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07-フェイトクエストは高過ぎるハードル(自作)

フェイトクエスト

《名も無き者の存在証明》

己の力で功績を挙げて、己の存在価値を証明せよ。


達成条件

ギルドに認められる。



シンプル極まりない上に漠然とした内容だが、全員に強制的に発生した以上、間違いなく重要なクエストのはずだ。


「ギルドの登録を希望する方は星の数程いますが、ギルドが必要としているのは人々の役に立つ事が出来る人材だけです。仮登録者向けのクエストも発行してますので、そちらを実力を証明して見せてください。」


案内役のお姉さんの説明のお蔭でやるべき事は解った。

言われた通りにクエストボードを見に行ってみると、思った異状にさまざまなクエストが並んでいた。



『回復薬10個の納品』


『ロングソード1本の納品』


『薬草30本の納品』


『ブラウンウルフ10頭の討伐』


『シロハネウサギの狩猟』


『ギルドの通常業務の補助』


パッと見ただけでもこれだけのバリエーションがあった。

ギルド職員の手伝いというのは珍しい。だが、全体的に見ると納品数等は多少多いものの普通のゲームの基準から考えるとそんなに難易度は高くなさそうだ。

だが、そこは必要以上にリアル過ぎるアナザーワールドフロンティア。

クエストボードを見ていると受付の方からこんな声が聞こえてきた。


「ちょっと待てよ!クエスト達成にならないってのはどういうことだよ!」


「シロハネウサギで一番価値があるのは美しい毛皮です。このような雑な仕留め方では認めることはできません!」


「薬草の見分け方が解らないんですけど…」


「二階に図鑑がありますので、そちらを確認して見分け方を覚えてください」


「剣の材料が有料ってどういうことだよ!」


「素人の練習の為に資金は出せません。買うのが嫌なら自分で掘ってきて下さい。」


少し聞き耳を立てただけでこれだけの声が聞こえてきた。どうやら受付に並んでいるのは殆どが文句や問い合わせの人達のようだ。

案内役のお姉さんに聞いてみると、生産系のクエストは鍛冶や調薬の指導者の紹介まではやってくれるそうなのだが、その練習に必要な材料や資金は自分で用意しないといけないらしく、その上最低でも品質C以上で無ければ納品アイテムとして認められないそうだ。

生半可な覚悟では生産系クエストも達成できそうにないようだが、戦闘系の依頼が大変なのも一応の戦闘訓練を積んだ私達には容易に想像できた。

当然全員が同じクエストを受ける筈も無く、ちょっとしたトラブルと情報交換から始まったグループ行動だったが、話し合いの結果ここで解散することになった。



「さて、俺達はどのクエストに挑戦しようか?」


生産系に挑戦するプレイヤー達との連絡網を調整するというフランさんとも別れ、再び三人だけになった私達は挑戦するクエストについて相談を始めた。

ちなみに私のおすすめはギルドの手伝いだ。何と1日一時間程度の手伝いを一週間するだけでほぼ確実に本登録してもらえるそうだ。空いた時間は二階にあるという資料室での情報収集に使えば無駄もなくなるし読書もできる!我ながら実に合理的なアイデアだと思う。


「一番強いのをやっつけよう!」


「…やっぱりそうなるか。」


無論、楽しさ最優先のイツキが合理的な理由でクエストを選んでくれる筈もなく、当然のように私達は一番の大物を狙う事になった。



《特定禍獣・ブラッディベアの討伐》

障気に犯されたブラウンベアが異形化し、周辺の木々や生物に多大な被害をもたらしています。

討伐可能な実力を持つ登録者は、直ちに討伐に向かってください。

極めて凶暴で強力な個体のため、くれぐれも御注意ください。



一応これもクエストボードに貼ってあったのだが、明らかに他の討伐系のクエストとは雰囲気が違う。

障気とか異形化とか怪しい単語が出てきてる上に、ご丁寧な事に凶暴とか強力とかまで書いてある。しかも、特定禍獣って何ですか?


よし、イツキに見つからないように隠そう!


