【番外編】こんな日は貴方と
クリスマス小話です。
書いてみました(´∀`)
うう…寒いです。
朝から寒さで目を覚ました。
ベットから出て部屋の窓を開けると、城下町が見えます。
そして、真っ白な雪が辺り一面に降っていました。
「道理で寒いはずですね。でも、とっても綺麗ですね」
流石に寒いので、窓を閉め机の引き出しを開いて中から魔法の小石を取り出します。
魔法の小石とは、小石に魔法を付与する事ができます。
しかし、時間制限があるという欠点があります。
でも、付与された魔法は再度、同じ魔法を掛け直すことで時間を伸ばす事ができるので、手間さえ惜しまないなら中々便利な物なのです。
「さてと部屋が寒いので炎属性(最小)と浮遊の魔法を掛けますかね!」
小石に向かって浮遊の魔法かけます。すると小石が宙に浮き出しました。
次に浮いてる小石に炎の魔法をかけると、熱を持った小石が段々と部屋の温度を上げていきます。
「こんなものですかね!」
小石のお陰で部屋内の温度が快適になりました。
「ふふふ、私って天才ですね!こんな発想なんて誰もしなかったでしょうね?時間があったら、また色々と実験をしてみたいですね!」
この魔法を小石に付与する発想は、この世には未だ試されてなく実験に実験を重ねた私が編み出したものなのです。
「今日は予定もないで、一日中好きに過ごせますね。でしたら、新魔法の実験でもしましょうかね。ああ、凄く楽しみです!」
最近は色々と人間関係や仕事でストレスだけが溜まり、好きな新魔法の開発もろくに出来ない日々だったので、今日一日は好きな事に時間を掛けて溜まったストレス発散するべきですね。
「では、人避けの結界を貼りますかね!では……?」
コンコン
はて、誰か来たみたいですね?
「何方でしょうか?」
「俺だよ!俺!」
俺って誰だよ?
まあ、声で誰だか分かりますけど……面倒臭いのが来たな……
「俺じゃ分かりませんよ!」
「君の愛しのクラフトだよ!」
「帰って下さい」
「そ、そんな〜」
誰が愛しのクラフト?
寝言は寝ていって下さいダメ王子!
「入れてよアリス!用事があって来たんだ」
「用事ですか?」
「うん、今日はちゃんと用事があって来たんだよ。だから、警戒しなくてもいいよ!」
珍しいですね。何時もは「アリスに逢いたかった!」と言って、私の大事な時間を潰すダメ王子なのですが、今日は珍しく用事があって来るとは……雪が降りそうですね!って雪は降ってました。
「分かりましたよ。入っても良いですよ」
私が扉の鍵を開けると、直ぐにダメ王子は入って来ましたよ。相変わらず、そんな所は早く行動できるんですね?
「逢いたかったよ。アリス!……おふっ!?」
入って来て早々に私に抱き着こうとしたので、避けてカウンターをダメ王子の腹に決めてやりました。
油断も隙もあったものではない。
毎回、同じ行動なのでカウンターも綺麗に入りましたよ。
ざまぁですね。
「懲りずにまたセクハラしようとするからですよ!」
「うう……愛が痛い」
「自業自得です。で、用件とは何ですか?」
「あっ!そうだったね。今から城下街に出ないか?」
「はい?街に行くのですか?何の為にですか?」
「それはデー……ぐほっ!?」
言わせません。
必殺のボディーブロー炸裂。
お腹を抱えて片膝を床につくダメ王子。
「真面目にお願いします。」
「に、二発目はキツイ………ご、ごめん。」
いい加減イライラしてきました。
「で、本当は?」
「本当は一緒に来て欲しい場所があるんだ。でも、条件があって、王族としてばれない格好をして欲しいんだ。いいかな?」
「???……確かに街に行くのに王族みたいに派手な格好は場違いと分かりますけど、なぜ王子と一緒に街に行かないと行けないのですか?私は今日は部屋でゆっくりと過ごしたいのですが!」
意味が分からない。私のストレスは結構、限界近くまで溜まってるので、今日はガス抜きしないと爆発しそうなのに。何故、この人は私の邪魔ばかりするのだろうか?
今日一日、異空間に飛ばしてやろうか?
