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逃げない理由

「多分、あなたは始めから。とうに考えが及んで居たことなのでしょうけれど」

「ん? なに?」

「何故、戦女はミレディバトル以外のことをしてはいけないのか。わたくし、このところずっと考えておりました」


 それは単純。

 殺人機械を制御下において有効に利用する一番効率の良いカタチだから。

 答えは実に簡単なんだけれど。

 これは相手がネクスタとは言え、教えるわけには行かない。


「考えるだけ無駄、ってヤツじゃない? もしも何か考えついたとしても。どうにもなんないよ。私達はステイブルとコロシアム。その往復以外、基本的にはなにもできません。ってか、しちゃいけないんだし」


「災害の場にわたくしどもが赴くことができれば、がれきを撤去し、道の無くなり、クルマも走れず航空機の着陸できぬところであろうと、300キロの資材を背負って駆けつけることができる」


「お説ごもっとも。――けどさ、お腹が減ったらお弁当でも食べれば良いけど。途中で薬切れ、なんて事もあるかもだし」

【医療スタッフがいないと薬はどうにもならないよ。スタッフさん達もただの人間だもの。私達についてくるのは絶対無理。医務室にある機械も無いしね】



 普段は週一の検診の時に意識を奪われた上で一時間、寝てるウチにその薬物も注射かなんかされてる、とみんな思ってるけど。

 これは実はウソだ、とオーナーに教えてもらった。

 入手も扱いも確かに困難だけれど、摂取自体は至極簡単。――らしい。


 その方法自体はさすがに教えてくれなかったけれど。

 勝手に出歩くことができないようにそう言っているだけ。



「娯楽の駒に徹することで、間接的に役に立っているのだとは思えども。直接の役に立つことは絶対ない。ステイブルの外にさえ出られない。状況によっては、ステイブルの存在自体が、他の皆さんの生活の足を引っ張ることさえある」

「言いたいことはわかりますよ、ネクスタさん。でもね、戦女如きが何かを言ってもさ。何も変わらないんじゃないすかね?」


「ですから、今回のこの事態。これこそ好機ではないかと思えるのです」

【あっさり死ぬ可能性があるこの状況が、なんで好機になるの?】

「直接、人のお役に立つ。積年の夢が叶う。ということです」


 何が積年だ! 最近考えるようになった。って今、言ったばっかりだよね?

 このポンコツは、ホントに……。


 外見で損得があるってホントだな。

 コイツ、黙って突っ立ってたら、それだけですごく賢く見えるんだよ!

 美人はお得ですねぇ。あー、腹立つ!!


【良ーい? 二人とも。――なんかあったら私、マジ許さないから覚えときなさいよ……! 最後の廊下に入った。あと一分、それでそこにバーサーカーが行く】




「あと一分、……どうなると思いまして?」

「実物を見ないことにはどうしよう無いけれど。でも……」

 見えてしまったらおしまい。と言う可能性だってある。



 ボブと執事さんのその後の調査によって、お屋敷を襲撃したジェノサイダーが、あのまま戦闘を継続する気なら。

 どう計算しようが、執事さんの他にボブとお屋敷の警備の人達が合流できても。

 私に、私達に勝ち目は無かった、完全にゼロ。と既に結論が出ている。


 あの場には執事さんとあと二人、三人の魔法戦に特化した特殊部隊もいたけれど。

 全く問題にしないはずだ。と、ボブと執事さん両方が真顔でそう言った。

 世の中にはどうにもならないことは結構、ある。


 これから来るのは、そのどうしようも無いくらいに強いヤツ、それを殺すために作った機械。



「とにかく、ビームもミサイルもそうだけど、マシンガンも。当たったら即死するからね?」

「詳しいのですね。でも手足なら……」

「人の話聞けっての、このアホ! 掠りでもしたらそこからちぎれる、って言ってるの!!」


 ジェノサイダー用の兵器なんだから、グレネードの破壊力は考えるまでも無い。

 速射砲は諸元が間違って無ければ、距離によっては装甲車だって穴が開く。

 対人レーザーと言う名前が付いてるくらいだから、射程距離なら人に対して致命傷を与えるのは間違い無い。


「そこまで詳しくは知らないけれど、戦女を強制排除する。そう言う用途で作った機械なんだよ、アレ!」

「その後、作られなくなったのは?」

「戦女を兵器として使ってみたら意外と無能で、結局、戦争には使わなくなったから……、だって」  


 一応、ステイブルで閲覧できる資料ではそうなってる。

 嘘は吐いてない。


「何でそんなに詳しいんですの?」

「……戦女の、弱点を知りたかったんだよ。私個人とするならば、小手先の誤魔化しだけでここまで来たからね。ネタはいくらでも多い方が良い」


「何か、わかりまして?」

「企業秘密、……なんてね。――戦女でも一〇〇m以内であてれば、ライフル弾が貫通する。って言われてもさ。私、そう言う強さは求めてないから」


「人前でわたくしをを裸に剥くのは良いのに?」

「殺しちゃいません。全部ルールの中のきまりで、……ん? 来た、かな」


 まだ音は聞こえないけれど、定期的な地響き。

 私達とは違うルールで戦うヤツが、来る……。


【メインゲート、そろそろ見えるよ!】

「マコティ、バーサーカーが中に入ったらゲート、……閉めて」

【バカ! なに言ってんの!?】


「ヤな役を押しつけてごめんね、マコティ。……よろしく」

【…………あのさ、マジで良いの? ――良いのね? マジで閉めてもらうからね!? あぁ! もうバカバカ! ホンっと知らないからっ! ……バカっ!!】


「わたくしは確かに博識とはほど遠い。そのうえ考えも浅はかな、莫迦者ばかものであるのだ。とは自覚しています。幼年教育の時はもちろん、ステイブルの教育係の方々には、今でもご迷惑をかけています」

「……で、アンタはアンタで、急になんの話を始めたの?」


 でもネクスタは、それには答えず、カタナを抜刀していつものように、さやを後ろに投げ捨て、右手を上げ、カタナを掲げる。

「それでも。莫迦者故に基本を踏み外すことの無い着直な戦い、お見せ致しましますわっ! ――認めるのは悔しいですが、アリエル。あなたはいつでも聡明で冷静です、わたくしに指示をっ!」


「私を信用してくれるんだ、ありがと。――来たっ!」


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