直感的にそう考えて依頼書に手を伸ばしたのだが、本当に、本当に残念な事にイツキの反応は私が思ったよりもずっと早かった。


「決めた!これにする!ちーちゃん、急いで準備しよう!」


タッチの差で私より先に依頼書を剥がしたイツキが、瞳をキラッキラさせながらそう言って私を見てくる。

こうなってしまった以上、私がどれだけ反対しても無駄だろう。

ならば、少しでも勝率を上げるために、出来る限りの事をしなければならない。


「慌てるなイツキ。こんな化け物に挑むなら、準備は万全にしないと駄目だろ?」


「チバのいう通りだ。考え無しに突っ込んで全滅したらどうするんだ?」


「ぅ…そうだね、確かに戦うからには勝った方が楽しいし…まだ町もちゃんと見てないもんね。」


アニキも一緒に説得してくれたお蔭か、一先ずイツキを落ち着かせる事には成功した。次は具体的にどんな準備をして、どんな風に戦うのかを考えなければいけない。


「アニキ、イツキ。悪いけど買い物は任せて良いか?私は資料室に参考になる情報が無いか調べてみる!」


強そうな相手ではあるが、クエストとして貼り出されているのなら、私達のレベルでも戦うことは可能なはずだ。そして、わざわざ資料室が用意されているのだから、ヒントはそこにある可能性は高い。


「チバ。調べるのは構わんが、時間は次のアナウンスまでにしてくれ。」


「そうだね、ちーちゃん調べものは得意だけど、時間決めておかないと関係無い本まで読み始めちゃうから…。」


せっかく私が勝利の為に一肌脱ごうと思ったのに酷い言われようだ。

一瞬反論してやろうかとも思ったが、残念ながら確かに多少の前科はあるので今回は大人しく言うことを聞いておく事にする。


「解ってるよ、私だって早く本登録を済ませて先に進みたいしな。」


兄妹を見送り、私は早速資料室に向かった。意外と狭い部屋だが思ったより沢山の資料があり、基本的に私達が読める文字で書かれているようだが、中には見た事が無い文字で書かれた書物もある。

正直気になる本はいっぱいあるが、今回は調べることが決まっているので職員の人に聞いて必要そうな資料だけに絞って読み始める。

今日中に門に入る事を目標にするなら、残された時間はあまり無い。

私は気を引き締めて一冊目の本に手を伸ばした。





『プレイ時間が二時間を経過しました。ログアウトしてゲームを終了してください。』





兄妹との打ち合わせの通り、今回のターゲットについて調べていたのだが、解ったのはヤバそうということだけだった。


まず、障気についてだが、これはこの世界における悪いエネルギーの総称のような物のようだ。

強い恨みや怒りによって発生し、障気に犯されると正常な判断力を失い、狂暴化し全ての生物に対して害をなすらしい。

障気については割りとテンプレ通りなのだが、ヤバイのは異形化の方だ。

強い障気に長時間晒されると、通常なら肉体が耐えられずに死に至る。だが、時々障気に肉体に馴染んで変質してしまうことがあるらしい。

変質と言っても普通なら体色が変わったり、障気が定着し死を迎えても動き続けるアンデット化する程度らしいのだが、極希に障気と宿主の魂が完全に融合してしまう事があるという。そうなってしまった生物は障気を無尽蔵に産み出し続ける化け物となる……それが禍獣だ。


禍獣は世界に対する害悪その物だ。放置しておくと障気によりどんどん狂暴になっていき、それだけで無く障気で肉体をより強く、より凶悪な物へと変化させていく。この段階が異形化だ。

異形化して元の生物と殆ど別物と言えるほどに変化して強くなったことが確認された禍獣。それが特別危険指定異形化禍獣…略して特定禍獣。


今回の我々のターゲットである。


「どう考えてもボスキャラじゃねぇかッ!」


「良いねぇ!燃えてくるねぇ!」


ちょっとした絶望感で机に突っ伏す私とは対照的に、時間通りに迎えにきたイツキは私の説明を聞いてノリノリで嬉しそうだ。私と彼女のテンションは反比例するようになってるのだろうか?


