 黒にも色んな色があるってここで知ったな。

 細かなところまで細工が施されたステンドグラスから、差し込む光が反射し、キラキラ輝くさまは圧巻の光景。



 神秘的な美しさと眩しさに目を細めながら、奥にある祭壇へと進む。

 壮大で大きな彫像が、安置されている祭壇だ。

 この彫像が創造神様らしいんだけど……。

 歴史は後世の人たちにとって都合の良いふうに改変される、いい例だな。



 歴史の真実を実感しながら、僕は思いっきり叫んだ。



「ウインドウ! オープン!」



 ピコン! と可愛らしい音がすると、僕の目の前に例のウインドウが出現した。

 未だにこの大きな礼拝堂に僕の声が無駄に反響しているけど。



『心の中で唱えれば普通にでるよ(´ω`)』



 くっ、無駄に恥をかかされた。まだ、1人だけだったからよかったけど。

 ゲームの世界へ転移したら必ず言わないとイケないと思っていたら、違ったみたいだ。

 恥ずかしさで顔がかっかして暑いからフードを取る。



「教えてくださりありがとうございます……」


『何か用? 今だけなら少しだけOK。(*´∇`*)』



 この顔文字がやたら目につくのは僕だけ?

 よくわからないけど、神様とこのウインドウを通して今だけ会話可能らしい。

 メッセアプリみたいだ。この機会にいっぱい聞いちゃお!



「この報酬? の説明をしてほしいです。あとは、レオにだけにしか出ない理由はなんですか? ヤンデレもなに?」


『りょ。(ദ്ദി •̀ω •́ )✧ でも、ヤンデレ、婚約者だけの理由は秘密♡』


「……【神の慈愛】はなんですか? 今は1/7集まっているんですけど……?」


『各報酬はクリアするごとにランダムに集められる。全部集めたらイイコトあるよ(๑¯ω¯๑)』


「この【聖女のカケラ】っていうのもですか?」


『うん(・∀・)』



 なんだか上手くはぐらかされているような。決して核心には触れさせないな。



「使い方だけ教えてください……」


『このウインドウの文字をタッチしてみな。選択できるから。それで報酬を受け取れるよ。』



 いわれた通りに【神の慈愛】の文字に触れる。

【神の慈愛 1/7】と表示されポウッと文字が光りだし選択された。

 なるほど。本当にゲームみたいな仕様なんだな。



『あ、どれだけ集まったのか確認もできるからな。チュートリアルはこれでいいだろ?! じゃあ、頑張れよっ! (o゜▽゜)』


『次からも清く正しく美しいヤンデレをめざせ!』



 そう文字が表示されるとウインドウは勝手に消えた。

 言いたいことだけ言って逃げられたな。

 あのコスプレ神様のマイペースさは、今さら気にしてもどうしようもないよね。

 だんだん慣れて来たかも。



 再びウインドウを出現させ、報酬について確認してみる。



 なるほど。【神の慈愛】はあと6回集めれば報酬を受け取れる。

【聖女のカケラ】は……、2/6であと4()つ。

 あ、説明文。《聖女に関するスキルを取得可能》って曖昧すぎる。

【時の真実(Ⅰ)】はまだ集まっていないと。

 数字がふってあるということは、まだ次に続く【時の真実(Ⅱ)】もあるってことだよね。



 あとは、文字化けしていて読めない報酬が1つ。

 ゲームのセオリー通りなら、この報酬はこれから貰えるということなのか。



 ウインドウで確認可能な報酬は全部で4つ。


 うーん。報酬を貰える道のりは遠そうだ。

 報酬名がポエミーでちょっとダサいのがあの神様らしいよな、とあの彫像を見やり小さく息を吐く。



 ウインドウのヤンデレ指示をあの神様が何らかの意図を持って僕にさせようとしている。

 なんとなくだけれど、今回のチュートリアルの説明で透けて見えた。

 この各ポエミーな報酬を全て集め、受け取れば、未来で『ラスボス』にはならないかも。

 聖女のスキルがもらえるし。


 本当に、本当に、少しだけだけれど、未来に希望が見えた。

 とりあえず『清く正しく美しくヤンデレ』になろうっ!



 頑張るぞ! と気合を入れるため、彫像の前に膝を付き両手を組みお祈りをする。



 一瞬ウインドウが光って出現。



『(*^ー゜)b クッ゛』



 パッと主張するように浮かび、消えた顔文字。


 初めて感じるもやもやした黒い感情を、何故かあの顔文字に感じた。


 うん。エリアスが心配だし。

 アッシュにも会いたいからフードをバサリと乱暴に被り直し、さっさと扉へ向かうことにした僕。




 あ!! 一番大事なクリア条件聞くの忘れたっ! 悔しいっ!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