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05-情報整理と魔法のレッスン

公式サイトの情報といっても、書かれていたことはそう多くは無い。


戦闘チュートリアルを受けるには事前申請が必要なこと。

ゲームの開始地点は東西南北に存在する門を中心としたスラム街から始まり、基本的にランダムで東西南北に振り分けられること。

初期の時点ではいわゆるフレンド通信のような機能は使えず、物語を進める事で少しづつ機能が解放されていく事。

そして、先に進む為にはまず壁の内側に居る高貴な御方に謁見する必要が有ること。


明らかに最初にプレイヤーに教えておくべき情報なのだが、公式サイトの中でも解りづらい所に隠すように記載されていた。私はこまめに何度も確認していたから気付くことが出来たが、流し読みした程度では気付くのは難しいだろう。


この時点で運営の頭がどうかしてると思うのだが、プレイヤー達の情報を纏めてみると、現在の状況も何かがおかしい。


「えっと…つまり、誰も先行組のプレイヤーを見ていないんだな?」


情報交換会に参加したプレイヤーは約20人程。中には色々見て回ったプレイヤーもいるようだが、それでも誰もスラム街では先輩プレイヤーに会っていないという。


「そのようですね。普通はこういう機会を利用して新人を勧誘したりするはずなのですが…それもないようですね。」



私の問いかけに答えてくれたのは長身のエルフの女性だった。あの後、情報交換会についてアインに丸投げされてどうなるのかと思ったが、彼女が率先して動いてくれたおかげで何とか混乱も無く情報交換を行うことが出来た。

名前はフランシーヌさんと言うらしく、私達と同じく事前に情報を確認をしチュートリアルも受けたそうなのだが、さらなる情報収集のために情報交換会に参加したそうだ。


「ここまで徹底的に新規プレイヤーを情報から隔離するなんて、確実に何か意図があるんだろうけど……」


「そうですね、それにスラム街と言うわりに施設が充実し過ぎている事も気になります。雑貨屋に鍛冶屋に薬屋、それに宿屋まであると言うことは、それ等が必要になる何かをさせるつもりなんでしょう。」


フランシーヌさんも私も曖昧な表現はしたが、大方の検討は付いている。恐らくは何らかのクエストがあるのだろう。


「状況をハッキリさせるためにも、まずは教会に行くべきでしょう」


フランシーヌさんの言葉に私も頷く。セージさんのような先輩プレイヤーと隔離されているこの状況では、自分達で考えて行動するしかない。

こんな所でいつまでも足を止めている場合じゃ無いのだ!


「オラァァァァァァッ!!」


場合じゃ無いんだけど……。


「軸がぶれてるぞ!もっと真っ直ぐに降り下ろせ!」


戦闘チュートリアルの事を話したのが悪かったのだろうか?気付けば情報交換会は、武器技能修得会へと変貌してしまっていた。

情報交換会を行う為、人目を避け街を少し離れたのだが、そこにチュートリアルでサンドバックのように使っていた謎塊がいくつも浮遊していたのも要因の一つだろう。


「あ!何か《二刀流》って技能覚えちゃった!」


楽しげにそう言ったのはアイン。周囲に居た人達がざわついているが、それも当然だろう。彼女が両手に持っているのは二本の刀では無く、二本の槍だったのだから。

二本の刀で二刀流を修得したのなら解るが、二本の槍で修得出来たと言う事は、アナザーワールドフロンティアでの《二刀流》は二本の刀を使う技能ではなく、両手で二つの武器を扱う技能という扱いなんだろう。

そして、技能を修得したという事は、アインが二本の槍をしっかり効率的に扱いきれているという事だ。


「じゃ、今の私みたいな感じでグッと持ってキュッと構えてズシャーッてやれば良いと思うよ?」


アインは天才肌で凄まじく物覚えが良い。だが、アインよ……自分で武器技能の指導役かって出たくせに説明下手すぎるだろう。

アインに槍を渡された少女は完全に困惑してしまっている。

説明が下手なのは元々ではあるが、御手本でどうして急に二本とか使ってしまうのだろうか……。面白そうだからとかそんな理由だとは思うが、いくらなんでも自由過ぎる。

 

