福島第一原発から海洋放出されるのは“処理水“としていいのか?
筆者:
本日はこのページを開いてくださりありがとうございます。
質問者:
今、原発の処理水の海洋放出について話題になっていますよね。
うまく論点について整理していただけますか?
筆者:
まず、「世間で言われていること」についてまとめてみます。
福島原発の原子炉がある建物内には、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)が今も残っているんですね。しかも、今も熱を持っているので水で冷やし続けなければならないんです。
核燃料を冷却した水を「汚染水」と呼び、それをALPS(多核種除去設備)で処理し、化学物質を除去します。
そうして除去した水を「処理水」と呼んでおり、それを濃度を何百倍に薄めた上で海洋放出しているようです。
海洋放出の最大根拠としてはIAEA(国際原子力機関)が認めたことです。
アメリカのブリンケン国務長官は8月15日の記者会見で「日本の計画は安全で、IAEAの安全基準を含む国際基準に一致しており、我々は満足している」と発言されていますしね。
それに対して反対している中国と韓国はそれぞれ5倍、2倍のトリチウムを放出しています
処理水を保管するタンクの場所が足りなくなりつつあることからこれは止む無しという見方が強いのです。
質問者:
自分はそれ以上の濃度で出しているのに批判するのは厚顔無恥な気がしますけど……。
筆者:
ところがこれはマスコミと政府のミスリードではないかとすら思えてしまうんですね。
少なくとも、なんだか議論が尽くされていないというか、情報が一般国民に開示されたうえで行われていないように感じるんです。
ここからは「国民が知るべき真実」についてです。
まず、あまりマスコミで報道されていないこととしてはトリチウムばかりに焦点がいってますけど、実はそれ以外の物質も危険なのではないかと言われているんですね。
2018年8月の処理水の処分に関する説明・公聴会では処理水の約7割でヨウ素129、ストロンチウム90、ルテニウム106、テクネチウム99までもが基準を越えていたことが発覚しているんです。
ALPSによって貯蔵されているトリチウム以外は除去できるような雰囲気が出ていますけど実情は大きく異なるようです。
ICRP(国際放射線防護委員会)によると、
『何らかの悪影響が生じる可能性がいくらかでもありそうと思われる値」で、処理水の放出による影響は、この値のおよそ300万分の1から100万分の1になったとしています。これらの評価はトリチウムのほか、処理水に含まれる29種類の放射性物質による影響を足し合わせたものになっていて、結果として、トリチウム以外の影響が大きくなっている』
ということです。
東京電力によるとこれの対策としては示濃度比総和が1未満になるよう再度ALPS処理を行うそうですが、ちょっと世間でニュースになっていることとは違いますよね。
質問者:
えっ……てっきりトリチウムの問題さえクリアできれば問題ないのかと思っていました……。
筆者:
これが「論点すり替え」の恐ろしいところです。
また、前例がない原発事故後の核燃料デブリに触れた「処理水」のリスクについても議論が尽くされたとは思えません。
レベル7の原発事故はチェルノブイリと福島だけのようなので放置されちゃったチェルノブイリに対して海洋放出するのは初めてです。
溶け落ちた核燃料を冷やした水について放流することは前例がないので過去のエビデンスやデータはあてにならないかもしれないということです。
僕は正確な科学的見地は持ち合わせていませんが、稼働している原子炉を冷やした時に出た処理水と今回の「処理水」は果たして同列に論じていいものかも不明です。
実際は大丈夫かもしれませんし、長期的なことは正直誰も分からないのですが、世論調査などで“海洋放出に賛成”としている方々はここまでちゃんと知った上で賛成なのかな?
