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戦う遺伝子 ――すり鉢の底の淑女――  作者: 弐逸 玖
ステイブル・オブ・バーンシュタイン
13/43

鍛えられないところ

 幼少期から特殊な育てられ方をする戦女である。

 通常、5才までは協会の養育施設で育てられるが、既にその段階から特殊な教育は始まっている。


 5才以降は各ステイブルに、指名なり機械的になり、割り振られる。

 だから5才の時点で対人格闘の基礎はもう出来ている、と言うことでもある。

 それは何も格闘術の知識だけでは無く、身体にも当然基礎がしみこんでいる。と言うことだ。


 そんな感じなので、数年の遅れは取り戻せなくなるほどの差になる。

 例えば私は致命的に能力の発現が遅れた。

 10才になって始めてここに来たのだ。

 結局、基礎的な持久力は伸ばすことが出来ずに現在に至る。


 今、戸惑いながら私の背中にシャワーをあてるエリィ。

 彼女も6才までは普通の女の子、つまり幼年教育を受けていない。

 今のところ、カップ戦や育成リーグに出ていないのもそれが理由だ。


 現状、彼女は単純にパワーが足りていない。完全に取り戻すことは出来ないが、

 ――トレーニングと戦術で何とかなる。お前よりはましになるぜ。

 とボブが言っていた。


『あとは当人がヤル気になってくれりゃあな。そしたらお前、実力も一気に伸びる。その上見た目も儚げで、アイツはきっと美人になる。どっかの粗暴な斑女よりは人気出るぜ。写真集も出せるかもな』


 ……うるさいわっ! 私は戦女、戦うのが仕事だ! 写真集なんか、いるかっ!

 あの言い方、思い出しただけでも腹の立つ……。


 ま、でも。人気が出るかも、ってのはわかる。

 至極単純に、かわいいんだよ。エリィ。

 性格が若干歪んでるけど。



「懐に潜り込んで、一気に連撃。首と鳩尾を狙ってKO。……先週から、空いた時間。ずっと、ナイフとかダガー使う人のライブラリの映像を、いっぱい、見てたんだ」


 普段は、練習も資料の研究もやらされてる感がありありなんだけれど。

 なんかいつもとは少し、投入されたカロリーが違う気がする。

 練習含めて一週間、遠征に出てる間に何があった?


「どのプレミアの選手より、ナイフの動きは一番、アリエルが格好良かった。……わ、わたし、嘘なんか言わないから。絶対、言わないから」


 こんな身近にコアーなファンが! ……涙出そう。

 ミレディバトル、やってて良かった!!


「私もナイフ、あのスピードで振れる?」

「その辺は君も破戒淑女ジェノミレディなんだから、練習次第でなんとでも。……素手はもちろん、ナイフやダガーだと超接近戦になるし、それは結構大変だよ? カウンターの可能性も無駄に跳ね上がるし」


「でも、そうならないと。アーマーパージ、できないし」

「それは、やらないで済むなら絶対、その方が良いと思うんですけど……」


 私はそれしか出来ないから接近戦、やるしか無いんだけれど。カウンター喰らう可能性はもちろん高い。

 それがアーマーパージ、と言うことになったら、当たり前だけどとんでもない数字まで跳ね上がる。。


 実際に一度、ディビジョン1のとき。マトモにカウンターを喰らって、数試合出られなくなるくらいの大怪我を負った事もある。

 カウンターは有効な防御が取れないから、まともに入ったら致命傷になり得る。

 好んでやる必要は普通は無い。


 

「わたしは。わたしはアリエルみたいに、……違う。アリエルになりたい!!」


 シャワーヘッドを掴んだまま、ガバッと背中に抱きつかれる。

 今のところおっぱいがほぼ無いけれど、その分直接身体同士が密着する。


 人と人が抱き合うことは、こんなにも心地良いものなんだ。

 心の傷付いたところが治り、すり減った分も補充されて満たされるのを感じる。


 心なんか、鍛えようが無いものね。

 傷ついたら傷ついた分だけ、すり減って小さくなってしまう。

 私で補給してあげられるなら、いくらでもあげるよ?



「あ……! 痛い?」

「んー? もうシャワーもしみなくなってたし、へーき」


 この子が近い将来、写真集を出すとして。おっぱい的にはどうなってるだろう。

 多分身長含めて、育つと思うんだよな、一、二年で急成長するタイプ。


 思えばネクスタと初めて会った時、私の方がおっぱい、大きかったんだよ。

 あっさりと抜き去られ、いまや取材の扱いに格差を感じるほどの差になってしまったが。

 まさか試合内容では無く、おっぱいで格差を感じるようになろうとは……。



 とにかく何でもしてあげたいし、大人気になるならそう言うのも悪くない。

 エリィだったらもうちょっと、髪の毛長い方が似合うと思うな。

 でもなぁ。……う-ん、写真集ってどうやって出すんだろうか。


 癪だけど、今度ネクスタに聞いてみようかな。

 世間では誤解してるようだけれど、アイツとは別に仲が悪いわけでは無い。

 むしろ別のステイブルの子だったら一番、仲が良いくらい。


「痛くない? よかった……」

「あぁ……、う、うん」


 そして。良いシーンなんだけど、シャワーが左の胸の先端に直撃してる。

 ――エリィさん、水圧。すこし強くないですか? そこもやっぱり鍛えられないので、私。ちょっと……。

 わざとやってるわけで無いのはわかってるから、口に出しづらい……。



「……教えて。全部」

「ぁん。わ……、わかる範囲で、ふ、ぁ……、おいおい。ね」

「とりあえず、今。ちょっと良いので、一つ教えて……下さい」


 おぉ。関係者では有名な、へそ曲がりエリィの態度がへりくだった!

 うん。もう、なんでも教えちゃう!


 ……でもその前に。

 シャワー。ほんの少しで良いから、ずらしてマジで。

 そこはさすがに鍛えてないから、ダメージが。

 ずっと乳首を直撃してるもんだから、その……。


「は、うん、……な、なにかな?」

「今は良いけど。スピード勝負だと、多分邪魔になると思う。胸を大きくしないためには、どうしたら良いの?」




 ――それを知ってるなら、全力で回避してるよ……。


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