「ヒャッハー!棍棒技能修得出来たぜぇぇっ!!」


一方、アニキは赤髪の指導をしていたようだが、こちらは無事に技能を修得したようだ。

それは問題ない。今後の展開次第では協力を頼む可能性もある以上、むしろ喜ばしいことだ。


「よし、次ッ!かかってこい!」


だがアニキよ……的代わりがあるというのに、何故わざわざ自分で攻撃を受けているんだ。

盾で受け止めているとはいえ、怖くないんだろうか?


「あの二人は相変わらずのようですね。」


私が死んだ目で兄妹の様子を見ていると、フランシーヌさんが不意にそんな事を呟いた。

私達と同じく、グローリーファンタジーの経験者ならあの二人の事は知っていてもおかしくはない。だから、私が驚いたのは次に彼女が発した言葉だった。


「貴女は今回も商人プレイですか?」


何故私の以前のプレイスタイルを知っているのだろう?

兄妹はともかく、私は基本的に街に引きこもり、目立つような動きはほとんどしないプレイヤーだった。

確かに比較的古株な方ではあったが、それでも私を知っているのは繋がりのある極一部の人達だけだったはずだ。

しかも、今の私はグローリーファンタジー時代とは違い、リアルの性別と同じ女の姿だ。

私が女である事を知ってるのは、交流があるプレイヤーの中でも特に親しい人達だけのはずなのだ。


「フランシーヌさん、何で私の事を……。」


思わず問い返してしまった私に、フランシーヌさんはやれやれといった様子で有りもしないはずの眼鏡の位置を直す動作をとる。


「チバ君、私の事はフランと呼んでくださいと以前言いましたよね?」


私の知り合いにこんな長身でモデル体型の女性プレイヤーなんて居なかったはずだ。だが、彼女の動きと言い回しに強い既視感を感じた私は、ようやく知り合いの一人に思い当たった。


「まさか、フランツさんなのか?アンタ女の人だったのかよ!」


「ようやく気付いてくれましたか、私はすぐに貴女の事に気付いたというのに……哀しいです。」


この仰々しい敬語口調は間違いない。

確かにそこそこ仲良くしてもらっていたプレイヤーの一人だが、フランツさんはグローリーファンタジー時代は眼鏡をかけたダンディな老紳士の姿だったはず。

大手ギルドのギルマスも努め、信頼できる人だったから私も確かに女であることは明かしていたが、まさか向こうも女性だったとは思わなかった。


「そもそも、私は自分が男だと言ったことは一度もないんですが……以外と気付かれない物ですね。」


私の場合は結構ボロが出てリアル性別がバレる事もあったのだが、この人の場合は誰の気づいてないんじゃないだろうか?


「ちーちゃん、フランさん。相談は終わったの?」


私達の話し声が聞こえたのか、教官役に飽きたらしいアインがこちらへと歩いてきた。


「一応な、そろそろ移動したいんだがそっちの状況はどうだ?」


「えっと…技能を修得出来たのは全体の三割くらいかな?意外と修得は難しいみたい。」


アインは結果に不服そうだが、私からすればむしろ思ったよりも多いくらいの結果だ。武器技能修得の難しさは身に染みて解っている。


「もしかしたら武器が合ってないのかもしれませんね、皆で交換して使って見るのはどうでしょうか?」


「え?確かに良さそうな案ではあるけど、かなり時間の浪費になっちゃうんじゃないか?」


フランさんの言う事はもっともだ。チュートリアルをしていないプレイヤー達は武器を試す機会もなく、各々が勘や好みだけで選んだ物を持たされていた。皆がアインやアニキのように、最初から自分にあった武器を選べるわけでは無い。

