ピュリドラッツ、許すまじ
~サンクチャリ迷宮・4階層~
はいはい、特に何事もなく平穏で詰まらない散歩道、という感じでひたすら歩き、時折魔獣を押しのけ(射殺しただけだけど)4階層までやってきました
いや本当に何にもないんですよね、3階層まではなにも。4階層にいきパッと開けた草原の方を見たら何故かその…可愛いウサギの大行列があった
そう 魔道具の魔石を齧る、あの毛玉≪ピュリドラッツ≫と、うさぎ≪ピュリアラビット≫達の大行列である
見た目モフモフだらけのクレーンゲームの箱、もしくは縫いぐるみ売り場、投げ売り状態である…
「「「っぐ、―――!!」」」
むりい!かわいい!攻撃なんか無理イイイイイイ!
俺とシュティーア君、アレフガルド君が思わずひるむとプーちゃんが呆れた声でこいつらはこんなに普段多いのかと聞いてきた
生徒会長さんと風紀委員長さんが俺と、シュティーア君、アレフガルド君とマニッシュ君に目隠しをするか見ない様にして進むように言ってきた
ふむ…ならばと俺はハンカチを出して目隠しをした
「…本当に、目隠しするとは思わなかった…歩き辛くない?」
「大丈夫、分ちゃんが魔力透視魔法で地面と魔石、地面の隆起なんかを教えてくれるから」
「何その魔法…」
「魔獣や魔物の体格や姿は見えないけど、魔石の場所や心臓の場所、地面や遮蔽物などの物は見える様にしてくれてるの」
「だから、その規格外の魔法は魔力消費大丈夫なの?そもそもそんな効果の魔法聞いたこともないよ。」
「あ、魔石持ちがいるー射貫いていいかな」
「聞いてる?」
俺の今の視界は、サーモグラフィーで熱源を見ている感じ。魔石はほのかに青っぽいが振動しているのでわかりやすいのだ
そして心臓は白かったり滅茶苦茶赤かったりしている
でもってそれだけだと辺り一面地面が赤かったり白かったりするだけでとても見辛いのでそこは分ちゃんに何とかして貰って、暗視ゴーグルを見ている様な風に、魔物や魔獣の体格の形が分かるようにして貰った
俺が魔石を保有している毛玉の方へと矢を射ると一瞬青白く光が走り、一匹分の熱源が消えたのでちゃんと射貫けたことが判明した
スミレに魔石をとってきて貰おう、そう思ったとたん先程迄素知らぬ顔をしていた(いや本当にそういう顔をしていたかどうかはわからないけれども態度が知らんぷり状態だったのに)周りの毛玉ことピュリドラッツ達だろう体格のやや大きめの丸いのが、俺が仕留めたやつの魔石をあろうことか目の前で奪うように齧りつきやがった
「ああああああああああああああ!」
「うわ、どうしたの?!」
俺が余りの事で思わず叫ぶとピュリアラビットたちは音にびっくりしたらしくバッと一斉に逃げて木や岩陰、草むらの中に飛び込もうとわたわたと走り出した
のこるは、にっくき毛玉たちだ
シェンフ君が俺にもう一度どうしたのかを聞いてきたから俺はハンカチをほどいて怒った顔をしつつも魔石を夢中で食べている奴らに目掛けて手榴弾を生み出した
「俺の魔石イイイイイイ」
「………………………………あぁ。…食べられちゃったんだね」
「あいつら俺の魔石とりやがった、ぜってぇ許さねー」
「……………お、落ち着いて?ね?魔石位ショージ君自分で創れるでしょう?」
「いくらでも作れるわけじゃないよ!材料は高価だし希少なんだよ。」
「う、うん、そうだね。ご、ごめん」
俺は手榴弾を矢の先に括りつけ、ピンを外してからピュリドラッツの群れの中心に向かって射ると、後ろから小声で牧野さんが何かを呟いて風がこっちに向かって吹き、矢の威力が落ちて空中で爆発した
「昇次。落ち着きなさい、あの子はそれがご飯なんだから、仕方がないだろう?それに、さっきのは完全に、お前が悪いよ」
「…………」
「こら、拗ねないの。聞きなさい。あのね、あんなに密集している、後方の魔石持ちに、魔石を食べる魔獣の群れだよ?よく考えれば倒した後の魔石がどうなるか、わかるだろう?」
「…………………………ふぁい」
牧野さんにとって俺はいつまでも子供なのだろうか…いや、さっきは言動がどうしても子供っぽかったよな、うん…少し、反省するよ…
牧野さんは俺の頬を挟み込み、子供によく言い聞かせるように注意した
俺がしょんぼりしたのを見たのか、気持ちが落ち着いたのが分かったのか、牧野さんはにっこり笑って俺の頭を撫でてくれた
「よしよし、今度は気を付けようね。後、ピュリドラッツ君達は魔法で攻撃したら増殖するから気を付けるんだよ。」
「うん」
「手榴弾は、危ないから投げちゃだめだよ。近距離の戦闘タイプに危害を与えかねないからね。弓矢があるんだから、そっちだけにしなさい。」
「はい。」
「よしよし」
俺は結局牧野さんに宥められ、頭を撫でられた
いや、牧野さんは昔からそうだったし、俺たち近所の子供は牧じいによく撫でられたり注意されたりしていたけれども…特に悪友と俺とは結構な確率でとっ捕まって説教コース待ったなしだったから慣れてるけど…!最近(大人になってから)はなかったから大分恥ずかしいんだけど…!