「元となったブラウンベアというのはどんな奴なんだ?」


「この辺の森では一番でかい生物…普通の個体でも一対一で相手にするような相手じゃないらしい」


私の答えにアニキも表情を少し曇らせる。ターゲットについて確認するためにクエストボードを見たのだが、どうやら普通のブラウンベアでも一体倒せばクエスト達成になるレベルのようだ。


「大丈夫大丈夫!一生懸命探し回ってポーションも何個か買ってきたし!慎重に行けば何とかなるよ!」


「予想以上の値段で所持金は殆どゼロになってしまったがな…」


正直聞きたくなかった情報だった。

二人が調べた情報によるとこの世界の回復薬はすぐに効果が出るものと、効果が出るまで時間がかかるものに別れるらしく、すぐに効果が出るものは値段が跳ね上がるとの事だった。そして、外縁部の町に唯一ある速効性の物がポーションであり、その値段は何と1つ銀貨3枚。下手な武器よりも高い値段だったそうだ。


ポーション1人2つに補助の回復薬、そして水と食糧。これで私達の資金は殆ど無くなってしまった…確実に後には退けない状況になってきている。


「せめて水や食糧がもう少し安ければな…」


「……確かに、どうすれば良いんだろ?」


皮袋に入った水をアニキから受け取って思い出したが、水辺に陣取っているという魔物はどうなっているのだろうか?一応クエストボードでそれらしいものを探してみたが、まるで見当たらなかった。

禍獣と一緒についでに調べたのだが、魔物は強い障気で禍獣が生まれるのと同じように、強い魔力によって変質した生物の事らしい。

ただし、こちらは禍獣と違って必ずしも害悪な生物という訳ではない。何かしら、クエストに出来ない事情があるのだろうか?


「じゃ、一旦休憩したら早速ボスの所に向かおうか?」


「そうだな、チバ。今度はちゃんと食事をしに来るようにな?」


「……あぁ、うん。解った。」


どうにも魔物の事が気になって頭から離れないが、兄妹のいう通りに一度ログアウトすることにしよう。

魔物の方についても、現地に行けば何か解るかもしれないし。



…………………


……………


……




再びログインした私達は標的となるブラッディベアと戦う為にスラム街を後にした。


サンドバック代わりに使った例の謎の塊が浮遊するエリアを抜けると、いよいよ敵が出現するエリアに突入する事になる。

因みに資料を調べていて解ったのだが、謎の塊は『女神の守り石』という物で、魔除けの効果があるらしい。そんな物を殴って良かったのだろうかと少し不安になったが、それはそれで正しい使い方とは書かれていた。中々に謎な物質だが、これのお蔭で防壁の外にも町があるのだろう。


「来たぞ!ブラウンウルフだ!」


守り石のエリアから目的地の森に入るまで道中は草原になっているのだが、このエリアに入ってから何度かこの茶色い狼達に襲撃を受けている。


「お兄ちゃん、ちーちゃんのガードよろしく!」


「了解だ、チバは牽制を頼む!」


私の注意する声に兄妹が武器を構える。

襲ってきたウルフの数は3体。真っ直ぐこちらに向かってくるウルフの1匹を、イツキがまるで槍投げのようなフォームで貫き仕留める。

実際に戦闘をして解ったのだが、このゲームは武器の殺傷能力と攻撃の当て所が露骨に結果に出てしまうようだ。

槍を使うイツキは急所を突いて結構簡単に敵を仕留めるのだが、素手や鞭を使うアニキと私は中々敵に有効打を与える事が出来ない。


「せいやぁッ!」


結果、アニキは盾で敵を撲るようになってしまった。

しかも、面の部分ではなく側面の部分でだ。

私の知ってるシールドバッシュと違う!


「ギャン!?」


イツキの脇を抜けて私達に飛びかかった1匹が、アニキの変なシールドバッシュを受けて吹き飛ぶ。確かに素手で戦っていたときよりも格段に攻撃力は上がっているようではある。

私の方も一応進展はあった。こちらに気を取られたイツキの背後を狙う一匹に、私はすかさず鞭を放った。


ーバチィィィッ!!ー


狼には当たらなかったが、目の前で音を立てて弾ける鞭に驚き、狼の動きが止まる。

鞭は決定力はまるで無いものの、牽制や威嚇としての効果は中々高いらしい。

 