チュートリアルの時と違い色々な武器が用意されていない以上、人数がいるうちに交換して色々試してみるのは妙案ではある。


「皆さんの様子を見る限り、武器技能の修得は鬼門になるかもしれせん。機会があるうちに試しておくべきです。」


確かに一理ある。確かに一理あるけど…。


私はチラリとアインの様子を確認してみる。


「むぅ…私達それが終わるまで待ってなきゃダメ?」


やはり不満げだった。実際、既に全員技能を修得している私達には旨味が少ない提案だ。

フランさんには悪いが今回は断った方が良い気がする。


「フランさん、申し訳ないですけど今回は……」


「ふむ、それは困りましたね。出来れば貴方達にはしばらく一緒に行動して欲しいのですが…。」


私達の申し出に困ったように考え込むフランさん。

確かに、この手のゲームで気心の知れた相手というのは貴重な存在だ。

連絡がとれるのなら此処で別れても問題は無いが、フレンド通信のような機能が使えない現状では再会する事は困難だ。


だが、アインにとっては待ち続けた念願の時なのだ。今は好きにプレイさせてやりたい。


「そうですね、ならばひとつ提案させて貰って良いですか?」


フランさんが何か思い付いたらしく、指を立てながらこちらを見る。何やら私達を引き止めるつもりのようだが、悪いけどこれ以上足止めを食らう訳には行かない。


「私がチュートリアルで教わった魔法の使い方を教える…そういうことならどうでしょうか?」


おっと?これは思いのほか魅力的な提案をされてしまったぞ?


私達もセージさんにもある程度魔法についての説明は聞いていた。

このアナザーワールドフロンティアにおける魔法は精霊の力を借りたり、魔方陣を使ったりと、様々な種類があるそうだ。

その中でも初歩中の初歩であり、基本中の基本となるのが《自律魔法》と呼ばれものらしい。

自律魔法は自分が持つ魔力だけで発動させる魔法であり、他の応用魔法に比べると多少効率や燃費は悪いそうなのだが、発動が早く複雑な手順や道具を必要としない為、魔法職は勿論、戦士職でも有効であり、このゲームでは必須技術の一つなのだそうだ。

自律魔法の発動にもっとも大切な事は何よりもまずイメージ。しっかりとイメージを重ねながら魔力を放出し制御するだけで、自律魔法は比較的簡単に発動するらしい。



簡単なのは良いことだ。早く修得できるだけでなく、咄嗟に発動できるのなら危機的状況とかでも役立つ事は多いはずだ。


私達も概要まで聞いたのは良かったのだが、時間が無かったせいで肝心の覚え方や使い方についてまでは聞けていなかった。

しかし、フランさんのチュートリアルを担当したプレイヤーは魔法を専門に扱う人物で、かなり詳細な説明と指導を受けたそうなのだ。


魔法の具体的な使い方…しかも先輩プレイヤー直伝の指導法を断片的にでも受けられるのなら、確かに受け入れる価値のある提案かもしれない。




ーー数十分後ーー



「チバ君の事なのでもう少し渋ると思ったのですが、意外にもアッサリ了解してくれましたね。」


魔法の使い方を教えてもらうことにした私達に、フランさんは妙にニコニコしながらそう言ってきた。


「まぁ、何が起こるか解らない以上、戦力の強化は早めにしておいた方が良いしな。」


なんとなくフランさんの顔を見れず、少し顔を背けるようにしながら私は応えた。


「ちーちゃんが凄く魔法を覚えたくて仕方ないみたいなのでお願いします!」


「べ、べつにそこまでじゃないし!」


直後にニコニコしながらアインが放った言葉を、私は少し慌てて否定する。

何を言い出すんだろうかこの天然娘は、人がまるで目を輝かせる子供みたいになってるような言い方は止めて欲しい。


確かに私も魔法への興味は少なからずある。 

アナザーワールドフロンティアの魔法は、ただ唱えたりコマンドを選択するだけで発動する他のゲームとは違い、イメージや一定の法則のもとに魔力を制御することで発動するそうだ。

