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第1話 勇者、死す

「うわあああああぁぁっ!」


 そんな感じで、勇者は負けました。負けた相手は魔王ではなく、その直前に控える中ボス。弱すぎです。まさかのワンパンでした。一ターンで終わりました。


 魔王が控える玉座の間。そこに足を踏み入れることすらできず、無様に倒れ伏せる勇者パーティを見下ろし、中ボスはこんなことを言ったそうです。


「よいか? ターン制バトルで大事なのはすばやさと、こうげきの数値だけじゃ。少なくともの、すばやさだけは絶対じゃぞ。それが全員揃いも揃ってバランス振りとはホントに勝つ気あるんかの。まったく、ステの極振りも知らん小童(こわっぱ)供がレベル99になっただけではしゃぎおって。聖剣? 最強の魔法? 阿保か、そんなもん喰らう前に先制全体攻撃(最上級なやつ)でワンパンじゃて」


 嫌に現実的でした。

 そんな彼の名前はグランツ。れっきとしたモンスターですが、普段は白髪をオールバックに固め、単眼鏡(モノクル)にスーツ姿の、ダンディでジェントルな初老男性に(ふん)しています。


 そして彼が好きなものは魔王様。嫌いなものはHPが半分を切ってからようやく本気を出し始める他のボス達。これだからゆとり世代はいかんのじゃ、が最近の彼の口癖です。


 彼は勇者パーティを倒してひとしきり説教を終えたあと、彼らを城の外へ放り出したついでに近くの町へと出かけました。


 魔王様の進軍を止める者は、これでいなくなりました。だからといって手始めにその町を滅ぼしにいくとかそういうことでは、もちろんありません。そんな野蛮なことは命じられてなんかいませんし、最近は歳のせいか魔力の回復も遅いのでやりたくもありません。


 彼は今から街に行って、副業である中ボスとしてではなく、本業であるーーー魔王様の執事として、彼女から頼まれたある物を買ってこようとしているのです。

 じゃあ、それは何かって?

 ええ、それはですね。

 飛び出す絵本です。


『じーじ、わたちね! 絵本が欲しいのら! 飛び出すやつ! 町の子供が見せてくれたのら! 今度はわたちもお返しするのら!』


 可愛い可愛い魔王さまのことを想いながら、彼は足取りも軽くスキップで町へと向かいます。

 勇者たちを全滅させたことなど、ええ。もう、そんな些末(さまつ)なことはとっくに忘れていました。


 これはーーー魔王の物語。

 幼い善良な魔王と、彼女にべたべたな執事と、人間たちの平和な日常を綴る、何でもないただのファンタジー。

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