そんな事、考えてたらダメ王子の野郎、土下座して来たよ。
「お願いします。アリス!どうか俺と一緒に行って欲しい場所があるんだ。」
「……………」
珍しいですね。
この人が土下座するとは……基本、ダメ王子が土下座する相手は決まっており、王様と王妃様と先代と私の四人だけです。
それ以外には、どんなに自分が悪くても頭を下げる事もしない困ったチャンなんです。
お願いする時も頭下げません……無駄にプライド高いので。
今回は真面目にお願いしてますね。
余程、大切な用事なんですかね?
やっぱり、この人に関わると私の予定が狂ってばかりです。
「はあ………分かりました。一緒に街に行きますよ!だから土下座を辞めてください。」
私の言葉に王子は表情を輝かせて立ち上がった。
「ありがとう。アリス!」
「それで行くのは良いのですが、服はどうすれば良いのですか?」
「服は準備してあるから心配しないでくれ。アリスには、この服を来て欲しい」
「な、なんか少し派手では?」
王子から渡されたのは白と赤色の服を渡されました。
スカートが短いと思うのですが……ミニスカ並ですよ!パンツ見えますよ!!
「お、王子……スカート短くないですか?」
「それは仕方ないよ。俺の願望だから!」
やっぱりお前の趣味か?
そのドヤ顔にカチンときたので、
「やっぱり、行くのはナシで!」
「ええーー?そんな!!」
絶望的な王子。
二回目のざまぁです。
「それが嫌なら普通の長さのスカートを寄越して下さい!」
「分かったよ……チッ!」
「今、舌打ちしましたよね?」
「な、何のことかな?舌打ちなんてしてないよ!!」
「本当ですか?もし、したら分かってますよね?」
「はい!分かってます!」
スカートも交換してもらったので、着替えますかね。
「では、着替えますので部屋から出て行って下さい!集合場所は城門前に30分後にお願いします。」
「了解。あっ、それから、アリスが使ってる魔法の小石を何個か貰っていっていかな?」
「小石ですか?うーん、10個位なら良いですよ!」
「ありがとう!なら、貰って行くよ。では、城門前で!」
「はい」
王子は小石を貰うと嬉しそうに部屋を出て行きました。
小石なんて何に使うんですかね?
それにすんなりと部屋から出て行ったのも、王子らしくないですね?
まあ、着替えますか。
着替え終えた私は鏡の前に居ます。
「あのバカ王子!!何処が目立たない格好よ?これじゃ目立ち過ぎよ!!」
ーーーーーー30分後
城門前
城門前に着くと既に王子が大きな袋を担いで待っていました。
しかし、王子の服を見て引きました。
私と同じ白と赤色の服です。
お揃いにしたかったのか王子?
は、恥ずかしすぎる!!
「お、きたきた。凄く似合ってるよ!」
「…………」
「どうしたアリス!」
「この服の何処が目立たない格好なんですか?………それにお揃いだし」
クソ王子!見ろ私達の格好を見て門番の兵士がドン引…って、引いてない。
どうして?
普通、引くか哀れの目で見るだろ?
何で???
「さあ、行こうか!」
「えっ?は、はい」
王子に手を引かれ門を通り街へ行きました。
街を歩いている間、人の視線が痛いだろうと思っていたのですが………あれ?喜ばれてる。
何で?何ですか?
私と王子の格好は目立って可笑しい筈なのに?
なのに子供からは笑顔で手を振られるし、大人からはお辞儀されるよ!
