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戦う遺伝子 ――すり鉢の底の淑女――  作者: 弐逸 玖
クレストリーグイースター ピリオド22 ゲーム11
6/43

試合開始!

 ファンファーレが鳴り響き、城内がどよめく中。

 メインレフェリーと副審全員がフィールドの真ん中に立つ。


「フィールド内の安全確認、終了を承認。副審は全員配置について下さい。――参加両名は前へ!」


 長い黒髪をサイドポニーにした同年代の子。彼女もスピードファイター、アーマーの面積は最小限。

 私よりかなり大きめの胸を、私と同じく最小限の面積だけの真っ赤なアーマーに押し込め、深紅のブラが光を跳ね返す。


 パンツとブラ双方に黒のライン。

 左の胸のキリュウインの略称には、エースであることを示すエメラルドグリーンの縁取り。 



「両名、一歩前へ」

 他のレフェリーは男もいるが、メインになる審判はほぼ女。


「得物を離して、両手を上に」

 体中をチェックされて、魔力計を向けられる。


「規定外の持ち込み無し、魔力反応無し。――両名ともなおって結構です」

 試合前のボディチェック。

 妙齢の女性の体をまさぐるなんて、……いやん、はしたない。なんつって。


 ま、かなりギッチリチェックが入るからね。

 男性だった場合。いくら仕事だとは言え問題があるくらいに、全身見られて触られる。

 私でさえ、それが男だったらかなりの抵抗がある。



「キリュウイン・ファーム、ネクスタ。ステイブル・オブ・バーンシュタイン、アリエル。――双方、本人で間違いはないですね?」

「ネクスタで相違ありません」

「はい。アリエルです」


 審判の彼女等はほぼ全員。元、戦女である。

 戦闘機械ジェノミレディとして生を受けた事実は曲がらないのだけれど。

 だからこそ、その場で簡単に“暴走”を鎮圧するなら可能になる。


 男の審判も数人居るが、これは選手の鎮圧用の副審。

 要は女の魔道師の数が確保出来ないから。

 没収試合となれば参加両名は、有無を言わさず魔導で撃たれて拘束される。

 物理ならいくらでもやりようがあるが、これはかわしようが無い。


 もっとも、逆に言うと、その程度しかできない人しか居ないわけで。

 だから前の試合のように、本物の魔道師の乱入なんかあったらヤバいわけだ。


「よろしい。双方、本人と認めます。――爆発物、毒物、薬物、銃器の所持はありませんね?」

「持っていません」

「ありません」


 事実上パンツとブラしか付けて無い。何処に隠すって言うんだ?

 でも過去には、爆発物を胸におし込んで起爆した。と言う事例がある。

 おっぱいがネクスタくらいあったら、ダメージも軽減できそうだけど……。

 私がそれをくらったら、即死だな……。


 直近だと中央のクレストリーグで三年前。口に毒物のカプセルをねじ込まれた、と言う事例があるそうで……。

 これは一命を取り留めたそうだけれど。


 そのカプセルをパンツの中、と言うか“身体の中”に隠し持ってた。と聞いた。

 “出し入れ”の容易さを考えれば、ブラで無い。とすればそれが何処か? なんて明白なわけで。

 

 カプセルが“しまってあった場所”を考えると、まぁ、後ろ。じゃないにしろ。

 口に入れられる。と言うのもちょっとアレだし。

 試合中に取り出してるけど、どうやって出したの? なんて疑問もあるけどそれよりも。


 取り出す前にカプセル、割れたらどうする気なのよ……!

 口から飲むより、よほどダイレクトに死にそうだと思う。

 前だろうと後ろだろうと、自由には吐き出せないもの……。


 うん、公営ギャンブルだからね。

 ミレディバトルは、見た目はアレだけどスポーツだから、一応。

 ルール、大事です。



「両名、武器の封印解封を許可します。刀身をだして」

 腰のナイフをさやにつないでいた紙テープを切って、ナイフを審判の前にかざす。ネクスタもカタナを引き抜いて目の前に。


「ネクスタ、アリエル。双方の武器に刃がついていないと認めます。戻して良し」


 いくら弾丸さえ弾くからだとは言え。

 戦女同士で刃物を振り回せば当然、切れる。

 ネクスタの馬鹿力で切られたら、多分腕とか綺麗にスッパリ行く。


 だから得物には刃はついて無いどころか、やや厚めで、先端と通常の刃の部分には丸みもつけられて居る。

 多少特殊だけど、一応スポーツだから。


 でも、切れなくたってあたったら痛いものは痛い。

 もらわないで済むならその方が良い。


 クソ重たいバトルアックスとかメイス、モーニングスターなんかも有りなんだけど、そこはそう言うルールだから仕方が無い。

 鎖鎌もあるけど、あまりに使い辛いのでここ10年、公式戦では使った記録が無い。下手すると自分が絡まるなんて、冗談じゃ無い。


 ちなみにバトルハンマーも禁止では無いけれど、これもほぼ使う人は少ない。

 取り回しが悪すぎるから。

 当たり前だよね。

 好んで使うバーンシュタイン(うち)のネイパーがオカシイだけ。



 トゲを付けるのは禁止だし、一撃で潰れて死ぬわけが無いから良いだろう。と言う前提でルール作ってるからね。


 でも、ディヴィジョン2辺りだと年に三人くらい、一撃で潰れて大怪我をしてる。

 本当に死んでないだけ。

 ああいうのも、一応受け身の取り方ってあるからね。未熟だと致命傷にもなる。

 だからジュニアではモーニングスターは禁止、なんだけど。

 ……メイスやアックスも禁止しろよ。


 もっとも私だって、もろにあたったら滅茶苦茶痛い。

 死なないまでも、一撃KOされる可能性も否定出来ない。

 いずれにしろ相手の得物の直撃なんて、絶対もらわない方が良い

 


「東クレストリーグ第十六節、その第十一試合。格式フォーミュラB2。制限7分、時間内に決着がつかない場合、引き分けとなります。……特に反則行為は認められないので、同試合の準備完了を承認します。――では両名、開始位置に!」 


 審判がゴーグルを降ろして大きく下がり、ネクスタと私もそのまま後ろに数歩下がる。

 ネクスタはカタナを抜刀すると、そのままさやを後ろに捨てる。

 私はあえてナイフには手を伸ばさず、重心をさげていつでも動けるように。


「――開始っ!」

 レフェリーの右腕が上がると同時。

 ビィイイー!

 多少気の抜けるようなブザーの音が響きわたった。


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