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4:紅魔館

 

「こうして…こう、よ!」

「こうして…こう!」

「そーなのかー」

「そうそう、うまいうまい。

 これなら太極拳も使い物になるかもね」

「そしたらあたいってば、今まで以上にさいきょーになれる!!」

「なれるなれる」

「わーい!あたいってばさいきょーね!!」

「そーなのかー」

「…」

 霊夢が湖のほとりにある目的地に来ると、門番が妖精たちを遊んでいた。

「あーれーむだぁ!」

 霊夢の姿をチルノが確認すると、遊びに来ていた妖精と美鈴がいっせいに霊夢の方を向いた。

「ん? あら、霊夢じゃない。

 またご飯食べに来たの?」

「!!」

 この館、紅魔館の門番である紅美鈴に言われた発言に、霊夢は言葉を失った。

「どっ…どうかしたの、霊夢?」

 突然黙ってしまった霊夢に美鈴が声をかける。

「あっ…いや、ここ数日、私を厄病神みたいに言われ続けてきたから…ようやく私が普通に着ていい場所に来たような気がして」

「厄病神?なんで?」

「いや…私が行くと異変がついて回ってるみたいに言われてさ…」

「あぁ、異変、異変かぁ…そんなこと思いもしなかったよ。

 またお嬢様にご飯たかりに来たのかと…」

 まぁそれも違うのだが、一応「来客扱い」してもらえたと霊夢は解釈する。

「たかりって…私をなんだと思ってるのよ」

「れーむ、どーかしたのかー?」

 率直に聞いたのはルーミアだった。

「あぁ、いや、近くまで来たから、おぜうさまのご機嫌でも伺っておこうかなって思ってね」

「あ、お嬢様に用事なのね。了解」

 そう言って美鈴は門番室の電話を取る。

「あ、メイド長を…咲夜さん、美鈴です。

 レミリアお嬢様に、お客様…あ、そうです、霊夢です、はい。

 あ、了解ですー」

 そう言うと、美鈴は門を少しだけ開け、霊夢に向く。

「霊夢、どうぞ。

 入口に咲夜さんがいるから、案内してもらって」

「うん、ありがと」

 そう言って霊夢は紅魔館に入っていく。

 ギィー。

「こんにちはー…」

「いらっしゃい、霊夢」

 ドアを開けると美鈴の言うとおり、咲夜が待っていた。

「今日は早いお着きね。

 夕食には時間があるわよ?」

「…別に、夕飯食べに来たわけじゃないわよ。

 お嬢様に会いに来ただけ」

 そう返答すると、咲夜は笑いながら答えた。

「はいはい。

 お嬢様は今、あなたが来たと聞いて起きたばかりよ」

「そう…じゃぁ先に、図書館に行くわ。

 パチェリーにも挨拶していきましょ。

 ウチの相方の白黒のアホがお世話になってるみたいだし」

「わかったわ」

 そう言って咲夜の先導に従って図書館に向かう。

「そういえば」

「どうかして?」

 その途中、ふっと気になったことを咲夜に聞いてみた。

「なんでフランドールが文に誘拐されたのを、あんたたちは放っておいてるの?」

「…あぁ、妹様のことね。

 妹様に会ったの?」

「ええ、ここに来る前に守矢神社に行ったんだけど、その途中文とフランドールに会ったわよ」

「…そうね、あなたには話しても大丈夫でしょう。

 先日、不法侵入したあの新聞屋と妹様がお話になったらしくてね、意気投合して。

 それで「咲夜、新聞屋のお姉ちゃんと遊びに行ってくるわね」って言って出て行ったきりよ」

「…いいのそれで?

 あの子だって紅魔館のお嬢様でしょう」

「…最初は不覚だったわ。

 私が…その、ちょっとその時ぼーっとしてて、妹様の外出を止められなくて…。

 お嬢様はお休み中だったし…美鈴も「遊びに行ってくる」としか言われなかったから、対して気にしてなかったみたいでね」

「…で、妹様はそのまま、新聞屋の助手になってしまったと」

「そういうこと」

 そんな話をしていると、大図書館前に着いていた。

 knock knock。

「失礼します、パチュリー様」

 そう言って咲夜がドアを開けた、その時だった。

 

「はぁ…はぁ…」

 

 艶めかしい声が聞こえた。

 ちょっ、パチュリー!?

 そう思った瞬間に、クレイジーな声が聞こえた。

 

 キックパンチソーレガマイン!! ジビョウノゼンソクフキトバセッ!!

 

「あ、申し訳ありません、パチュリー様。

 エクササイズ中でしたか、失礼いたしました」

「あ…はぁはぁ…いいえ、大丈夫よ、咲夜…はぁはぁ。

 あら、霊夢…はぁはぁ…いらっしゃい」

 バチン。

 隣に置いてあったラジカセの停止ボタンを押す。

「あ、アンタ…エクササイズなんてしてるんだ」

 挨拶も忘れ、霊夢はとりあえず気になったところにツッコミを入れる。

「ええ…こないだ、美鈴に教えてもらったエクササイズよ。

 私もま…、外に出ようと思って、少し体力をつけようと思ってね」

 ま?