うーん、意味が分からん。
そんなこと思ってたら、目的地に着きました。
「王子………此処って」
「此処は孤児院だよ!」
驚きです。
王子に連れて来られた場所は孤児院でした。
「さあ、入ろう!」
「ちょっと、お、王子?」
又もや王子に手を引かれ孤児院に入って行くと、そのには驚く光景でした。
「「「「あっ!!サタンさんだ!!!」」」」
王子と私を見た子供達が一斉に駆け寄ってきたのです。
「ち、ちょっと!?」
余りの子供の数に驚くばかり私。
駆け寄って来る子供達に笑顔で接する王子。
「よーし、皆んな良い子にしてたか?プレゼント持って来たぞ!」
「「「「「うん!良い子にしてたよ。サタンさん!」」」」」
「そうか、そうか!では、プレゼントを配るから一列に並んで」
「「「「「はーい」」」」」
子供達は王子の言う通りに一列に並び、王子が配るプレゼントを嬉しそうに貰っていた。
私は目の前の光景に呆気にとられ、何をして良いのか分からなく、ただ立っているだけだった。
そんな私に、プレゼントを配っていた王子が指示を出した。
「ごめん、アリス。君から貰った魔法の小石に炎と浮遊の魔法の付与をしてくれないかな?」
「は、はい。」
私は持ってきた小石10個に魔法を付与した。
すると、隙間風などで寒かった部屋が暖かくなりだすと子供達が更に喜びだした。
「わーい、寒くない!」
「見て見て、石が浮いてるよ!」
宙に浮いてる小石を見て騒ぐ子供達を見て、思わず笑みが零れる。
(子供って可愛いな……)
喜ぶ子供達を見てた私に、神父の格好をした人が近寄って来た。
「見た事もない魔法ですね?それにしても、今回は美しい女性のサタンさんもおこしで子供達も喜んでます。」
「貴方は?」
「おっと、これは失礼しました。私はこの孤児院を経営しているレオといいます。」
「レオさんですか。初めまして、私はアリスといいます。」
「お話は伺ってますよ。次期王妃様」
「な、何でその事を?」
「あの方からお話は伺っておりました。本日はお二人で来られると」
そう言うとレオは、子供達にプレゼントを配ってる王子を見ました。
「あのバカ………」
私は全部仕組まれた事に気付き溜息を吐きましたよ。
レオに聞けば、王子は子供達の為に、毎年プレゼントを準備し、この様な格好で孤児院に来ていると。
で、王子は幼き頃から、この孤児院に勝手に世話になってたから、せめての恩返しだそうだ。
王子は此処に来る度、食事を子供達と一緒に食べてたみたいです。
おいおい、王子とあろう者が何してるんですか?ちゃんと食費は払ってたんでしょうね?バカ王子!
あと、この衣装の事も教えて貰えました。
何でも遥か昔に異世界から召喚された人が伝えたとか?召喚された人の世界では、この様な格好をしたサタンクロスと名乗る人が子供達にプレゼントをしていたらしいのです。
(成る程、それで、異世界の文化がこの世界に根付いたのですね!)
話を戻しますが、孤児院を見て私は思いました。
「あの〜この孤児院って、老朽化が激しくないですか?見れば隙間は空いてるし、床も浮いてますよね?」
私の言葉にレオは苦笑いで答えた。
「そうなんです。この孤児院も建ってから100年近く経つので、彼方此方ボロボロなんです」
「でも、国からは支援金は出てますよね?」
「確かに支援金は貰っていますが、四、五年前から孤児院に子供を預ける親が多発して、ご覧の通り今では四十人ぐらいなりました。だから、今は子供の食事と衣類とかで支援金は無くなってしまいます。」
「そうですか………」
うーん、子供を預ける親が続出だと?
子供を何だと思ってんだよ、バカ親ども!
しても、この状況はかなり深刻だぞ?
多分、これからも子供を預ける親は増えそうだし………王様に相談しても、直ぐに支援金の増金は無理そうだしね。
調査とか書類とかで時間掛かるしなあ〜。
やっぱり私が手助けしますかね。
王子も小さい頃から世話になってますから。
「レオさん。今から私がする事は、誰にも言わないと約束出来ますか?」
「はい?」
レオはキョトンとした表情で返事した。
「兎に角、秘密にすると約束して下さい!」
「何の事か分かりませんが、了解しました。
秘密にします?」
良し!制約はとれた。
制約さえとれれば魔法で制限が掛けられますからね。
では、始めますかね!
「先ずは老朽化を直しましょうかね!」
私は家全体にテリトリーを発生させると、時間魔法を発動させた。
「時よ遡れ!」
私の言葉で建物がみるみる新築になって行く。
それを見ていたレオは信じれない表情をして口を開けていた。
孤児院が新築になった事を確認した私は、次の準備をする。
「家の方はこれで良いね。次は働き手が欲しいな?冒険者ギルドで稼ぐ者と子供達の面倒をみるメイドがね」
うーん、どうしようかな?
やっぱり、従者召喚でいいかな?
