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戦う遺伝子 ――すり鉢の底の淑女――  作者: 弐逸 玖
ステイブル・オブ・バーンシュタイン
17/43

大事な話

「ところでオーナー、アリエルに話ってのは……」

「そう言うことだ。話は二つだが、まずは大事な話を先に済ませてしまおうか」


 そう言うとオーナーは、自分も執務机から離れて、私とボブの座るソファの向かい側へと収まる。


「アリエル」

「あ、はい!」

 こんなにマジマジと正面からオーナーと話すなんて、何時ぶりだろう……。

 年齢的にはもう四〇近いはずだけど、全然見えないな。

 初めてあった日から歳とってないよ、この人。


「改めて聞くまでも無いが、プレミアへの昇格条件は知っているね?」

「上位六位内かつ、クレスト優勝者以外は全クレスト参加の入れ替えリーグ上位五位まで。……です」

 今現状、昇格圏内争いができてるのが奇跡。

 後期ズルズルと順位が落ちることを思うと今から気が重い。


「君は我がステイブル初のプレミアリーガーになると期待はしていたが、それが今季になるとは考えなかった」

「はい? えーと、オーナー? 何をおっしゃって……」

 オーナーは冗談をいうひとじゃない。私が莫迦ばかになったのかな……?



「ボブ、勝ち点の計算としてはそれで良かったのだよな?」

「そうだな。多分次戦あたりから終盤まで。予測通りにクレイシアのシャルレと、ホルシュのマコティ、そしてこれは計算外、キリュウインのネクスタが伸びてくるだろう。と言うことは、現上位陣のポイントが軒並み伸び悩む。残り試合で勝率六割四分をキープ出来れば全試合51ptでも計算上、75%強で四位通過だ」


「ボブ。全試合51でも、ですか?」

 本当にただ勝っただけ。むしろ狙ってとるのは難しいポイントだが。

「あくまで計算上だが。仮に62だとすると、可能性は82%まで上がる」


「と言うことで、私の課する君の至上命題は、怪我をしないこと、そして負けないことだ。引き分けでも良いが出来れば勝ってくれると嬉しい」


「は、はい! 努力します!!」

 バーンシュタインの紋章をおっぱいに付けて。じゃない、背負って。

 斑女まだらめの私が、プレミアリーガー!?


「良い顔だ。君は笑っている顔が一番良い。いつ見ても、試合の前後は大概不機嫌そうにしているからね」


 褒められた、しかもオーナーに! 一瞬で顔が熱くなる。

 オーナーの前で、かっこ悪い!!


「その……私。あの」

「ははは……、協会からグッズの話が来たら、今度こそは断らない。君の意見は聞かずに私の権限で受けるからね? 君のその笑顔を、ここに閉じ込めておくのは勿体ない」


「でも私のグッズなんて、欲しい人が……」

「たで喰う虫も好き々々ってな。前から言ってんだろ? 間違い無くマニア需要はあるってんだ」


 ボブに文句を言おうとしたところで、ドアにノックが響く。

「ご当主様、御打ち合わせの最中に失礼を致します、セバスで御座います」

「あぁ、丁度良かった。入ってくれ」


 執事さんが、音もなくスッと部屋に入ってくると、ソファに収まるオーナーの後ろに姿勢良く立つ。

「セバスの旦那が絡む話、ねぇ……。是非、今からでもアリエルを連れて帰りてぇところだが」

「さすがはハワード様、お話が早くて助かります。……まさにそのご心配の通りで御座いまして」


「アリエルだけ帰すってのは?」

「アリエル様にあっても、是非にお話に参加して頂きたく存じます」

「……そうかい。――だいぶん、たった今の話と矛盾するじゃねぇか、オーナー」



「私も済まないと思っているよ。――セバス。公安からの情報の精査、その後どうなっているか」

「はい、少々公安側の脅威の見積が甘かった模様です。こちらで鼠の種類を再精査したところ、元軍の魔導関連に籍を置いていた諜報関係者が、二名ほど入り込むのではないか、と」



 基本的にステイブルオーナーはお金持ち。

 そして、形式上。一〇人単位の戦女を“個人所有”している。

 戦女の育成技術と身体維持の技術、さらには“作成”の技術さえ持つ。


 そして戦女の唯一の弱点は魔法。

 だからごく一部の人だけしか使えない、どころか知る事さえ出来ない。

 そういうレベルの魔法に関する技術や知識も豊富。


 その上、元軍とか政府系の研究所で、表に出ない研究をしてた。もしくは今でもしている、と言う人が大半。



 ウチのオーナーも全てに当てはまる。

 お金と超技術、そして戦闘力と女の子。

 全てを独占する鼻持ちならないヤツ。なのである。


 だからまれお客様・・・がいらっしゃる。と言うことになるのだ。

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