と思っちゃいますね。
知った上での政府と国民の合意なら問題ないんですけどね。現状どうにもそうでは無い気がしてならないのです。
質問者:
確かにそこまで情報を与えられたら「反対」か「どちらか分からない」に意見を変える方もいらっしゃいそうですね……。
筆者:
また、海洋放出1択状態になっているのも気になります。
「モルタル固化案」や「大型タンク貯留案」と呼ばれる2つの案では今の「処理水」貯水タンクよりも面積をとらずに済むようです。
「モルタル固化案」アメリカのサバンナリバー核施設の汚染水処分でも用いられた手法で、汚染水をセメントと砂でモルタル化し、半地下の状態で処分するというもの。利点としては、放射性物質の海洋流出リスクを半永久的に遮断できることです。ただし、セメントや砂を混ぜるため、容積効率は約4分の1となります。
「大型タンク貯留案」は、ドーム型屋根、水封ベント付きの10万㎥の大型タンクを建設する案のことです。
建設場所としては、福島第一原発の敷地内の7・8号機建設予定地、土捨て場、敷地後背地等から、地元の了解を得て選択することを提案。800m×800mの敷地に20基のタンクを建設し、既存タンク敷地も順次大型に置き換えることで、新たに発生する汚染水約48年分の貯留が可能になるようです。
質問者:
えぇ……てっきり海洋放出しか方法が無いのかと思っていました……。
筆者:
選択肢を1つにしか見えなくさせるというのも政治家の最近の常套手段ですね。
例えば、「財源は増税しかない」みたいなことも似たようなことですね。
また、IAEAが許可したことについても、彼らは原子力の平和利用(原発に使うこと)に関して全面推進していますから、“世界的利権団体”と言っていいですからね。お墨付きがゼロよりかはいいけど……という感じですね。
さらに問題なのは漁業関係者との約束反故です。
日本政府と東京電力は2015年、福島県漁業協同組合と汚染水の処理問題に関して「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束したんですね。
しかし23年8月21日に全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長は、
「漁業人と国民の理解を得られなかった処理水(汚染水)の海洋放出に反対であるということはいささかも変わりはない」と発言しました。
また「一方で科学的な安全性への理解というものは私ども漁業者も深まってきた。しかし、科学的な安全性と社会的安心は違う」とし、「科学的に安全だからといって風評被害がなくなるわけではない」とされています。
岸田首相に先立ち西村康稔経済産業相と会った席でも「(汚染水の放出に)依然として反対であるという立場を堅持する」と話されました。
このように、全く漁業関係者は納得していないまま海洋放出されているということは約束反故と言っていいです。風評被害のために800億円の基金を作るそうですが、頑張る方向性がなんだか違う気がします。
質問者:
確かに、実際にお魚の売値を「危険」を理由に買取の値段を叩かれたりするという話もあるようですからね……。
筆者:
基金が漁業をやっている人達に直接還元されていけばいいですけどね。また例によって中抜きされたりしそうですからね。
僕はちょっと、総合的にみると中国に対してこの件に対してトリチウムの濃度だけで反論するのはちょっとキツイのかなと思ってしまいますね。
かといって中国の圧力に屈してはいけないと思うので、原子炉の放出の話ではありませんが、地下核実験により黄砂にセシウムが含まれており、それが毎年のように九州などに飛来することのほうが問題だと思いますね。
質問者:
しかし、今回の一件で見てもマスコミや政府がいかに情報を出していないのかが分かりました……。
筆者:
正確に言うと、全く情報を出していないわけではないので、詳しく調べれば到達できるんですけど、普通そんなことイチイチ僕みたいに調べませんからね(笑)。
ただ、「論点すり替え・無理やり単純化」が今回の一件で最大の問題だとは思います。
国民全員の健康に影響する可能性があるので、一人一人が色々総合して俯瞰してみていく必要があるのにそれがなされているとは思えません。
今後も同じタイプの作戦で国政選挙や憲法改正(緊急事態条項追加)なども単純図式にして肝心なことを見えなくさせるといったこともこれからも想定されるので、注意したいところではありますね。
質問者:
しかし、“処理水“が完全に安全ではないとすると私たちは今後どのように対策をすればいいのでしょうか?
筆者:
まぁ、あんまり不安がっても体に毒だと思うので普通に日本のお魚を食べてデトックスすることが大事だと思います。
青魚はオメガ3が多く含まれており健康に良いとされていますしね。
毒素や老廃物をデトックスするのは排便によって75%、尿で20%、残りの5%は汗、呼気とされています。
しかしながら、戦前の排便量が1日平均400グラムに対して今の日本人は1日平均200グラムとされています。
以前健康の項目で書きましたが、食物繊維を多くとるとともに「16時間プチ断食」などを行うことで排便量を増やしていくことが大事だと思いますね。
質問者:
なるほど、気にし過ぎるのはよくないので健康対策をすることが大事なんですね……。
筆者:
まぁ、もう海洋放出も始まっちゃいましたし、もう流しちゃったのを戻せません。
方針としてもよほどの事態が起きない限り(トリチウムの濃度が想定よりもかなり高いなど)基本的には覆ることはないでしょう。
漁業関係者などが風評被害を受けてしまう可能性があるのは本当に気の毒なことだとは思いますけどね。
今回のエッセイがそういった一助に少しでもなってくれれば幸いです。
ということで、ここまでお読みくださりありがとうございました。
これからもこういった政治・経済・国際情勢について個人的な考えで書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。