「…ショージ君がヴァ―ゲと知り合いだとは分かっていたけれども…何?どういう接点?」
「あぁ、昇次は僕の転生する前の、世界で家が近所の子供だったんだ。ついつい昔のように子ども扱いをしてしまったよ。ハハハ。」
シュティーア君が牧野さんにどういう関係かを聞いているけれども俺は普通に昔からお世話になっている近所の人なんだよなーと苦笑していた
「…ヴァ―ゲさんはショージ君を利用したりするために、仲良くしているとかじゃないんですね?」
「むしろ生徒会の人達がこの子を悪いことに使う気ならきつーく、お仕置きしないとねぇ。」
「「っひぇ…」」
「は、はぁ…大丈夫です、僕達の方にはヴァ―ゲさんも知っての通り、彼の今の兄が生徒会にいるからそういう事しませんよ」
思わず俺とアレフガルド君の声が被ってしまった
す、すごく怖かった…ごくり
普段にこにこしている人が本気で切れたら手が付けられないくらい、怖いのだ
「…そんな事よりこのピュリドラッツをどうにかしないと修理した側から魔石や魔道具を壊されてキリがなくなるぞ?いいのか?」
「そうでした」
「うん。そういえばそうだね。」
そうして俺らは物理攻撃オンリーで毛玉ことピュリドラッツをプチプチ潰すことにした
俺は弓矢を3本纏めて構えて射殺した
今では3本くらいなら手の皮も平気になったし正確に中心、狙ったところに深く刺さるようになったのである
ちょっと前、4年前なら刺さってもそんなに深く、致命傷になるのは一か所だけで他は足止め目的でやったりとかかすり傷目当てにだったりとかの目的がある時でしか、3本構えたりはしなかった(命中率は良いんだけどね、威力が弱かったんだ、しかたない。)
それが今ではしっかり3本とも本命の攻撃になったりするから問題ないぜ
暫くピュリドラッツを討伐しまくって数を数えるのを諦める位には討伐し、何度も弓を引いたせいでもはや単純作業のし過ぎで手が赤くなってきた
しかし俺の一番攻撃力のある手段の魔法と重火器禁止を言い渡されたのだから、弓矢と、パチンコと、後は…あ、鞭とかもあったか
ただし今回は得意な弓矢とパチンコだけでいいや。シェンフ君達もいるしね
30分以上ひたすら歩いてはピュリドラッツを仕留め、そしてシェンフ君達もプチプチと(いや、シェンフ君達は剣とか格闘術だったりするからザクザクと、かも知れないけれども)ピュリドラッツたちを討伐していった
一言いうならば、数いる為魔法で一掃したいです
まぁそんな事したら駄目らしいし、我慢してひたすら弓を引くだけの作業をしているのですが、ね?キリがない作業でとてもとても…精神的に参っちゃうね
「シェンフ君、手榴弾使っていい?」
「うーん、キリがない物ね、仕方ない…さっきみたいに、弓矢の先に括りつけて遠くに飛ばしてだったらいいよ?」
「わかったー。」
シェンフ君の許可がもらえたので俺は再び矢の先に手榴弾を括りつけてピンを抜かずに射った後、その矢に当たるように射貫いた
ドオン、と破裂音がして一気に俺が最初に射った周辺にいたピュリドラッツたちは魔石や討伐証拠となりそうな牙、毛皮を残して消し飛んだ
「…す、すごい威力だ」
「魔法でもないのに、この威力の攻撃が可能なのか…」
「…………………すさまじいな」
風紀委員の人達が驚いているけれども俺は魔法を使っていいのだったらもっと凄いと言われているのだが…まぁ、言わなくていいか
次の矢にも手榴弾を括りつけ、態と遠くへ出来るだけ飛ばし、ピュリドラッツ達の群れに穴を開けて行った
手榴弾付きの矢を使い始めてから10分
あらかた片付き、後は俺があえて狙わなかった俺達に近い方にいる少数のピュリドラッツ達が数十匹。そして、俺が弓矢を構えると怯えたように鳴きながらも震えだすのでなんだか俺がいじめているみたいだ
「……………………やり辛いなぁ…」
「そりゃああれだけショージ君が弓矢を射るたびに後ろで爆発していたら、魔獣とはいえ恐怖に感じるでしょ…」
「「「…(こく)」」」
いや、気持ちは分かるのだけれども…俺が、せっかく作った魔石や修理したばかりの魔道具を齧られちゃあたまった物じゃないのだけれども?
