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6:冥界

 

「む、あそこにいるのは…サボマイスタじゃないの」

 霊夢が空を飛んでいると、眼下にいつものように仕事をサボって寝ている死神…小野塚小町が見えた。

「☆!! …んふ~」

 その小町を見ながら霊夢は、何やら思いついたように手を打った。

「よっと」

 ストン。

 そして霊夢はサボマイスタこと、三途の川の船頭、小野塚小町の前に降り立つ。

「ZZZ…」

「よく寝てるわね…よし…」

 そういうが早いか、霊夢は息を吸い込み…。

 

「『小町!またあなたは!!』」

 

…とまぁ、小町の上司である幻想郷三大説教姫の一人・四季映姫の声マネをする。

 霊夢自身、結構似てるんじゃない?とか思ってる物まねで、魔理沙の太鼓判つきだ。

「きゃん! 寝てません、寝てませんよ四季さm…あ、あれ、四季様?」

 ぶっ。

「あはははは! 引っかかったわね小町!!」

 映姫に謝ろうとする小町のあわてっぷりと、映姫がいないと分かるや否やのキョトンとした小町の顔に霊夢は思わず噴出す。

「れ、霊夢?

 今の、霊夢か?」

 照れくさそうに頭をかきながら…少しほっとしたような顔で、小町が霊夢に問う。

「ええ、私よ?

 あなたがあまりにも派手にサボってたからね、いたずらしたくなっちゃった」

「…寿命が縮んだよまったく…で、どうかしたのか、霊夢」

 小町は鎌を持ち直すと空に視線を移しながら、話題を変えた。

「別に、どうもしないわ。

 ちょっと長尺の散歩に、ね」

「散歩ねぇ…三途の川に散歩なんて危険な真似並の人間じゃできないけどな」

 そう言いながら、ま、アンタは幻想郷最強だし、それには当てはまんないけど…と微笑んだ。

「そうね。

 …実はこれから冥界に行こうと思ってね。

 その途中にここを飛んでたら、見知った顔が仕事をサボってたのよ」

「はは、まぁよくある話だな」

 小町はまるで他人事のように笑った。

 と、そのとき。

「小町!!」

 聞き覚えのある声に、呼ばれた小町も、一緒にいた霊夢も振り返る。

「はへっ!?」

 底には予想通りの、その人物がいた。

「全くあなたは仕事を放り出して…って、あら、博麗の巫女ではないですか。

 …今のところ異変は起きていないようですが」

 生真面目な楽園の最高裁判長・四季映姫・ヤマザナドゥ。

 やはり彼女にも霊夢が動く=異変のようである。

 もはや霊夢もその扱いには慣れたとばかり返答する。

「今のところ私の勘にかなう異変は起きていないわ。

 私が散歩することが異変だといわれなければ、ね」

「ああ、いえそんな意味では…。

 しかし、散歩というのは博麗神社からここはあまりにも遠くありませんか?」

 映姫はあわてて言葉を訂正しながら、気になるポイントを付いた。

「ここは通り道よ。

 白玉楼に向かっているところなのよ」

「白玉楼…なるほど。

 ところで…なぜ小町と?」

 ビョクッ!!

 映姫と霊夢の話を恐る恐る聞いていた小町の全身が震えた。

 どこぞの式神の猫か…まぁ小町は四季の式…ってやかましいわ。

「いえ、白玉楼に向かってたら視界に見覚えのある奴がいたから降りてみただけよ」

 小町が胸をなでおろす。

 サボってる云々については言葉に入っていなかった。

「そうですか…」

 腑に落ちない様子の映姫をよそに、霊夢は「さてと…」と立ち上がった。

「そろそろ白玉楼に向かうわ。

 ここにいると長居してしまいそうだし、それに…」

 そこで言葉を切ると、霊夢はため息をつきながら、それでもにっこり笑顔を作る。

「楽しそうな映姫の時間を邪魔しちゃ悪いしね」

「なっ!?」

「へ…?」

 そういって霊夢は空へと舞い上がる。

 真っ赤な顔の映姫と、目が点になっている小町を残して。

 

