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【完結】妹にすべてを奪われたので今世は悪女になって奪還することにしました  作者: もぁらす


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4話『悪女の仮面は、綻びを見逃さない』


社交界――それは、麗しいドレスと微笑みの裏で繰り広げられる、情報と策略の戦場。


 その夜の舞踏会は、ロズベルグ伯爵家が主催する春の夜会。貴族の令嬢たちが初めて公に披露される“社交デビュー”でもあった。



 そして、そこには当然ながら、私とリリーも招かれていた。


「お姉さまのドレス、とても素敵ですね。やっぱり、定番の仕立て屋さんで正解でしたね」


 リリーがにこやかに話しかけてくる。そう、彼女が手配した仕立て屋。前世で私は、ここの縫製ミスでドレスの背が裂けるという恥をかかされた。

 


「ええ、とても着心地がいいわ。少し、調整も入れてもらったの」



 私は静かに返す。



 ――だが実際には、このドレスは寸前で別の高級仕立て屋に縫い直させたものだ。全く同じデザインで、完璧な状態に仕上げてもらっている。


 前世と同じ轍は踏まない。




「そう……良かったです。私、少し心配してましたの」



 リリーの目が笑っていないことに、私は気づいている。


 次期当主の姉の私のほうが、ドレスにかかる費用がリリーよりもかかったからだ。


「妹として姉を支えるのよ」


 母は別け隔てなく、平等に私達姉妹を侯爵家の人間として育てた。


 舞踏会が始まると、会場はきらびやかな照明と音楽に包まれた。煌めくドレス、香水の匂い、ワインと果物の甘い香り――華やかさの中で私は冷静だった。


 リリーが“仕掛けた罠”は、まだ終わっていない。


 次は、靴。


 彼女は私の舞踏用のヒールに、滑りやすい石鹸成分を擦り込ませようとしていた。だがそれも、前日に入念にチェックを行い、別の靴に交換済みだった。




 いま、私が履いているのは、滑り止めをしっかり施した“靴”。



「アメリア様、次の曲、よろしければ……」



 青年貴族に声をかけられた私は、にこりと微笑みながら手を差し出した。




 ――ここからが、勝負。


 会場の中央で踊る私の姿に、周囲の視線が集まる。


 かつての私は、どこか自信のない所作で、その空気をすぐに手放してしまった。けれど今は違う。




 私は知っている。視線の集め方も、振る舞いも、言葉の選び方も。


 かつてリリーがしていた真似事をした。




「アメリア様、お美しい……!」


「今年の夜会で、最も華やかだったのは彼女では?」




 そんなささやきが、耳に入る。




 私のほうが目立っている。それが、リリーには耐えがたい事実だろう。


 ふと、視線を感じて振り返ると、リリーがひとり、ワインを手にして私を見つめていた。




 笑っていた。けれど、その瞳は凍るように冷たい。




 彼女の仮面が、わずかに綻びを見せた瞬間だった。




***




 舞踏を終え、私はバルコニーでひと息ついていた。


 夜風が心地よく、胸元のネックレスが微かに光を放つ。





「……これはまだ、ほんの始まりよね」


『その通り。だが、今日の“選択”は大きな分岐となるだろう』




 私はネックレスをそっと握った。




「リリーの仮面が剥がれる時……私は、どんな顔で向き合えばいいのかな」


『その時は、“そなた自身の意志”で、選ぶのだ』




「……そうよね」




 風に揺れるカーテンの向こうで、再びリリーの声がした。




「お姉さま、そろそろ帰りませんか?」




 私は振り返り、何事もなかったように微笑んだ。




「ええ、そうしましょう。今日は、いい夜だったわ」




 心の中で――静かに呟く。




 一歩ずつ、取り戻すわ。今度こそ、全部



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