そう思うと俺的にはこいつらは可愛い見た目の悪魔だ
「…パチンコで始末」
「うん、ショージ君は少し休んでいていいから。流石に、可哀そうになって来た…」
「魔石食べられたら修理や、生産が追い付かないんだけど?」
「それはそうだけれども、そろそろ疲れたんじゃあないかい?」
シェンフ君が何やら苦笑してポケットから取り出した乾燥フルーツを俺にくれた
ドライフルーツの、リンゴやマンゴー、ミカンなんかの感じの物を小さい袋に入れた物をくれたので俺は嬉々として受け取った
「はい、これ食べていいから休んでいていいよ」
「わーい、ありがとう。」
『にゃー、みゃーにも!みゃーにもぉ!』
スミレが目ざとく俺にねだってきたのでとりあえず宥める為にミルクを上げておいてから、シェンフ君に精霊にあげて良い物なのかを聞く意味で、許可を貰ってみることにした
前一度貰ったけれども精霊にあげてはいけない物をスミレに食べさせてしまったことがあるからね、一応聞いておかないと万が一病気になったら大変だし体調管理はしてあげないと、飼い主の責任だからね
「スミレにもあげていい?」
「いいよ。」
「よかったね、スミレ。はい」
『にゃう!はぐはぐ!』
スミレにミカンやマンゴーは駄目だろうから、リンゴに見える物をざっくりと千切って半分にしてから上げてみると匂いを嗅いでから食べて美味しそうに食べだした
マリアちゃんとリッツ君が二匹とも、羨ましそうに見ているがこればかりはシェンフ君に俺が貰った物なので勝手に上げる訳にもいかないし、俺の食べる分がなくなってしまう
流石にそれは勘弁して貰おうかな…ごめんね。と内心で謝っておいてミカンっぽい見た目のフルーツを食べた
味もなんだかかんきつ類と言われればそんな感じはする、が、そんなに買ってまで食べたいとは思わないような味だった
その後は接近戦を主にするシュティーア君やシェンフ君、スコルピオーン君にえーと…うんまぁ結構な人たちが、ピュリドラッツ狩りしたんだよ
俺はその間何もせず唯々乾燥フルーツ食べていただけでスミレとマニッシュ君とマリアちゃんと雑談をして過ごしたけどね
「所でプーちゃん」
「うぬ?なんだね」
「(あ、口調は戻したんだ)はい、プーちゃんにだけは上げてなかったよね、上げる。」
「…これは、腕に着ける魔道具か?」
「よくわかったね、そうだよ。使い方はねー」
俺が余りにも暇なので同じく暇そうにしているプーちゃんにバンクルを上げて、使い方や用途を教えていると牧野さんや俺の近くから動いていなかった数人に、目を見開かれた
そしてとうとう我慢が出来なかったのか数分後に色々と聞かれたりした
そしてプーちゃんにバンクルを上げ、他の人達には理事長先生があとで販売するみたいだからそれを買うようにと勧めてあげた
持っていた物は俺の分を外して後2つしかなかったから、いくら簡単に作れるとしてもこのピュリドラッツを完全に討伐しきっていない所で魔道具なんて作れるわけがない(材料が無駄に消費されるだけだ、そんなこと誰でもわかる)ので、後で販売すると決まっているのだからそっちで購入してくれと勧めたのだ
「ショージ君、何もこんな…今出さなくてもいいでしょう!」
「ピュリドラッツが興奮してるから警戒して」
シェンフ君と生徒会長さんがそういうが、遅かったらしくピュリドラッツが俺に向かって飛び跳ねてきた
「うわ、あ……ごめん」
…………
何があったかというと、俺に飛び掛かってきたピュリドラッツ2匹をマニッシュ君とアレフガルド君が槍と剣で捌いてくれた、だけだ…えと、武器はどこから…?
