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怖いと言うことを知らないと怖く感じない

 私個人とすれば、いまさら慌てたってしょうがない。

 方法はどうあれ、こうなることは決まっていたのだから。


 それに、ジェノサイダーに拉致られるのを考えたら、バーサーカーなんてかわいいもんだよ。

 だって存在自体はみんな、ある程度知ってるもの。

 知らなかったのは、アホのネクスタくらい。


 ジェノサイダーなんて、そもそも言葉自体を誰も知らないんだから。

 そんなものと銃撃戦なんかするよりは一〇〇倍マシだ。


 無線機を胸に挟んで固定する。

 ポケットとか、無いからね。

 うん、これはもう少しおっぱい、大きい方が良かった。


 ……あれ?



「で、ネクスタ。……あんた、何してるの?」

「軍用対人殺傷兵器がここに来る、と聞こえました」

「……だから聞いてるんだけど?」


 そもそもあんた。バーサーカー、知らなかったでしょ!?


「せっかく人よりも力があるのです、ここで使わずしてどうします。……それに」

「それに?」

「あなたが、変に落ち着き払っているのが気に喰わないのですわ」 


 ――知るか! 



 そうだよ!

 見た目に欺されがちだけど、コイツ基本はアホの子なんだよ。

 むしろ私に対する対抗心で恐怖心を踏み潰しちゃったのか……。


 あ、違う! バーサーカーを知らないから、恐怖を抱きようが無いんだ……。

 無知は罪、と何かに書いてあった。――まさにその通り。

 幼年教育の間。何してたのよ、アンタ!



「戦女でも歯が立たないくらいのパワーがある機械なんだよ?」

「腕が鳴りますわ!」


「百人を一瞬で殺す機械だって資料に書いてあって……」

「そうで無くてはヤル気が出ません!」


「完全に壊すのに戦車が何台も居るって……」

「戦車より強いと喧伝できます!」


「あのさ、少しは恐がれって言ってんの! ただ突っ込んだら死ぬって言ってるんだよ!」

「ふむ。……でもしかし、あなたと二人ならどうなのです?」


「な……、なんなのよ、急に」

「あなたはその“バーサーカー”とやらの存在を知りながら、あえてここに残った。それは勝算があるから、でしょう?」


 ……違うよ。狙いが私だと知ってるからです。

 私が逃げたら何処まで追いかけてきて、被害が拡大するから。……だから。


「みてて気がつかなかった? 逃げそびれただけ……」


【アリエル、マコティよ? ――アリエル、聞こえてるの? そこにネクスタも居るよね? ……ちょっとアリエル! 返事、しなさいよ! カメラで見えてるんだからねっ!!】


 ネクスタと比べると、ささやかな胸の谷間からマコティの声。


【……おかしーな、聞こえてないの? ……あのぉ、フィールドの放送ってどのスイッチですか?】

 トークのスイッチを押す。

「ごめん大丈夫。……放送、要らない。聞こえてるよ。――そっちは?」


【警備の人はほぼ全員、施設の外に出てもらったよ。今は主任さんと技術の人が三人、この部屋に残ってくれてる。協会の人達は避難中。他の子達の位置の把握も大丈夫。とりあえずバーサーカーと反対側に回るように誘導してる】


 やっぱりマコティはアタマが良いし、行動力がある。

 やってもらいたかったことを全部やってくれた。


【はい? そうなんですか。――あのね、アリエル。ボタン押さなくても喋れるように、BSって言うスイッチ入れてロックしろって。……えーとトークスイッチをオンにして、OKボタンと一緒にファンクションって言うスイッチの……。ん~、ちょっと待っててね……】


 軍の標準式無線機だから、使い方、わざわざ教えてもらうまでも無いんだよね。、

 お屋敷の警備が使ってるのとほぼ、同じタイプなんだよこれ。

 だから、使い方は聞かなくても良く知ってる。

 あとでなんで詳しいか。なんて言われると困るから一応、話を聞いたフリはするけれど。


「えーと、そんな感じなんだけど。……今の説明で、わかった?」

「おっけー、了解。トークボタンロック確認、……双方向通話、確立。表示確認。――マコティ。私の声、聞こえてる?」



【……うん、聞こえてる。――で、改めて。なんで二人はそこに居るの!?】


「単純に逃げそこなったんだけど、かっこ悪いからリスクの分散、と言うことにしておいてください……。バーサーカー、現在位置は?」

【現在、審判団控え室付近を通過中、だって。このまま行けばあと5分でメインスタンド下からそこに出るよ】


「バーサーカーだ、って一発でわかったんだから、軍に出動要請、出てるんだよね?」

【現在、急行中って、――はい、そうですか。……なるはや(・・・・)でそこに突入予定、だって。二人も速く、逃げなさい!】


 でも、逃げるったって、何処に……。

 多分私を狙って追いかけてくるのだろうし。

 



「ここはもともと戦うためのフィールドなのです。……だったら」

 ネクスタが姿勢良く立ったまま、何かを考えるようにアゴに手をやる。

「ちょっと。 ……急になんなの?」


「つまりはここに足止めできれば、被害は最小限に留まる。そう言うことですわよね?」

「まぁ、それができたら、一番良いような気はするけれど」



「ふむ。……マコティ、聞こえていますか? ネクスタです。敵の武装の詳細を」

【待ちなさい、そこのバカ二人っ! なに考えてんのよ!】


「アリエルは知りませんが。わたくし、ネクスタ個人とすれば概ね、あなたが今。思った通りのことを考えているのではないかと。詳細を。……まぁ、わたくしが聞いたところでわかるものでもないでしょうが」


【バカを言うにも限度ってあるでしょ!? ――はい? あ。ありがとうございます。……今、資料もらったからそのまま上から読むよ? 左腕に二〇mm多銃身速射砲、短射程グレネード投射装置。右腕には格納式七二五mm超鋼合金ブレード、胸部に対人レーザー発振装置。背中に五キロ級ミサイルランチャー×六】



 一応、と付くけれど。オーナーのボディガードとしての勉強や訓練だって今も、ちゃんと続けてる。

 他の戦女よりは、武器関連には詳しい。

 だから聞いただけでわかった。


 全部かすっただけで死ぬヤツだね、それ……。


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