「イツキ!よそ見すんな!」


「ゴメン、ちーちゃん!」


私の声と鞭の音に反射的に振り返ったイツキが、振り回した槍の切っ先で狼の頭を切り裂く。

血のような赤いエフェクトが瞬き、狼は悲鳴を上げながら地面を転がるように逃げていく。


「また逃げられちゃった…」


「こっちもだ、仕留められたのは1匹だけのようだな…」


どうやらこのゲームだと、普通の動物系の敵は命の危機を感じると逃げてしまうらしい。

狼の他にもウサギなども見かけたのだが、そちらにいたってはコチラに気付いただけで逃げてしまった。

この感じじゃ、普通の討伐系クエストも中々大変そうだ。


「残念、また狼肉だね…」


《ブラウンウルフの肉》

品質未鑑定

草原や森に生息するブラウンウルフの肉。

食べられないことも無いが、臭みが強く調理には工夫が必要。


イツキが唯一仕留めることが出来たブラウンウルフにギルドカードを翳し浄化すると、その体が光に変わって消失する。

いわゆるアイテムドロップの機能だが、少なくとも現状では均等に自動分配してくれる機能はなく、浄化したプレイヤーしか手に入らないようだ。

パーティー組んだ場合は工夫しないと揉めそうなシステムだが、私達はとりあえず3人で共有と言うことで落ち着いている。


「毛皮なら防具とかになりそうなんだけどな…」


「肉はスパイス類が手にはいるまで、調理はやめておいた方が良いな…。」


食材アイテムに関してはアニキに丸投げだ。私もイツキも料理しないし。


個人的に安心したのは傷やダメージの描写が思ったよりも穏やかなことだ。

グロかったらどうしようと心配していたのだが、流石の運営もそこまで鬼畜では無かったらしい。


その後も何度か狼の襲撃を退けながら暫く歩き続けると、ようやく目的地である森が見えてきた。

戦闘と移動で蓄積した疲労に耐えきれ無くなっていた私は、ついにその場に座り込んでしまった。


「あぁ、体が重い…どんだけ体力無いんだよ魔呪族。」


「ちょうど森も目の前だ、今のうちに少し休んでおこう。」


「そうだね、ついでに水分とかも補給しとこうよ。」


予想していた事ではあるが、私が選択した魔呪族は本当に体力や筋力が低い。

筋力が低いはずのエルフのフランさんにも筋力で負けていたし、体力に関しても私が原因の休憩はこれで二度目だ。二人とも余裕がありそうなので、何だか申し訳ない気分になってくる。


「そんな顔しないでよちーちゃん!」


「森に入ったら魔法も使うんだろ?頼りにしているぞ?」


「ちーちゃん言うな!くっつくな!頭を撫でるな!解ってるから離れろ!」


少し落ち込んでいるのが顔に出ていたのか、イツキには抱きつかれ、アニキには頭を撫でられてしまった。

照れ臭いやら何やらで私は声を上げて振りほどく、本来は筋力が足りなくて無理なはずだが二人はちゃんと離れてくれた。ちょっとだけ元気が出たのは内緒だ。


「魔法を使うって言っても、普通の魔力弾じゃ威力が足りないからな…ボスまでに色々試してみないと。」


「そうだね、イメージが大事なんだよね?」


不味い黒パンと皮袋に入った微妙に臭う水を補給しつつ、森の中での行動について軽く相談する。

鞭や槍は遮蔽物が多い森の中では使いにくいと考えて、一応今まで魔力を温存していたのだが、困ったことに現状唯一使える魔力弾では確実にターゲットには通じそうにない。

普通のウルフ相手に使っても怯ませる程度の効果しかない威力では、ブラッディベアには恐らく牽制にもならないだろう。

ブラッディベアを相手にするなら、どう考えても魔力弾よりも強力な魔法が必要になる。


「俺も何か出来れば良かったんだが、俺はそれ以前の問題だからな…ガードはしっかりするからお前達は魔法に集中してくれ。」


アニキは練習時間があまり取れなかった事もあり、まだ魔力の制御を修得出来ていない。

だが、彼の役割は元々獣人としての身体能力と本人の格闘術を活かした陽動と直接戦闘だ。仮に魔法が使えたとしてもブラッディベア相手に、いちいちイメージを固める必要がある魔法を使う余裕があるとは思えない。