「あいつらも結婚させようかしら、本当に…」

 そんな事を思いながら、霊夢は白玉楼へと向かう。

 そして、春雪異変のあの日にも霊夢の前に立ちはだかった、白玉楼に向かう階段の前にたどり着いた。

「高いわねー相変わらず」

 そんな独り言を言いながら、階段を上がり始める。

 と、そんな刹那。

「…そこで何をして…! …って、霊夢?」

 聞き覚えのある声に霊夢が振り返ると、刀を手に持った小柄な少女がいた。

 もちろん、魂魄妖夢である。

「ええ、私よ。

 出迎えてくれたのかしら?」

 冗談めかして霊夢が微笑む。

「いや、その、出迎えたわけでは…」

「そうね。単なる散歩中の巫女に、刀を向ける辻斬りが出迎えなわけはないわよね?」

 ともすればいやみにも取れるこの言葉。

 霊夢が言えば、そのいやみもなくなるのだから…と妖夢は思う。

「…そうね。

 まぁ、あなたを不審者と誤解したのは謝りますが…」

 妖夢の慇懃な態度に、霊夢は微笑みを笑顔に変える。

「ふふふ…妖夢の正直なところ、すごいいいわね。

 こんな従者を持った幽々子がうらやましいわ」

 

 白玉楼に続く階段を上りながら、霊夢と妖夢は結婚式の話題に移る。

「そういえば、魔理沙とアリスの結婚式のことだけど」

「…(ガクガクブルブル)…な、なに…?」

「ん? 妖夢?」

 結婚式の話題になった瞬間、妖夢の様子が変わったことに霊夢が気づく。

「…」

 顔は青ざめ、よく見れば震えているように見える。

「妖、夢…? アンタ…」

「なななななななな、なななんでもななないわよ?」

 明らかに動揺している。

「…妖夢…気にスンナ」

 (^▽^)b

「…噛んでばっかりでごめん…」

 妖夢は申し訳なさそうに肩をすくめる。

「せっかく幽々子様に司会に推薦してもらったのに」

 その辺楽しむためだと思うけどね、幽々子が指名したの。

 さすがにこの妖夢のへこみ方をみると、それも言えなくなってしまうのであるが。

「まぁでも、酒に弱いアンタが結婚式にいるんなら、司会ってのは適役だと思うけどね」

「…次回はがんばる…そうねその時の、新郎新婦は霊夢と、…早苗でどう?」

 仕返しなのかしれっと次の新郎に霊夢を指名する。

「…バカ言ってんじゃないわ」

 コツン、と頭を小突く。

「いたっ…いいじゃない、魔理沙とアリス結婚したんだから、次は早苗と霊夢でいいんじゃない?」

「早苗とするならアンタを嫁にもらうわ」

「えっ!?」

「…冗談よ」

 フフフ、と楽しそうに霊夢は笑った。

「アンタを嫁にもらうなんて言ったら、アンタんトコの大食い姫がうるさいでしょ」

「誰が、大食い姫なのかしら?

 それは私よりも?」

「そりゃすごいわよ…って、今私は誰と会話を?」

 誰かに話しかけられて答えながら霊夢がよく見れば、妖夢は何も言わずに唖然としていた。

「私よ、わ、た、し」

「…幽々子いたの?

 いつから?」

「魔理沙とアリスの結婚式をの話が出たあたりから」

 しれっと妖夢の主である、西行寺幽々子が妖夢の肩に手を置きながらふわふわ浮いていた。

「最初も最初じゃないの」

「でも、霊夢には妖夢はあげられないわね。

 霊夢と私だと、ご飯の比率が狂っちゃうわ」

「バカ言わないで。

 私は小食よ…普段がもっと小食なだけで」

「ははは、それならいいわ」

「幽々子様!!

 私は、お嫁には行きませんよ!」

 幽々子と霊夢がそんな話をしていると、後ろから真っ赤な顔をした妖夢が怒鳴った。

「…ぷっ」

 その様子にまず霊夢が、そして幽々子が噴出す。

「あはははは、妖夢はやっぱりかわいいわー」

 さもおかしそうに幽々子がカラカラ笑う。

「それに…妖夢をお嫁に出すなんて、そんなことするわけないじゃないの」

「幽々子様…」

 今度は恥ずかしそうに真っ赤になる妖夢。

 忙しいわねこの子…と、霊夢の心の声。

「はいはい、ノロケはそこまで。

 せっかく来たんだし、白玉楼上がってもいいかしら?」

 あきれたように、しかしなぜか少しうれしそうに霊夢が二人に声をかけた。

「はいはいー妖夢ーお茶お願いねー」

「へ、あ、は、はい、ただいま!」

 そういって、三人は白玉楼の門をくぐった。

 