「「ショージ様大丈夫ですか?」」
「あ、う、うん。ごめんね?」
「「いえ。」」
まさか、5歳のアレフガルド君が…槍使えるなんて思いもしなかったよ
エルフやドワーフじゃない、人間の子供だよ?何それ聞いていない…
【ただの人間の子供を側使えにするわけないだろ。親ばかのあの二人に、更にキューリャだぞ?キューリャが、許可したんだぞ?】
お、おう…、うん?
【固有スキル持ちだ。職業;魔装槍師 固有スキル;槍収納・体格強化術…つまり、何時でも槍が出せて、槍を扱えるように体も鍛えられる術な。それが生まれ持って備わってる】
なにそれつおい・・・
え、じゃあ狭い密室でアレフガルド君と一緒にいたとしたら、槍を持っている一兵士に警護されているのと同じ?
【そう。】
うわ、予想外。ただの癒し要素だと思っていた
「…アレフガルド君槍なんて使えるんだね」
「は、はい。僕の家は魔道具を扱うお店をしてて、お父さんとお母さんが、体術を教えてくれたんです。その中で槍が一番好きなんです」
「初めて知ったよ」
「えへへー」
うん、どう見ても可愛い子供だ、可愛いし癒しだ
思わず二人に飴をあげてしまった
嬉しそうに早速ポケットに入れる二人が可愛くてほっこりしているとシェンフ君が俺をにこやかに笑いながらも呼んできた
あ、怒られる
そう思って俺も恐る恐るシェンフ君の近くに行ったら問答無用でデコピンを喰らった
ルールウド君のデコピンよりはいくらか軽いものの、痛い事には変わらない
痛い物は痛いのだ…ぐすん
「あのね、ショージ君。魔道具の、魔石が大好物の魔獣や魔物が迷宮にはほかにもいる可能性もあるからこういうのは、迷宮を出てからにしようね?あとルールウド君に言うからしっかり後で怒って貰うから覚悟してね」
「……ごめんなさい…勘弁してください」
「なりません。」
「………」
それはそうなんだけどさ…理由が分からない訳ではないよ?勿論…
迷宮内は危険が沢山だし、何が起こってもおかしくないし、実際魔道具をうっかり出した俺にピュリドラッツが2匹も飛び掛かってきたからね?
その前は弓を構えた時すぐに逃げたくせに、俺が魔道具をもって見せた途端に目の色を変えた(かどうかは見ていなかったからわからないけれど)ように飛び掛かってきたからね
「ショージ君は本当に…たまに警戒心が薄くなるというか、どこか抜けてるというか…ハァ、全くもう…。もっと考えて行動してね。」
「…も、申し訳ない…」
うぅ…今回はどうにも言い訳できない
100%俺が悪いのだから仕方ない
「今回はそこの二人が何とかしてくれる範囲で何とかなったけれども、他の人やチームメイトの人達に矛先が向かないとも限らないんだよ?いいかい、他の人との共同で行動している時はうかつなことや思ったらすぐ行動を起こすのは控えないといけないよ」
「…はい」
しっかり怒られてしまいました
その上、もう一度デコピンを喰らった
いたた…でもってこの後迷宮から帰ったらルールウド君にも同じか、それ以上のお仕置きアンド説教される時が来ると思うととても恐ろしいです…自業自得だとしても、ね
嫌自業自得だからこそ、かもしれないけれども。
ぎっしりとピュリドラッツがいたと言う事で念のために、この階層の緊急連絡用の魔道具を見てから次の階層へ行くことになった
電話ボックスもどきへと行くと案の定魔道具が壊されていたので一から似たような魔道具を作ることになった(あの毛玉め…ギリイ)
「じゃあ魔道具製作お願いね」
「あっはい。と言っても道具ないんですけど」
「例の施設…その中に、何かこの連絡用の魔道具に使用できるものない?」
「あれは魔石合成や精錬魔法するのに必要なだけの道具と素材です。あの施設には何も他にはないよ。」
事実あの施設の中には素材と数回分、魔石合成を行える位の材料、魔石しかなかった
むしろ魔道具を造るとするならば…カシャルドの中に入れて置いたプチ工房の方がまだ使える物があるよ
