第3章:最速vs超絶反射
約7ヶ月ぶりの戦闘シーンですよ……!!
果たして戦闘シーンの描写はうまくなっているのか!?
感想を待つ!!(笑)
「戦闘開始――」
――彼女が動いた。
その場で一回転すると、足を折り畳んで――飛び出した。
瞬きする間もなく彼女が、もう、すぐ目前まで一撃せんと迫っていた。
その距離、20メートルにして、半秒も満たなかった。
20メートルを一度も地面に足を付けずに接近し、振りかぶった彼女の大鎌の行く末は、自身の真後ろ――大上段からの全力の振り下ろし!
そう脳が視認するよりも早く、体が動いていた。
「――う…おおっ!」
気合いを迸らせながら、剣を抜き払った。
居合い切り。
あの神速突進攻撃に対抗出来る唯一の攻撃。
だから、彼女に打倒しうる可能性のある者は――僕ただ一人。
風魔法による極限までの加速により、本来ならばあり得ないほどの速さで迫り来る鋼の刃が体を斬り刻むその寸前で、弾き飛ばした。
甲高い二対の金属音が大気を振るわせ、激しく火花が飛び散った。
右腕には、途方もない衝撃。
彼女との試合回数47戦中、内18戦は、この神速の突進技によって決着がついている。
彼女は試合になると、初撃は必ず突進技と決まっているのだが、それが分かっていたとしても、対応がいかんとも難しい。
ギリギリまで接近し、その得物の間合いに入る直前に予備動作に入るので、見切りが難しく、またそれを見切ったとしても、その瞬間にはもう振り抜かないと間に合わないし、しっかりとした無理の無い体勢と剣軌道で全力の剣技をぶつけないと、逆にこちらが弾き飛ばされてしまってお仕舞いなのだ。
だが逆に言えば、それほどの必殺の一撃を弾き飛ばすとなると――強烈なノックバックが発生する。
大鎌は軌道をなぞるようにして弾き戻されており、今なら前がガラ空きだ。
だがここで無理に剣を戻そうとすれば、そのぶん体が硬直してしまい、もうその時では手遅れになってしまう。
技の慣性に逆らわず、勢いを保ったまま体を思い切り一回転させる。
「……ッ!!」
回転の勢いを加えた薙払いは、狙い外わず彼女の横腹に吸い込まれていく――
その瞬間、彼女が不意に視界から消え去った。
――否。
彼女は大鎌を手放し、上半身を限界まで後ろに倒して避けたのだ。
必中の攻撃のはずだった薙払いは彼女の胸元を掠めていった。
戦いの最中で武器を手放すという柔軟性も声が出ないほど素晴らしいが、この場合は、なによりその発想を思い付いたその瞬間に実行した判断力の方だろう。
剣技を見事なまでに空振った俺は体を逸らせることも出来ずに、宙返り気味に蹴り上げられたブーツが俺の顎に炸裂した。
見事なサマーソルトを決められた俺はそのまま後方に吹き飛ばされ、受け身も出来ずに地面に倒れこんだ。
彼女は蹴り上げた余力で着地し、バックステップで距離を取ってから、空を舞う大鎌を器用に掴んだ。
打撃攻撃はリフテクトで防いでくれないので、顎あたりから発せられた強烈な痛みが体を蝕む。
痛い。
痛い。
――痛い。
でも。
――頭が真っ白になるほどの攻撃でもない。
クラクラする頭を抑えながらゆっくりと立ち上がり、再び剣を握り直す。
「……おかげで頭が冴えてきたよ――っ!!」
そう叫びながら、猛然と突進を敢行しようと飛び出した。
あの巨大な大鎌とやりあうときは、相手の得物はとにかく間合いが長いがその分大振りになるので、間合い外に引きながら戦うよりも、間合いのさらに一歩奥に詰めたほうが戦いやすいのだ。
だが、それは彼女が一番よく分かっているので、そうはさせてくれない。
十分な助走を取ってから、腰当たりまで剣を引き戻す。
「風流剣……風見鶏!」
風魔法によって身体全体が加速され、はんば自動的に神速の突き技が繰り出される。
3メートルほどが、瞬時にゼロになるほどの強烈な加速。
しかし、彼女はそれを難なく弾き飛ばすと、カウンターで、ほぼ真下に当たるような角度から大鎌が切り上げられてくる。
一歩下がりながら片足を上げてそれを何とかしてやり過ごすが、彼女はその隙を見逃そうともせずに、疾風怒涛の連続攻撃による追撃を開始させた。
剣技でも、反射能力でも、身のこなし一つをとっても、やはりどれもこちらが劣っていた。
「――!!」
無言の圧力でこちらに追撃を浴びせてくるユキだが、彼女も今回は少々本気の時に見せる顔をしていた。
これは、まずい。
「は…ぁぁっ!!」
一度全力の剣技を繰り出して、強引にブレイクポイントを作ってから、バックステップで大きく距離を取った。
やはり、超接近戦ともなると、いくら彼女が操っていたとしても、あの大鎌では分が悪い。
そう、地に足付けての戦闘では、彼女は並の強さだ。
地に足付けてならば
空から遊撃するならば。
初撃の同じ予備動作で、一回転し、風魔法を十分に身体に纏わせると、それを足へと運んでいき――、一気に解放させる。
二度目となる神速突進技だが、さすがに二回目ともなると俺の意識ももう完全に戦闘に集中しているため、ほぼ確実に対応できる。
だが、そうは分かっていてもやはり速い。
闇の中で漆黒の影が移動するかのように錯覚した。
彼女の予備動作から技の軌道を読もうと必死に右手を目で追うが――その必要は無かった。
真っ向勝負で勝てないなら、奇襲攻撃をすれば良い――。
それが彼女の戦闘スタイルだ。
そう、彼女の強さは、その他を寄せ付けない圧倒的な速さよりも、そのトリッキーな戦法だろう。
間合いに入るよりも早く、右手を閃かせ、大鎌を地面に叩きつけて、上空へ身体を躍らせた。
彼女は俺の真上まで到達すると、脳天目掛けて鋼の刃を突き刺した。
そしてそれを防ぎに入った長剣が交錯する。
一瞬――視線が互いの刃が交錯したかのように、交錯する。
真っ黒な、瞳だった。
そのまま彼女はステージの周りを囲ってある柱の一つに着地するという離れ業をやってのけ、それが重力に拘束されて失墜するよりも早く、次の跳躍を開始していた。
「う…らぁっ!!」
振り向きで剣を閃かせ、背後からの一撃を防ごうとしたが――駄目だ。
――それでは彼女の変則的な攻撃には対応出来ない。
銃弾のように空中から突っ込んできた彼女は、間合いに入るギリギリでまたしても、地面に大鎌を叩きつけて、俺の真上を抜き去り、背後へと着地した。
俺が振り向こうとするよりも早く、鋼の刃が喉仏にぴったりと当てられた。
ごくり、と唾を飲むことも許されない。
命を刈り取る、大鎌……。
そしてそれを操るは――黒い死神。
もしそうなら。
彼女はきっと、――化け物だろう。
next→