多少面倒そうではあるが、確かにファンタジー小説等も好む私からすれば、何の脈絡も無くオートマチックに発動するよりはずっと好ましい。


魔法とはファンタジーを題材にした物語にとっては要だ。

魔法使いや魔法そのもの、あるいは魔法によって生み出された物は、その力で物語の世界や登場人物に、様々な影響を与えていく。

魔法とはファンタジーそのものと言っても過言では無いのだ。


だから、まぁ、確かに思い入れはあるし?期待をしている事自体は否定できない。



「それでは早速説明を始めましょう。まずは魔力を認識する事からですね。」


フランさん、ニコニコしながら私を見るのはやめてください…


ちなみに私達の他にも魔法を優先して学びたいプレイヤー達も一緒にフランさんを囲んでいる。

魔法の指導を受ける人達の武器を、先に武器を練習したい人達にに貸し出し、向こうではアニキの監督のもとに色々武器を試してみるようだ。

私も一応鞭を預けている。


「魔力って特殊能力が無いと見れないんじゃないの?」


フランさんの言葉に早速アインが質問する。見るだけが認識ではないだろうが、確かに魔力を感知するには専用の能力が必要と聞いた気がする。


「正しくは、自分以外の様々な魔力を正確に感知するには必要という事のようですね。流石に自分自身の魔力はそれなりの精度で把握できますよ?」


フランさんはそう言うが、魔眼を持ってるはずの私でも魔力の感知なんてしたことが無い。ただ能力を持ってるだけじゃ駄目なのだろうか?


「ですが、本来魔力は現実には存在しないものです。なので、このゲーム内での魔力に関わる感覚は外付けの拡張パーツのようなもので、本来はまず体に慣れなければ魔力は感知も使用も出来ないそうです。」


フランさんの説明が続く中、私はひとつ納得した。

セージさんが武器の指導に集中していたのは、ゲーム開始直後では魔力の感知が出来ないからだったのだろう。


「ですが、先行組の間で外部から魔力を流し込むことで魔力の操作を司る器官を刺激し、通常より遥かに早く魔力感知を覚える方法が編み出されているのです!さて、どなたか試してみたい方はいらっしゃいませんか?」


説明の内容にフランさんを囲む人達がどよめく。

話だけ聞くと、どうにも力業で無理矢理何とかしようとしている感じで少し怖い。

誰かが一発試してみれば話は早いのだが、なかなか誰も名乗り出ようとはしない。

私は自分のすぐ横へ視線を向けた。

こういう時、いつもならアインが真っ先に名乗り出るはずなのだが、そのアインがどういうわけか隣にいる私をニコニコしながら見つめている。

そして、不思議に思いながらも正面に視線を戻すと、どういうわけか今度はフランさんと目が合ってしまった。


この時点ですぐに逃げておけば良かったのだが、色々魔法について考えていた私は、すぐにはこの状況の意味に気付けなかった。


気付けば、周りにいるプレイヤー全員の視線が私に集中している。


「はい、それではまずチバ君からお願いします。」


まるで教師が生徒を指名するようなノリでフランさんがニッコリ笑いながら私を呼ぶ。

ちょっと待てと叫びたいところではあるが、気付くのが遅すぎた。しかも、私の手をイツキがしっかりと握ってきて逃げることも出来そうにない。


「………お手柔らかにお願いします。」


諦めて大人しく状況に身を任せる事にした私は、フランさんに促されるままに彼女の前に立つ。一応お願いはしてみたが、フランさんの笑顔を見る限り手加減とかはしてくれそうにない。


「チバ君、そんなに不安そうな表情で見ないでください。興奮してしまうじゃないですか。」


「……………。」


よし、逃げよう!