プチ工房と言っても大したものじゃないが、元々入れてあった調合室とキッチンの他に、こうなることが予測できたため屋敷にいったん帰宅した時に登録しておいたのだ
工房と言っても本当の親方の工房などといった本場の齧工房じゃあないから道具だって素材だって対してないのだけれども、まぁ何とかかき集めればなんとか代替品が造れるだろ
「カシャルドに俺の個人的な工房を入れてあるので魔道具造るのは問題ないとは思うけれど…たいして素材がないよ」
俺がそういうのが当たり前のように風紀委員長の人が牧野さんに素材を出すように言った
?????と疑問に思って首を傾げたら牧野さんがニコニコしながらパン、と両手を合わせて地面に両手を置いた
なんという…●の錬金j(げふんげふん…
【あれはドワーフの種族が使える種族魔法、その名も“鉱山収納”だ。鉱山並みに多くの金属、魔金属や魔石などの鉱物やそれを使った道具を確保する事が出来る種族魔法。】
「ショージ君は魔道具が作れるんだよね。だから校長先生が、ヴァ―ゲにサポートするよう言った時に色々と作れるよう道具と材料は持ってきておいたよ。さ、好きなだけ持って行ってくれて構わない。経費や使った物は校長から新たに仕入れたりヴァ―ゲが自分で発掘するからね。」
「………す、すごい…」
「これ位、ドワーフなら皆使えるよ、昇次君。ささ、何が必要なんだい?」
牧野さんが地面に両手をついて魔力が流れた途端に現れたのは、一台の荷馬車だった
荷馬車の幌、というのだろうか布のかかっている部分を開くと山のように積み上がる木箱が全部で30種類以上、それも一つ二つじゃなく、10や20も、積み上がって置いてあった
外から見ただけなら只の荷馬車なのに、中に入ると金属がズラッと木箱に入って居たり、布にくるまって居たりして、更には荷馬車なのに棚がありそこには魔石が各種類、チェストの様な大き目の箱が壁に張り付けてありそこにはなんと魔法道具や魔法武器を造る為の道具や掘り出すための道具がおいてあった
まさに道具造りしている人のための荷馬車!
なんという事でしょう!素敵!!
「ヴァ―ゲは戦闘が魔法一色に頼るしかないけれども、こういった種族魔法でのサポートが得意なんだ。一寸した食料や飲料水なら入れて貰えるしね。」
「まぁ戦闘になれば役立たず、となるんだけどね?特に今回のように魔法が使えない子が相手だと空に逃げて置くしかないしねぇ…」
「「「そんなことないよ?!」」」
つい俺が否定すると同じように否定していた風紀委員長さんとヴィッダ―君が被った
俺は道具や技術はあるけれども素材がないとどうしようもないのだから否定しないといけないと思うし、牧野さんは昔からの親しい知り合いだ
当然否定するよ、そりゃあね!
「羨ましい位だよ。だって俺は場所や作り方は知っているけど材料がないと何もできないし、攻撃はやりすぎでしょっちゅう怒られるし」
「それは昇次が悪いよね?」
「………うん。少し自覚はしてる…活かせてないけど」
「ふふふ。活かせていなければ意味がないよね」
はい、その通りです、てへぺろ(^_-)-☆
【うわぁ…(― ―゛)】
何だろう………分ちゃんにだけは言われたくない…凄くむかつくーww
【知るかww】
俺は牧野さんの出した荷馬車に乗って、緊急連絡用の魔道具を新調するための金属や魔金属を俺の影の方に移しておいて、荷馬車から降りた
その間そんなにたっていないからか、皆が不思議そうにしていた
いや、影の中に入れてきただけですが、何か?
「もういいの?」
「影の中に入れさせて貰いました。」
「「「あー」」」
「影…便利だな」
ナイト君がそういうけれども俺もそう思う。よくある異世界物にある、ほとんど制限なしのとんでもない容量のアイテムボックス状態だからね?しかも自分も中に入ったりできるし、影から影へと移動もできる。何でもこいだな、影、基闇属性の魔法
【そんなわけない。便利なのはお前が最初にそう考えて魔法を発動しているからだ】
まぁうん…そうなんだろうけどね?
