第1章:天使、むしろ女神
ここからは回想編ですね。
にしても、文体がコロコロ変わりますね...。
早く文体を確立したいです!
では、よろしくお願いします。
とても、面白い夢を見ていた気がする。
さっきまでとても面白い夢を見たのは覚えているが、いざ起きて数分もすると、次第に内容が薄れていき、昼頃には完全に忘れ去っているという経験がないだろうか。
そんな感覚。
だから。
「夢か……」
と、起きた瞬間に何気なしに呟いたのだろう。
寝ぼけた目でベットから起きると、時刻は七時頃を指していた。
途端に、蝉がうるさく鳴き出したような感覚に陥るが、蝉は始めから鳴いていたらしく、どうやら聴覚がおかしくなってしまうほどに寝ぼけているらしい。
聴覚が戻ると、今度は蒸せるような暑さと湿気が全身を包み、毛穴から汗が吹き出る。
この状況ではさすがに二度寝する気にはならずに、敢え無くベットから抜け出し、少し早く起きすぎたなと後悔しながら、寝室の扉を開けた。
◇
雲一つ無い青空に、まだ一日は始まったばかりなのに仕事熱心な太陽殿はいつも通り空へと昇っている。一日くらいサボったらどうだろうか。
その眩しいくらいの太陽が絶妙な暖かさを生んでおり、遠くの森から小鳥たちが楽しそうにじゃれ合いながら飛び出していく姿が見えた。
一方こちらも遮蔽物一つ無く、一面桑畑が広がる一本道を進んでいるが、空と地ではその対偶には文字通り、天地の差があるらしく、俺の連れは楽しそうにじゃれてなどいるなどあるはずもなく、ただただブスッとした無愛想な顔で歩いているだけだった。
「……何?」
凍える冬の寒さを連想させるような視線を与えてくれるものだから、彼女の名前が“ユキ”というのも、一つ納得できるものがある。
真っ黒の服に、乱暴に切り取られたショートカットに、雨に濡れたかのように艶やかの黒髪、そして鋭い目。
真っ黒な瞳だった。
そしてみんなが彼女のことをさながら死神だと言っていることを、彼女はまだ知らない。
彼女はなんとこれでもこの地方一体では名を馳せる富豪家の娘であって、つまりはお嬢様なのだ。
まぁ、彼女をお嬢様などと呼んだ日には彼女の家の所有地である林の中に連れ込まれ、日の出まで彷徨い続ける羽目になるだろう。
俺の小さな家の近くで俺の小さな家とは比べ物にならないほどの武家屋敷に住んでいて、林の中に堂々と構えているそれは荘厳さが溢れて出ており、中では黒服の方々が働いている。
正直言って、近づきたくない。
そんな死神さま御一行がどこへ向かっているというと、これはごく平凡な答えで、まぁ学校だった。
弱冠16歳にしてよくもまぁ、何10年に渡って学校に通い続けられているのは、ちょっとした奇跡と言っても良いかもしれないと自分の中では思っている。
「いや、行って当たり前だから……」
すかさず突っ込みを入れてくれる友達がいるというのも、学校へ通い続けられている要因の一つだろう。
第17国家魔法科高等教育学校、略して第17魔高は俺達の通っている学校はその名の通り、主に魔法についてを学ぶための学校だ。
魔法科といっても、もっと分かりやすく言うならば、ミラージュを狩るハンター育成学校みたいなものだ。
なので、魔法学に、薬学、物理学に、体術にと幅広いバリエーションが揃っており万能だが、第17魔高はその数ある魔法科学校の中でもエリートに属されており、当然そのため入学するのにも相当なスキルが必要となってくる。
そのクセに街のはずれの丘の上にひっそりと立てられているという立地条件の悪さはどうにかしてほしいと切実に願っている。
まぁ、これは理由があるから仕方が無いのだが。
「でも、なんてったって、今は夏休みだぞ。なんでそんな惰性を貪るための長期休暇を献上せにゃあならんのだ」
「じゃあ、学年トップの成績を収めてその必要がないことを証明すればいいじゃない」
「……」
学年トップの成績のお方が言っていた。
そりゃそうだよな……。
頂点こそが正しいもんな……。
強けりゃ何でもあり、みたいな。
むしろ、強いからこそ王道か。
「じゃあ、トップスコアはどうすれば出せるんだ?」
「才能?」
「負けた」
記録的大敗だった。
さすが育ちの良いお嬢様は根元から頭脳が違うのかもしれない。
「そういえば、今日はハルはどうしたんだ?」
「そんな妹の名前を気安く呼ばないで。やることがあるって言って随分早くに出かけていったわ」
やること?
……あの不思議ちゃんは何を考えているのか理解しかねるところがあるが、まぁ、俺には関係ないことだろう。たぶん。
姉妹だというのに似ても似つかぬほどの小柄な身体に、肩当たりまで伸びている金髪、金色の目、さらに普段から白色の服を好き好んで着ていることもあり、俺を含む男子諸君からは天使という愛称で親しまれている。
そして言うまでもなく、可愛い。
もう一度言っておくが、可愛い。
天使、むしろ女神。
「いや、だがな、俺はいつもハルにご贔屓にしてもらっているんだから、別に気安くもなんともないんだが……」
「そうよね。毎日放課後に自分の家に妹を連れ込んで2人きりで怪しげなことをしていても、姉の私には関係ないわよね」
「何知ってんだお前っ!?」
筒抜けだった。
ユキには秘密にしているが、ここ最近は放課後ハルに、ちょっとした魔法を教えてもらっているのだ。
そしてその為に、我がマイホームを提供していたわけだが、まさか一番知られてはいけないお方に知られてしまうとは…。
夏の暑さとは別の汗が滴った。
next→