「ちょっと!無言で逃げようとしないでください!冗談ですから、別に痛みや苦痛は無いはずなので安心してください。」


全力で逃げようとしたのだが、フランさんに見事に捕まってしまった。どうやら魔呪族はエルフより非力らしく、フランさんを全然振りほどけなかった。


「フランさんが言うと冗談に聞こえないんですよ…。」


「失礼な、私だって冗談くらい言います」


フランさんはそういうが、彼女は実際に昔から結構な無理難題を吹っ掛けて来る人なのだ。絶対にドSだと思う。


「それでは始めます。楽にして両目を閉じていて下さいね?」


フランさんと両手を繋ぎ、私は言われた通りに両目を閉じた。


「いきますよ?」


フランさんが小さくそう言った直後、繋いだ両手に何とも言えない変な感覚が走り始める。


「その感覚は私の魔力に貴女の魔力が反発して起きています。そのまま集中して魔力の流れを感じてください。」


思わず顔をしかめる私に、さらにフランさんが指示を出す。

確かに、言われてみるとゾクゾクするような変な感覚の源が全身を流動し巡っているような気がしてくる。

さらに意識を集中して感じ取ってみると、大きな流れが小さな流れに邪魔されているような感覚がある……おそらく、大きな流れが私自身の魔力であり、小さな流れはフランさんが外部から流し込んできている魔力なのだろう。

というか、今になって気付いたが、この変な感じには覚えがある。

イツキが私の角に触った時に感じた違和感は、どうやら角に流れる魔力にイツキが知らずに干渉して起きたのかもしれない。


「おや?その表情、どうやらちゃんと知覚できたようですね?」


私が両目を開くと、フランさんは私に流していた魔力を止めた。

外部からの干渉がなくなり変な違和感は消えたが、少し意識を向けてみると私の中に何かが流れているのを確かに感じる事が出来た。


「たぶん…魔力の流れは把握出来たと思います。」


たぶんとは言ったが、私に魔力知覚能力が目覚めたのは確実だろう。自分の中に当たり前のように血流とともに魔力が流れている感覚がある。



「素晴らしいですね。流石は魔呪族と言うことでしょうか?私や一緒にチュートリアルを受けたプレイヤーは、何度か試して覚えたのですが……優秀な生徒で先生は嬉しいです。」


「いや、そういうの良いんで次行きましょう。」


わざわざ泣き真似までするフランさんを私は急かした。

せっかく魔力に目覚めたのだ。多少子供っぽいかもしれないが、早く試してみたいと思うのは当然だろう。


「やれやれ、チバ君には感動を噛み締めると言う感情は無いんですか?ですが、まぁ、良いでしょう…後は説明出来ることはほとんどありません、強いイメージで魔力を操作し、集めて…放つ!」


やはり子供染みていたのか、フランさんは呆れたようではあったが、今度は私達に御手本を見せてくれた。

フランさんは掌に淡い緑色の光の球を作り出すと、それを無造作に地面に投げるように放ち地面を穿って見せた。


その光景にプレイヤー達に混じって私も歓声を上げてしまう。


「これが主に魔力弾などと呼ばれている、初歩の初歩の攻撃魔法ですね。このように、魔力はある程度収束されると視覚可能になり、物理的な力も発生します。素手では然程収束も出来ないようですし、全力で撃っても殴ったのと大して変わらない威力しか出ませんが、無いよりはマシでしょう?」


フランさんは口ではつまらないモノのように言って見せたが、その表情は完全にドヤ顔だった。

だが、私もプレイヤー達も初めて見る魔法に興奮してそんな事は気にならない。


「では、チバ君はしばらく自主練習をしていてください。それでは、次の方はいらっしゃいませんか?」


フランさんの問いかけに、今度は周りを囲むプレイヤーの誰もが手を上げる。

成功例を目の前で見たせいか、プレイヤー達の勢いが凄い。


「チバ君、早く覚えて手伝ってくださいね?」


珍しく少しひきつった笑顔を浮かべるフランさんに、私は大きく頷いた。

念願の魔法を扱う練習なのだ。普段はクールな私も、今回ばかりは流石に胸が熱くなると言うものだ。


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