 …とは思ったものの、霊夢はそこには突っ込みをしなかった。

「へぇ、意外ね」

 霊夢はパチュリーが魔理沙と外に出たいと思っていることを心底意外と思った。

「…で、あなたは嫌味を言いに来たわけ?」

 それが嫌味と思われたらしく、パチュリーはむきゅっと口を閉じる。

「あ、えと…そういうわけじゃなく、近くまで来たから、挨拶がてらによっただけよ。

 お嬢様が準備できてないっていうんで、先にパチュリーのところに来たのよ。

 ウチの相方もお世話になってることだし」

「…世話になってるくらいならいいんだけどね。

 あの黒白にはキツく言っておいて、『親友の』アンタからね」

 そう言ってパチュリーはすくっと立ち上がり、ラジカセをもとの位置に置いた。

「はいはい、伝えておきますよ」 

 どうやらパチュリーの機嫌を損ねてしまったらしい。

「あと…その、魔理沙に…本を持っていかないなら、いつでも来て、って…」

「…わかったわ」

 恥ずかしそうな付け足しを尻目に、私はうなずいて、咲夜とともにヴワル大図書館を跡にした。

 

「…パチュリーも物好きね」

「魔理沙のこと?

 …そう言わないであげてよ。

 不定期にでもパチュリー様に会いに来るのなんて、紅魔館の住人を除けば、魔理沙くらいなものだからね」

「そっか…魔理沙は本以外にも、パチュリーの心まで盗んでいたのね」

「…ふふふ、そうかもね。

 さぁ、お嬢様の部屋に行きましょう」

 そう言った咲夜の後について、おなじみのレミリアの部屋へと向かう。

 そして…。

 knock knock。

『お入り』

「お嬢様、霊夢が訪ねてきました。

 お邪魔します」

「…よく来たわね、霊夢。

 遅かったじゃない」

 クククッ、とレミリアが微笑んだ。

「ええ、ヴワル図書館に寄っていたものだからね。

 アンタの準備が長いのは知ってるから」

「…で、今日はいやに早いじゃない。

 今日の夕飯はカレーうどんとミートローフよ」

「…いや、今日は夕飯食べに来たんじゃなくて…」

「あら、じゃぁ何をしに来たの?」

 心底意外そうにレミリアがあいた口が塞がらないような顔をする。

 ふむ、先ほどパチュリーは私のこんな顔を見てむっとしたのか。

「別に、散歩のついでに寄っただけよ」

「はぁ? 散歩?

 そのことは魔理沙に言った?」

「え? 魔理沙?」

 先ほど大図書館で何度も話題にかすっていた友人の名前が、この紅魔館の主からも名前が出たことに霊夢は驚いた。

「あら、パチェや咲夜から話が出なかった?

 昨日、魔理沙とアリスがここにきてね。

 私が霊夢を隠してるって大騒ぎしてたのよ。

 咲夜とパチェが何とかしてくれたけどね」

「…」

 何やってんだあの二人は…。

「それは申し訳なかったわね…あとで会ったら半殺しにしておくわ」

「そうしてちょうだい。

 それにしても、魔理沙が探すような散歩ってどんな壮大な散歩なのかしら?」

「あぁ、それなら…」

 そう言ってい霊夢は、昨日の八雲家からの流れを説明する。

「…というわけで、妖怪の山でアンタの妹を見かけてね、姉にも会いに行くか、って思ったのよ」

「そういうわけだったの」

 フランドールの名前を出したとたんに、咲夜とレミリアが苦笑した。

「それにしても、スキマに、月人に、神様に…そしてこの、夜の王の元。

 あなたも顔広いわね」

「基本的には、全員異変を起こした首謀者だけどね。

 私ももっと普通の友人がほしいわ」

「言ってくれるじゃないの。

 でも、類は友を呼ぶって言葉を知らないのかしら?」

「…アンタも言ってくれるじゃない。

 まぁ、永琳や神奈子は私を見ると異変が起きたみたいな扱いしたけどね」

「そりゃそうよ。

 ウチや、スキマんとこはともかく、他の連中が霊夢を目撃するのは異変が起きた時くらいだわ」

「…そっか」

 レミリアの話を聞きながら、ようやく永琳や神奈子の気持ちを理解できた気がする霊夢。

 今後は紅魔館や紫の元だけでなく、少しずつ、永遠亭や妖怪の山にも出かけよう、そう心に決めた霊夢であった。

 

「あ、霊夢、おかえりかしら?」

「ええ、美鈴、お邪魔したわ」

 それから数時間…ちゃっかり夕飯のカレーうどんとミートローフを頂いてから、霊夢は神社への帰路についた。

「結局御夕飯頂いちゃったわ」

「やっぱりねー。

 時間からしてそうだと思ったわ」

「それじゃね、美鈴、また来るわ」

「ええ、再見~♪」

 そう言う美鈴に、後ろを向いたまま手を振って、霊夢は博霊神社へと向かった。

  

  ~To Be Continued~

1章は次のインターローグで終了です。

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