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戦う遺伝子 ――すり鉢の底の淑女――  作者: 弐逸 玖
ステイブル・オブ・バーンシュタイン
11/43

はしたない、を知る少女

「なら出たらいいじゃない、試合。ジュニアオープンは無理だとしても。ジュニアユース、今なら後期のプリンセシィズのカップ戦に間にあう」

「予選で瞬殺される。それに、そのあとのインタビューも……怖い」

 下衆な質問しか来ない、と言うのは私を見て良く知ってるからなぁ。


「負けたらペナルティ無いんだから拒否したら良いじゃん。……勝ったらこう言ってやれば良いんです」 


 不思議そうな顔をして、伏せていた目を私に合わせてくる

 お、ちょっと喰い付いてきた。

 他の子に聞こえないように数歩近づいて、耳元に子を寄せる。


「アリエルに聞いてない質問だけしろ、あとは答えない。ってね。――私は君の味方だよ、それは絶対忘れないで。……別にイヤなら試合には出なくても良いんだし」



 “人間”とは身体のつくりがまるで違う。

 バトルに出ないなら薬や身体の研究に付き合う、と言う手だって有る。

 病気や怪我をした時、人間用の治療が役に立たない時もあるからだ。

 人間用の薬や装備、武器の試験台、と言う仕事もある。


 一見、ろくでもない選択肢にも見えるが、それもジェノミレディの仕事。

 今だって、誰かがやってるから技術が進む。



 制服のネクタイは青と金のストライプ、これは戦女であることを示す。

 一方、スカイブルーに赤のネクタイの子達は、戦女では無い。

 医療や科学の分野で頑張ってる子達だ。


 私と同世代の子も二人居るはずだが、午後は“仕事中”なので今、この場には来ていない。

 あの子達のお陰でケガも早く治るし、新しくする装備も開発できる。



 それにエリィも“はしたない”の概念。そのなんたるかを知っている。

 バトルのアーマーも、バトル自体も。はしたないことこの上ない。

 アーマーパージなんてされるのはもちろん、するのも論外。


 斑女は、だからミレディバトルでクレストリーグまで昇格すること自体が希だ。

 数が少ない上、身体能力的に劣る。その上。精神的にもなかなか吹っ切れないから。



 なら、私は何だ。と言う話になるんだけれど、

 ディビジョン2に登録された時。

 勝つことさえ出来ればあとはどうでも良い、と割切った。


 オーナーのため。ファームポイントだけが全て、あとは全部どうでも良い。

 個人の勝ち点も、順位も。バトルファンの印象も、記事の書かれようも。

 はしたないことも、下衆なインタビューも、何もかも。


 ……まぁ、インタビューは。言う程は割り切れてなくて、過去に出場停止になってるけど。



「どうしてもミレディバトルがイヤなら、ボブとオーナーには私から言っておくよ? エリィが無理をすることなんか、何処にも無いんだから。そのくらいは出来るんです。バーンシュタインのエース様である今の私には、ね」


 今期だけだろうけどね、エース様。

 何しろ、上位二人の戦歴がファームポイントが加算されるクレストリーグで、二人しか居ないから。


 来期。ディビジョン1から誰かが上がってきたら、ナンバー3に降格は間違い無い。

 でも今期のうちなら、この子の我が儘を聞いてあげる事は出来る。

 聞くだけなのであって、通るかのどうかは別問題だけどでも。

 ボブやオーナーに話を出すことくらいは、今の私になら。出来る。


「ありがとう。でも、……今は、いい」 



「アリエル? 身体流してオーナーのところに行くよ、お屋敷の車寄せで、ボブを待たせるわけには行かないだろ?」

「はい、ネイパー」


「私達も、今日の練習終わりました!」

「二人のお着替えも用意してあるよ!」

「そうかい。……なら、一緒に行こうか」


 ネイパーと私は、一塊になった少女達を引き連れ、お風呂へと向かう。

 そしてその後ろ、ちょっとだけ距離をとってもう一人ついてくる。

 ――今日はみんなと一緒で良いんだ。


 アーマーパージをやっちゃったから、しばらく口も聞いてくれないと思ってた。

 前に、


 ――あんな事してまで勝ったってさ、みっともないだけ。バカじゃ無いの? ……きらい!


 って言われて。

 ――私に他の勝ちかたなんか、ないんだよ……。

 って、だいぶ凹んだのを覚えている。


 ふむ。でも今日はキチンと会話が成立する。

 どんな心境の変化があったんだろう。


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