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高速シリーズ

高速に挑む君へ

作者: ヒレカツ定食

Episode1 [HighSpeedRacing]


 かつて、私にも自分の身体というものが存在した。

 周りと同じように時を重ねる度に少しずつ成長していく、ごく普通の身体だ。

 でも、今ではそれがいつの事だったのか、どんな身体だったのか、はっきりとは思い出せない。

 今の私は、どこにでもいる今風の女子高生の身体に魂を宿している。

 どうやら彼女は、学校帰りに友人とカラオケに行った直後で、これから家に帰ろうとしていた所を私に捕まり、魂まで骨抜きにされて今に至るらしい。

 私には、もう長らく生の実感というものがない。ひたすら命を繋ぎ止めるためだけに、次から次へと宿主を見つけてはただ闇雲に転生し続けてきた。

 私には、生まれつき不思議な力があった。

 一つは、死期が正確にわかるというもの。

 具体的には、そろそろ死ぬだろうな、という予感のようなものが定期的に襲ってくる。それは一年前だったり一ヶ月前だったり、遅いと三日前だったりするので、何か規則性があるとは考えにくいが、これに関しては慣れてしまえばほとんど問題ない。

 しかし、不思議なことに死因については事前に察知する事ができず、場合によって溺死だったり事故死だったり、時には感電死だったりと、結構、予想外な死に方で死んでしまう事も少なくない。

 何故、様々な死に方をしているのが自分でわかるのかというと、これはもう一つの能力にも大きく関係している事で、どちらかと言えばこちらの能力の方が特異性があるかもしれない。

 そのもう一つの能力というのが、魂交換だ。

 まあ、魂交換という名前自体は私が勝手にそう認識しているだけで、実際は交換という言葉が使われるほど生易しい能力ではない。

 魂交換とは、つまりは相手と自分の魂、あるいは精神を交換できてしまう能力だ。

 これだけなら、単純に相手の身体を乗っ取ってしまうだけの異能に見えるかもしれないが、しかし同時に、私には死期を悟る能力がある。

 それがどういう結果を生むのかは、少し考えれば十分に察しがつくと思う。つまり私は、自分の身体に死期が近づく度に手頃な人間を見つけ、魂交換により自身の死を回避してきたのだ。

 私がこれを魂転移と呼ばない大きな理由は、魂交換はあくまでも魂の交換であって、実際に魂交換を行う際に、宿主の魂をそのまま押し殺してしまう、というような能力ではないという事だ。

 それがどういう事かと言うと、ちょうど先ほど、私が二年ほど使っていた身体が死期を迎え、交通事故でトラックに跳ねられて死亡した。その直前に私は、近くに居た女子高生と魂交換を行っているのだが、魂交換の直後、トラックに跳ねられて死亡するはずだった中年のサラーリマンは、まるで十代の女の子のような反応で慌てふためき、知覚する暇もないほどの猛スピードで、信号無視のトラックに正面から衝突された。

 このように、あくまで魂と魂の交換を行うだけの能力であり、対象となった人物は何の前触れもなく、それこそ瞬きをする一瞬の間に自身の身体が失われる事になる。

 





つづく。









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