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戦う遺伝子 ――すり鉢の底の淑女――  作者: 弐逸 玖
クレストリーグイースター ピリオド22 ゲーム11
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直前ミーティング


『では最初に、二時間前オッズから確認していきましょう。アリエル三分以内勝利が22%で最多、続いてネクスタ完全勝利五分以内、ネクスタ勝利5分以内、時間切れ引き分け。と続きますがいずれも10%を切ってこの試合、数字的にはばらけました。トップはアリエルですが、全体の投票状況はネクスタ優位です』

『通常、人気薄のはずの三分以内が、アリエルだと10どころか20を超えてくる、この辺が面白い』


『今節のファーム連ですが、キリュウイン、クレイシアstb、ホルシュイーストの順でこれが二八倍』

『バーンシュタイン絡みの数字、……五番人気の組み合わせに名前、あるね。今回は結構人気がある』

『前節、辛くも勝利したバーンシュタインのもう一人、ネイパーですが。加算ポイント的には圧勝でしたからね』




「アリエル、支度は出来たか?」

 全く確認もせずに控え室の扉が開き、筋肉質の男性。トレーナーのボブが入ってくる。

 私の裸なんか、見たってなんにも思わないだろうけど。


「大丈夫です。ボブ。……一番人気が私の三分以内、だそうですが?」

「今日は半端な早漏野郎ばかりが揃ってるな。天下のネクスタがそんなもんで満足するかってんだ」


 ――まさか。

「今日は大技で来るネクスタだ。こっちも大技でポイント狙ってみるか?」 

 早期決着しか狙えないのは、キチンと理由があるのだ。

 裏をかかなきゃ、ネクスタのクラスが相手なら絶対に勝てない。




『単純勝利の投票率は、ネクスタが63%。かなりの優勢です』

『前回の大逆転を見せられたら、この辺は当然の結果かな』


『ポイントも90超えは今期、東では初。93は東地区だけで無く、中央と西、3クレスト全体で今期最高点になりました』

『素質はあるよねぇ。この調子ならプレミア昇格も見えてきますが、だからこそここから三試合前後、特に大事にしていきたい。この人の……』


『あー、お話中すみません。――場内アナウンスが入る模様です。ちょっと聞きましょう』


《The stadium maintenance will be delayed, and the start of game 11. will be delayed by about 10 minutes.》




「10分遅延、な。大丈夫か?」

 ――あー、モチベーションがぁ! なんてね。

 前の試合で派手にフィールド削ったし、一部壁も壊れた。

 思ったよりも直すのに時間がかかってる。


「はい、それはもう全然」

 ネクスタは騒いでるだろうな、細かいもの。アイツ。

 でもさ。わりとどうでも良いんだよ、そんなこと。どうせ10分伸びるだけ。




『Bコートへの移動はぜずに、場内整備を継続、次試合開始は一〇分程度遅れる旨のアナウンスがありました』

『ちょっと今日、押してますから。Bの一二試合を遅らせたくないんでしょう。――Aコート、フィールドがボコボコですからねぇ。勝敗確定後で、戦女二人も避難して事なきを得たけど、東クレストで魔道師の乱入事件があるとは予想外だったね』


『元から、魔導妨害については気にしていた東クレスト協会ではあるのですが、直接行使は考えていなかったようで。警備員が総出と言うことになりました』

『特に魔導防御という観点から行けば戦女は防御力はゼロ、ですからね。彼女等の安全を第一に考えて欲しいね』


『一応、フィールドバリアはあるんですが、フィールドに飛び降りました』

『警備体制、見直しが必要だよねぇ。安心して試合の出来る環境は必須ですよ』


『荒れてしまったフィ-ルドではありますが、あと10分で整備が終わる、と言うのも、フィールドキーパーの仕事をみる、と言う貴重な機会ではあります。――お伝えしていますのは、公式にファンファーレが10分遅延の発表がありました本日の第十一試合、注目のカード、ネクスタ、アリエル戦の予想、解説です』




「オーナーから指示が来てる」

「珍しいですね、オーナーが直接なんて」

「キリュウインのご隠居には悪いがこの試合、どうしても勝っておきたいそうだ」


「ファームポイントですか?」

「今日はネイパーが不調でな、棄権させる事にした。ただ、どうしてもステイブルとして今日は勝ち点20が欲しいんだよ」

「私なら連勝だから10+連勝ボーナス20で30、と?」

「それなら次節、二人で星を落としてもクレスト六位がキープできる」


「今期、結構とってましたね、ファームポイント」

「来季の移籍優先権のこともあるからな、八位内は何とかしたい、だそうだ」

「つまり戦術は……」

「そう言うことだ、一気にカタぁ付けろ! 勝ち点は最悪、今回は51でも良い」


「アレをやれ。と?」

「オーナーもOKを出した。昨シーズンは上位限定で三回だけ、今期はまだやってねぇ。ネクスタも、自分にはやってこねぇと踏んで油断してるはずだ」



 個人の勝ち点とは別に、ステイブルにも一勝につき10ポイントが入る。

 但し引き分けは勝ち点ゼロ。


 シーズン後、成績上位のステイブルには当然、それなりの賞金が支払われる。

 賞金の対象になるのは八位まで。


 ステイブル自体は保護施設の意味合いもあるから、政府からの援助も当然あるのだが、賞金が大きくなればそれは単純に嬉しいだろう。

 ――来季に向けて年内には自前の練習場を作る。

 と、今期の始まる前、オーナーは言っていた。賞金は欲しいのだ。


 そしてホームとして自身が運営する闘技場があれば、開催回数が増えるけど。

 バーンシュタインは練習場まで含めて、キリュウインに間借りしてる状態だから、ここはあまり関係無い。

 キリュウインのホームならクルマで一時間弱。

 試合会場が近いのは良い事だけど。


 さらにシーズン後。ランク上位のステイブルは、幼年教育修了者の中から、指名する権利を得ることができる。

 ついでに今期終了後から、クレストリーグの下、ディビジョン1での移籍会議ドラフトに参入が決まっている。これもポイント上位からの指名。


 それ以外の配属は機械的に割り振られるし、斑女まだらめなら一番近い場所のステイブル。

 実力を見た上で受け入れる、とすれば移籍市場に参入するしか無いが、我がステイブル・オブ・バーンシュタインは、歴史もお金も無い。不利なことこの上ない。

 指名で取れるなら、それはとてもリーズナブルなのだ。


 そして当然、強いチームには高名なトレーナーが自分を売り込みにだってくる。

 優秀なのにあえて バーンシュタイン(ウチ) に自分で来る、と言うボブみたいなのは例外中の例外。


 いずれステイブルにとっても、勝って悪いことは何も無い。


 とは言え。

 オーナーにしては珍しく、試合に口を出したくなったのか。

 


「会場中、早漏野郎しか居ねぇ事だし。一分以内でカタぁ付けちまえ」

「言うのは簡単だけどね」

「一分でネクスタも客も昇天、良いこっちゃねぇか」


「女のお客さん、どうするんですか」

「はっはっはぁ……。また苦情ラブレターの山って事だ」


 勘弁して欲しいなぁ。苦情を呈したいのはわかるんだけどさ。

 毎回々々。精神的に、キツイよ。自分のせいとは言え……。


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