【魔法は発動した時ある程度具体的に考えてあるか、もしくは強くそうだと良いなと思う事を実現する。】
あー、はいはい。知ってるってば!想像したのにうまく中身の想像ができていなかった殺虫剤が魔法で再現できていなかった時のようになったりすることもあるんだって事は実体験で経験済みだよ
さてと、俺は俺でカシャルドを出してさっさと緊急連絡魔道具を創り出さないといけないよね。材料は牧野さんの収納魔法のおかげで手に入ったし、後の問題は…魔道具の解析を分ちゃんに頼んでからだな
【任せろ、すでに前壊れた時に解析を終えている】
さすぶん(流石分ちゃんの略)
後は俺がカシャルドの中のプチ工房を出すよう、工房の中を思い出しながら、コルク栓をきゅっきゅっ、と音を立てて捻り、キュポ、と開けた
するとポコンと軽い音がしてコロコロした丸いビー玉大位の粒が出てきた
それに水をかけてあげると一気にボフンと音を立てて扉が現れた
自立していて扉以外はないのに建っているのだ
ガチャッと開けるとナイト君がなんだと聞いてきたからカシャルドに記憶させている俺専用のプチ工房だといってあげた
「「…プチ工房…?」」
「そう。工房を名乗れるほど本格的ではないんだけど、俺専用にってエフィールさん…この世界での俺のお母さん、かな?その人に貰った古い中古の鍛冶場と工房を貰ったんだ。だからカシャルドにコピーさせてもらったの。言うてもあの人王妃様だからその…誕生日にってくれたんだ…」
「「「「「……………………………」」」」」
あぁ…うん、凄い目で見られているのはわかるよ…
理由だって、さっき言ったことがどんなに酷く、どんなにオーバーな事だっていうのも、俺は理解しているよ…(遠目)
実際、俺はこれを誕生日プレゼントという域を超えているんでお断りしますと言ったらもっといい物の方がいいよねと言い出してかなり色々としだしてきたのを止めたんだからな!何せあの人たち…村を一つくれようとしたんだから…(溜息)
俺は経営者になりたい、とは言っても行商人レベルで良いと思っていたし村一つを運営しようなんて思っていないんですけど!!
というか素人!俺には荷が重すぎる!!ポンと上げて良い物じゃない!!!!
そうして結局押し負けて古い中古の工房と、鍛冶場が隣の部屋にある一軒家を貰いました
窯も、ハンマーもあるしあれもこれも揃いまくっている物をくれました
つくづく思う
恵まれすぎている環境だな、と…(遠目)
俺が最初、ランドロークさんに会った時ミーシェちゃんの体を借りている時だったけれども死ぬかも、と思ったのが懐かしく思える位怒涛の幸運の押し付けがい…
いや、何でもない。環境が凄く恵まれているってことで…うん…
それを拒否するのは悪いよね、他の人達に。うん…うん…(苦笑)
でも少し前まで、正確に言うなら前世では、だけど。一サラリーマンにこの好待遇は、気後れする…いや、悪いとはっきり言って断れない俺が悪いのかもしれないけど…
「まぁエフィールはもともとがフロストエルフの里を仕切る里長のいわばいいとこのお嬢様だからな、しかも一人娘で、弟も妹もいない。やりたい事は何が何でも、無理やりでも押し通すからな。泣き落としとか平気で使うし…」
「…………………」
うん…あの見た目で、泣かれると俺が悪い気がしてきて断れないんだよね…
実際最初に確定されていた古い物とは言え工房を貰ってしまった俺が言うのもなんだけれど、断れないんだよな…あの人かなり自分をどう動かせばいいのかとか分かっていらっしゃる…勝てる気がしません…
「…それはそうとして…えーと、これは、ショージ君の個人所有している、工房…?で、いいんだよね?中見てもいい?」
「…いいけど、そんなに奇麗じゃないよ?見る物だってそんなにないし…」
「工房だよね、だったら大丈夫」
「…迷宮の魔道具が全部直ったら、見てもいいよ。そうした方がじっくり見えるでしょ」
「そうだね。この迷宮から出てからにしよう。」
シェンフ君は物好きだな、なんて思いながらも俺だけ扉の方へと入り、扉を閉めて工房に入った後炉に火を入れてスミレをいつも入れている猫ちぐらの中で待つようにと言いつけておいてから、魔道具を造り始めた




