記憶の継承
私の願望が暴走しました(´∀`)
私は話を続けました。
「今は魔王という存在は居ませんが、遥か昔、この世界の人々は魔王と魔族に何度も襲撃を受け滅びかけた時代があったのです。魔王は多くの魔物を従えて人間界へ攻め入ったのです。当時、人々はS級魔物を三十人ぐらいで倒すのがやっとでした。」
「S級を三十人だって?それって……今より弱くないか?」
「王子の言う通りです。今の時代ならS級の魔物なら強者であれば単体で倒す事が出来ますよね!しかし、当時は人間界に魔物という存在は居なかったのです!」
「魔物を居ない?そんな馬鹿な!現に、この国の近辺だけでも数えきれない魔物が生息してるのに!」
「そうです。今、魔物が人間界に居るのは当たり前と認識されてます。でも、今居る魔物は遥か昔に魔王が従え攻めてきた魔物の子孫と言えます。」
「な、なんて事だ……まさか、そんな事実があったなんて……しかし、何故アリスはそこまで詳しいのだ?」
「それは……」
「魔女の文献だけではないのだろ?」
「な、何故そう思われるのですか?」
「それは……多分、魔女は多数存在するから、文献も魔女が存在する数だけ散らばって管理されてると考えたんだよ!だから、アリスと先代に伝わる文献もほんの一部だけかな?って思った。」
「…………」
「ち、違ったかな?」
私は王子の言葉に驚きが隠せません。
ほぼ当たりです。
この人は何故、こんなに頭が良いのに普段は残念なのでしょうか?
私が上手くこの人を良い方向へ導けば、この国は安泰になりえますね。
一人二役の解決策が出来ましたよ!……いけません。今はそんな話ではなかった。
「その通りです、王子。私たち魔女は祖から当時、起こった事を記した文献を部分的に分け与えられ、今の代まで管理しております。そして私が管理する文献の内容は祖の能力関係です。」
「マジか?俺の考えが当たってたよ!俺って凄くね?」
「…………」
この人は本当に残念な人です。
こんな性格でなければ、良き国王になれる筈なのに………
「おほん!王子、続きを話しても宜しいですか?」
「あっ、ごめん。つい嬉しくなって!で、何の話だっけ?」
この人は………やっぱりダメ王子だ!
「私が何故、昔の出来事に詳しいかですよ!」
「そ、そうだった!それで何でアリスは、そんなに過去の出来事に詳しい?アリスの話を聞いてると、まるでその時代を体験した様に聞こえるんだよね。ひょっとして、継承する能力で召喚者の記憶も一緒に継承したりして?流石にそれはないか」
何なんですか!この人?
当たってますよ………この人って何者?
普段は馬鹿なのに………あっ!馬鹿と天才は紙一重といいますよね。
多分、この人の為の言葉なのですね。
理解しました。
「認めたくないけど………その通りです。」
「おお、またまた当たったよ!俺って天才やな!………ん?ちょっと待てよ。継承で召喚者の記憶を継承するって事は、今いる魔女全員が過去の事を知ってるのか?」
もう、この人に対して驚きません。
驚くだけ無駄だと理解しました。
「過去の事を継承した魔女は少ないと思います。」
「何故だ?現にアリスは記憶も継承したんだろ?」
「多分、魔女としての素質が問題かと思います。詳しくは分かりませんが、先代の知人の魔女とお会いした事があったのですが、その魔女に過去の記憶について訪ねた結果、そんな記憶は継承してないと言ってました。その魔女は闇属性だけを継承したみたいです。」
まあ、先代は素質の塊みたいな人だったので、ちゃんと記憶も継承してました。
「ちょっと待ってくれ。少し考えたい!」
「分かりました。」
王子はそういうと黙り込んだ。
あれ?王子が悩んでます。
何か思いついたのでしょうか?
考え込んでいた王子が口を開いた。
「でも、冷静に考えてだよ。アリスは召喚者の記憶を継承してるのなら……まさかと思うが、異世界の記憶も継承してるのか?」
もう嫌だこの人!
何で無駄にハイスペックなのよ!!
思わず溜息がでます。
「ふう……その通りです。私は祖が暮らしていた異世界の記憶も継承してます。」
「それって非常に不味い事よな?」
「そうですね……」
「俺が読んだ召喚者に関する文献には、召喚者の住む世界の事も書いてあった。確かこの世界より、かなり高度な技術や文化を持ってたと……例えるなら、鉄の塊が馬車よりも早く動いたと記載してた。」
「ああ、それは多分、クルマという乗り物でしょ!祖の記憶にあります。」
「クルマというのか?一体どんな乗り物なんだ?」
「えーと、[たいや]といわれる丸い物が、四つ[ぼでぃー]といわれる鉄の塊に付いてます。その[ぼでぃー]には[えんじん]という動力源が存在しており、[がそりん]と[おいる]いう液体を使用して走るみたいです!」
私は詳しく教える為に、クルマを絵で描いてみました。
絵を見た王子は、興味深く何度も頷いていました。
「異世界の人間は凄いのだな!それでアリスは、このクルマを造る記憶を持ってるのか?もし、造る記憶を活かして、この世界にクルマを再現できるのでは?」
「残念ですが無理です。何故なら、このクルマというのを造るのには、色々な部品等が必要で、この世界の技術では素材を集め造るだけでも30年程掛かり、組み上げて調整するだけで100年は掛かると思います。」
「そ、そんなに掛かるの?」
「はい……なので諦めて下さい。」
私がそう言うと、王子は肩を落とし落ち込んだ。
環境も整ってないのに、流石に無理がありますよ!
でも、飽くまで造る事は出来ないと、言っただけで………
「造る事は無理ですが、祖の記憶を再現して創世魔法で似た物でしたら創れます!」
「創世魔法?って、そんな事も出来るのか?」
「はい!でも、私の魔力量に対しての物しか創世出来ません!」
「アリスは、何でもアリだな……一体、何者なんだ?」
「失礼な!普通の魔女です!」
「それが普通なら、魔女って凄過ぎだろ?」
「はいはい、では創りますよ!構造はかなり変わりますが……」
「良いよ!構わない」
さっきまで落ち込んでたのに……立ち直りが早すぎだろ?
後、人を化け物みたいにいうな!
「では、始めます!」
私は部屋の広さを確認して、祖の記憶を探りました。
この広さならケイトラが良いかな?
まあ、直ぐに消すことも出来ますしね。
私が呪文を詠唱すると魔法陣が現れ、クルマが現れた。
クルマを見て騒ぐ王子。
「おお!!凄い!これがクルマという物か?触っても良いかな?」
「はあ、はあ……触っても…大丈夫……です」
「どうしたアリス?顔色が悪いぞ?」
「ちょっと……ま、魔力を使いすぎました……」
「お、おい、アリス!」
私は再び気を失いました。
次は本線に戻りますので、ごめんなさい(T ^ T)