では、八人ほど召喚しましょう。
私が呪文を詠唱すると、床に大きな魔法陣が現れた。
魔法陣の中から八人のメイド姿の女性が現れる。
現れたメイド姿の女性達は、私の前で片膝をつき頭を下げる。
「ヤッホー!元気してた?」
一同「はい、ご主人様。」
「急に呼んで悪いんだけど、説明いる?」
一同「いいえ、ご主人様とパスが繋がっておりますので、何をすれば良いのか分かります。」
「そっか!やっぱり、君達は優秀だね!なら、後は頼んだよ!」
一同「はい!」
私が召喚した、この子達と思考が繋がっでいるので、私が考えている事を瞬時に理解して動いてくれるので楽なのだ。
この娘達が何者かは、また別の機会に話しましょう。
では、呆然としてるレオさんに説明しないとね。
「レオさん、大丈夫ですか?」
「……………」
「レオさーん?」
「あっ!は、はいなんでしょうか?」
「やっと帰って来ましたか!説明しますね。まず、この孤児院ですが、時間魔法で新築まで時を遡りました。」
「へっ?時間魔法???」
「はい、そうです。次に、この娘達は子供達の世話をさせる為に呼びました。それから、戦闘も出来るので一人でS級魔物まで討伐は可能です。ギルドで登録させて生活費を稼がせて下さい。」
「え、S級???」
「後は子供達の衣類は私が暇を見つけて作りますので、異空間を通じて、メイド達にお渡ししますので、古くなったらメイド達に言って下さい。」
「い、異空間???」
「話は以上です。では、この事は厳守でお願いします。」
「わ、分かりましたよ。」
現在の状況について来れないレオは頭から煙が出ていたよ。
まあ、理解しなくても良いんだけどね!
メイド達が後はやってくれるからね。
私は王子の方を見ると無邪気に子供達と遊んでいた。
子供達の数人は私がやった魔法を手品に思ったらしく。楽しんでいた。
さてと、日も暮れて来ましたね。
お城に戻らないといけませんね。
私は子供達と遊ぶ王子の元に行きます。
「サタン様、そろそろ帰宅の時間ですよ!」
「もうそんな時間か?」
「そろそろ戻らないと心配しますよ。」
「そうだな!」
王子も外を見て日が暮れそうだと確認すると、先程まで遊んでいた子供の頭を撫でた。
「そろそろサタンは帰る時間になったから、また、来年来るよ!」
「えー?帰っちゃうの?」
「そうだ。でも良い子にしてたら、また来年くるからな!約束出来るか?」
「うん!約束する。だから、また来てね!」
「分かった。約束だ!」
王子と子供はそう言って指切りをした。
そんな光景を見て王子を見直した。
私はメイド達に今後の指示を出し、王子と一緒に孤児院を後にした。
手を振って、サヨナラをする子供達に手を振り返した。
(可愛いな子供…私も欲しくなってきたな。って何を考えてんのよ私!)
孤児院を後にして、子供達の姿も見えなくなった時、王子が立ち止まり私の方へ振り返りました。
「遅くなったけど、俺からアリスへのプレゼントだよ!」
「えっ?」
王子はそう言うと私に小包を渡します。
「開けてみて」
「いいんですか?」
「うん」
小包を開けると青色の宝石がついたネックレスでした。
「こ、これは…」
「アリスが前、街に行った時に欲しがってた物だよね?」
「………はい」
そうです。
私は王子と一度だけ街へ遊びに行った時にアクセサリー屋の前で見つけた物でした。
あの時は時間の都合で買うことが出来なくて帰り道、少し落ち込んでいた。
でも、この人はそんな私をみてくれたんだ。
そう思うと、凄く嬉しく幸せな気分です。
もう、この人ったら………
「ありがとうございます」
「喜んでもらえて良かったよ!」
私が御礼を言うと、王子は少し頬を赤く染めて照れてました。
私は、そんな王子の腕にしがみつき寄り添います。
「急にどうしたアリス?」
「エヘヘ……私から王子へのプレゼントです」
「こ、これがアリスのプレゼント?」
「そうですよ。嫌ですか?」
「嫌なはずないだろ!寧ろ嬉しすぎだよ!」
「そう言ってもらえると良かったです。でも、本当は王子が欲しい物を用意したかったけど……」
「ううん。俺はアリスから、十分すぎるプレゼントを貰ったよ」
「そ、そうですか?」
「うん!今、この時が俺にとっての最高のプレゼントだよ!」
「もう、王子ったら………」
王子の台詞で顔が真っ赤になりましたよ。
でも……
(素敵なプレゼントをありがとう!クラフト様)
真っ白な雪が降る中、城へ歩く二人でした。
一部内容を変更しました。
私の願望で(´∀`)
次は本編に戻ります。