むしろ一番大変な役割だし、やはり魔法を扱うのは一番攻撃力の低い私の仕事だろう。


休憩と相談を終えた私達は、早速森の中の探索を開始した。


獣の感覚で高い探知能力を持つアニキを先頭にして、私の後ろをイツキがガードする隊列で森の中を進む。

私をしっかり守る形の並びだが、私も守られてばかりではいられない。

全身に意識を巡らせ、身体に流れる魔力をいつでも魔法に使えるように準備しておく。

森の中は鬱蒼としており、確かに未熟な腕で鞭を扱うには難しそうだった。


「何かが高速で近付いてくる、構えろ!」


アニキの突然の大声に驚いた。私にはなにも感じられなかったのだが、アニキの声の後、確かに茂みを掻き分けて一匹のウルフが私に向かって飛びかかってきた。


「うわッ!?」


色気の無い悲鳴をあげる事しか出来ない私と違い、兄妹は冷静だった。

隊列の側面を狙われたので一瞬遅れたものの、ウルフの牙が私に届くよりも速くイツキの魔力弾がウルフの脇腹を打ち、ほぼ同時にアニキの盾がウルフの頭に振り下ろされる。


「うわぁ…」


結果、私を襲ったウルフはキリモミ回転しながら地面に叩きつけられた。

何も出来ないまま手早くイツキに槍でとどめを刺されるウルフの惨状には思わず同情してしまったが、森の視界の悪さは予想以上に厄介そうだ。

今のように急に敵が飛び出してきた場合、イツキやアニキのように反射的に動けない私では何も出来ないまま攻撃される可能性が高い。

このままでは早くも足手まといになってしまいそうだ…



その後、私なりに精一杯に行動をした結果。思わぬ成果が出た。


「チバ!右後方からくるぞ!」


アニキも狼の聴覚に慣れてきたらしく、敵のいる方向を正確に教えてくれるようになった。

その指示を受けて、私は魔力を活性化させた両目でその方角を睨む。


「…数はたぶん4匹だ!一匹だけ先に突っ込んでくるぞ!」


木々や草花が薄く魔力の光を放つ向こうから、明らかに植物とは違う光が4つ向かってくるのを見魔眼で捉えた私は、直ぐに二人に報告する。



《見魔眼》

見えざるものを捉える異形の眼。その眼はやがて神魔を捉え、真理を掴む可能性を秘めている。


魔眼の一種であり魔力を見ることに特化している。

通常の魔力視と違い魔力を消耗せずに魔力を見る事が可能。

成長すれば魔力の解析も可能になる。


魔法を使うために魔力を活性化させていたのが良かったのか、不意打ちに備えて警戒していたのが良かったのかはわからないが、気付けば私は見魔眼を使えるようになっていた。

実際に使用することが条件だったのか、見魔眼の解説も追加された。


「喰らえッ!」


茂みの向こうの先頭の一匹を狙い、私は魔力弾を放つ。

向こうからはコチラの姿は見えていなかったらしく、茂みから飛び出した顔面に命中し、先頭のウルフが派手に転倒する。

そのうち隠蔽する敵や手段は出てくるかもしれないが、魔力の濃淡で隠れた敵の姿を捉えることが出来るようになり、私でも何とか不意打ちに対応できるようになった。


「ちーちゃん!コイツら何か様子がおかしいよ!」


イツキが転倒したウルフにとどめを刺そうとしたのだが、そこで後続の4匹が予想外の行動を取った。

なんと、4匹はイツキでは無く、本来仲間であるウルフの方を襲い始めたのだ。


「コイツら、障気にやられてるっぽいぞ!」


障気に犯された生物は凶暴化し、仲間であろうと見境無くあらゆる生物を襲い始める。

転倒したウルフに噛みつく4匹を見魔眼で見てみると、魔力の光にドス黒い何かが混じっているのが見てとれた。

どうやら見魔眼は障気も見分けることが出来るらしい。


生物が障気に犯される最大の要因は、強い障気を纏った生物…即ち、強い禍獣からの感染だ。

どうやら、ブラッディベアに確実に近付いているようだ。


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