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第2章:天才と秀才

 ギルティエアレーザーレスレクシオンシシアテリオスバリエンテリカゲーニーマエダユキ。

 確か、そんな名前だったと思う。

 名字が、ギルティエアレーザーレスレクシオンシシアテリオスバリエンテリカゲーニーマエダで、名前が、ユキというわけだ。

 非常に長い。

 むしろ覚えれるものなら覚えてみろと言いたげな名前にすら思えてくる。

「ギルティエアレーザーレスレクシオンシシアテリオスバリエンテリカゲーニーマエダユキ」

「……はい」

 とよく噛まずに言えると感心してしまう。

 なぜ彼女が全名で呼ばれているかというと、それは現在進行形で大事な儀式が行われているからだ。

 暗闇に包まれた大広間には微かな冷気が漂っており、夏だというのに少し肌寒いくらいだ。

 部屋の中央では、円形状のステージが設けられており、それを囲うようにして数本の柱が伸びている。

 そしてそのステージ全体を囲むように蝋燭の炎がゆらゆらと揺れている。

 広さにして半径約5メートル。

 だが、これは広いように見えて案外狭い。

 そもそも、魔法による遠距離攻撃の撃ち合いでは、最低でも5メートル以上の間合いで行われるものであって、それをこの超至近距離で行うのは、少々無理があるのだ。

 ……まぁ、彼女の場合は関係無いのだが。(、、、、、、、、、、)



 この第17魔高では、月の終わりに生徒同士による実戦型式で行う試合をするという決まりがある。

 これによって、その月の最終的な成績が決定するという仕組みだ。

 が、これまた本当に面倒なことこの上無い。

 先生生徒共々皆が視線を送ってくるなか戦うというのはいつめ息が詰まりそうになってしまう。

 そしてこの試合によって、上位10名には各々にNo(ナンバー)が与えられる。

 成績がトップのユキは当然、No.1の称号を得ている。

 そしてそのNo.1と試合するのは、最強を打倒しうるだけの秀才となり、それは必然的にNo.2だから、つまり――

「――アルカナ」

「…はい」

「またあいつか」とか、「ははは、毎回大変だなあいつも」といった囁き声が辺りからぼそぼそと聞こえるが、気にせずにステージ場に上がる。

 向こう側では、相変わらずユキがこちらを睨んでいた。

 あの険悪な目付きをされるのも、相変わらずもう慣れた。

 俺は腰の鞘から長剣を抜いて、オーソドックスな中段に構え――はせずに、剣は鞘に納めたまま、両足を開け、大きく腰を落とした。

 対するユキは、右手に光を集め、異空倉庫から身の丈ほどの巨大な大鎌(デスサイズ)を取り出した。

 そのまま構えようともせず、ただ自然体で大鎌(デスサイズ)を持っている。

 だが、彼女がソレを手に取った途端に変わったのが解った。

 ――否。

 化けたのが解った。

 気配が、空気が、大気が、呼吸の仕方が、血液の流れが――変わったのが解った。

 ただ、目付きだけは、変わっていないように思えた。

 真っ黒な、瞳だった。

「これより、ギルティエアレーザーレスレクシオンシシアテリオスバリエンテリカゲーニーマエダユキとアルカナの勝負を開始する」

 その言葉を境に、周囲の囁き声が耳から遠のいていき、無駄な邪念が取り払われていき、意識が研ぎ澄まされていくのが自分でも解った。

 視界には、もはや倒すべき相手しか写っていない。

 ゆっくりと柄に右手を被せていき、呼吸を整えていく。

 依然として向こうはただ自然体でその場に立っている。

 初撃はお互いもう知っているようなものなので、現在の体勢から情報を得ようとはしていない。

 ――ただ、意識を目の前に集中させる。

 居合いでの勝負は、一秒も待たない一瞬の勝負故に、それだけの一瞬で全てを出しきらないといけない。

 その為には、まずは相手の攻撃を完璧に見切り、優位に立つことが第一だ。

 そしてその、相手の攻撃を見切るという点では、この場合は最も安易であるといえる。

 なぜなら、全ての攻撃において大きな円弧を描く大鎌では、比較的に攻撃を見切りやすいのだ。

 さらに、攻撃がどうしても大振りになってしまう大鎌では、超近接戦闘向きではないのだ。

 しかし、どれをとっても――彼女にしてみれば関係、無い。



「戦闘開始――」



 ――彼女が動いた。



next→

御拝読、ありがとうございました。

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