「あら、霊夢珍しい」

「…ホントにアンタは神出鬼没ね」

 中に入ると、そこには八雲紫がスキマから顔を出していた。

「神出鬼没とは失礼な。

 茶飲み友達の家にひょいと顔を出した顔なじみよ」

「あら、紫、今日は早いのね」

 紫が霊夢に反論していると、幽々子が部屋着に着替えて部屋に戻ってきた。

「ええ、実は空飛ぶ巫女さんが冥界に向かうのをスキマから眺めてたら、こんなに早く来ることになってしまったのよ」

 うれしそうに紫が、今日早くついた理由を話した。

「…ストーカー妖怪が」

 霊夢はあからさまに顔をゆがめる。

「まあまあ、お二人とも。

 白玉楼特製のワラビ餅お持ちいたしましたので」

「そう、これ、おいしいのよ」

 霊夢と紫に少し険悪な空気が流れたところに、妖夢がお盆を抱えて現れた。

「あぁ、これおいしいわよね」

 紫もこのワラビ餅は白玉楼でよく出されているようである。

 霊夢は特製のワラビ餅に舌鼓を打ちながら、紫と軽口を叩き合うのにも飽き、話題は白玉楼に移っていた。

「この庭、いつ見ても整然としてるわね」

「そりゃそうよ、ここには幻想郷一の庭師がいるんだもの」

 霊夢の独り言に、幽々子が胸を張ってそう答えた。

「そうね…この庭一筋に守り続ける、生真面目な庭師がいるものね」

 紫も賛同する。

「…」

 何もいえなくなっている妖夢…何しろ白玉楼の庭師、といえば彼女、魂魄妖夢に他ならない。

 何を考えているのか分からない主に、何をするにも胡散臭い主の友人。

 この二人からほめられても…と正直妖夢は複雑な顔をする。

 その様子がおかしくて霊夢は噴出しそうになった。

 おそらく…まぁ、紫はともかく、幽々子は本音でそういっている。

 しかし、そこで何か言って得意にでもなってしまえば、間違いなく主の友人には馬鹿にされる。

 そんなところまで生真面目な庭師である。

「妖夢、幽々子にはほめられてるからね、安心しなさい」

 見かねて小声で霊夢は妖夢にアドバイス。

 しかし、それに安心したのか、妖夢はうれしそうに失言する。

「あ、はい…ありがとうございます、幽々子様!!」

 ぴくっ。

 紫がその言葉に反応する。

「よーうーむー?」

 あーあ…霊夢は心の中でため息をついた。

「はへっ!?」

 時すでに遅し。

 そのとき妖夢を見つめていたのは…霊夢が思うに、目の前でひまわりの花を手折られた幽香の笑顔以上の破壊力の八雲紫の笑顔である。

「…幽々子、私そろそろお暇するわ」

「そうね…まぁ妖夢はこのままにしておきましょ」

 本来であれば主は、従者を助けるのが本筋であろうが、気心知れた友人を怒らせた庭師を「仕方ない子」という目で見ていた幽々子は霊夢の提案にうなずいた。

「ゆっ、紫様、お許しをっ…あっ!!」

「ゆーるーさーなーいー」

 怖い笑顔のまま、八雲紫は妖夢にすり寄る。

「はぁ…こうなったら長いわね」

 呆れ顔で、霊夢が幽々子に向き合う。

「私はもう行くわ。

 まだ散歩の途中だし」

「あらそう?

 お構いもできませんで」

 幽々子も呆れ顔ではあるもののにこやかに答えた。

「いえいえ…おいしいわらびもちだったわ。

 またご相伴にあずかりたいものね」

「気が向いたらいらっしゃいな。

 妖夢の機嫌によって出てきたり出てこなかったりするけど」

「…ありがとう」

 また来い、と言われたのはこの散歩で初めてだったかもしれないと思う。

「で、これからどこに行くのかしら?」

「そうね…せっかく幽霊に会ったんだし、今度はその管理をしてる連中んとこでも行ってきましょうか」

「なるほどね…じゃぁお気をつけて」

「ええ、ありがとう」

 そう言って霊夢は白玉楼を後にする。

「お、お許しください、紫さまぁ!!」

「だぁーめ!!」

 後ろから聞こえてくる妖夢の声を後ろにで聞きながら地底の入口の洞穴に向かった。

 

「さて、と」

 白玉楼から飛び立った霊夢は、比較的近くにある地底の入り口に立っていた。

「あら、こんなところにモノ好きが一人…と思ったら霊夢?」

「ん? …あぁ、アンタは」

 

 ~To Be Continued~

 

当初描いていた際には、この部分でかなり長い間詰まっていました。

というか、妖夢が紫にお仕置きされるあたりで詰まっていました…どう始末をつけようかと。

結局お仕置きされるというオチになりましたが…

 

そういえば、アリスと魔理沙の結婚式ネタも書いてあるのでそのうちアップします。


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