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【完結】妹にすべてを奪われたので今世は悪女になって奪還することにしました  作者: もぁらす


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3話『時を遡るのは、一度きり』


 リリーの策略を一つ潰してからというもの、過去とは違い屋敷の空気は良好なままだ。


 使用人たちは私を“善良な姉”としてまだ扱ってくれている。かつてはこの時期から私は屋敷で浮いた存在になり、頼れるのはリリーだけだった。


 母も変わらず微笑みを向けてくれる。――けれど、リリーだけが、静かに焦り始めていた。



「お姉さま、最近……少し変わりましたよね?」



 その問いかけは、ある日の夕暮れ。中庭に咲くアネモネを摘みながら、リリーが口にした言葉だった。



「そうかしら?」


「うん……でも、いい意味で、です。前よりずっと、凛としているというか……」



 言葉の裏に探りの棘があるのは、私にはもう分かる。


 私がただの“簡単に騙せる都合のいい姉”ではなくなったこと。何かを“知っている”可能性があること。それを、彼女は警戒している。




 だけど、私にはもう迷いがない。




「リリー。私、これからは“自分のため”に生きようと思っているの」


「……自分の、ため?」


「ええ。もう、誰かに利用されるのは、やめたいから」



 一瞬だけ、リリーの笑顔が硬直する。けれどすぐに取り繕うように続ける。



「お姉さまには、いつも幸せでいてほしいです」


「ありがとう。そう言ってくれるのは、あなただけね」




 皮肉と感謝を織り交ぜた言葉を返して、その場を収めた。




 私たちは、笑顔のまま。だが、決して視線は交わらない。




***




 その夜。


 ネックレスが淡く光り、胸元で脈動した。




 私はベッドの上で、それをそっと手に取った。


 すると、また――あの声が、心の中に囁いた。




『そなたの意志、確かに見届けている』


「リュミエール……私、ちゃんと選べてるかな」


『選ぶことは、できている。だが、その選択は“戻せぬもの”でもあることを忘れてはならない』




 私は息を呑む。




「……どういう意味?」




 リュミエールは、やや間を置いて答えた。




『そなたに与えた力は、“運命を一度だけ巻き戻す力”。それを行使するのは――“一度きり”だ』


「……!」


『未来を知っているそなたには、無数の分岐がある。その中から、どの“選択”をやり直すか。それを決めるのは、そなた自身。だが、また戻すことは出来ない』




 私は、冷たい汗が背をつたうのを感じた。


 巻き戻せるのは、たった一度。




「そうよね……」


『力は万能ではない。だからこそ、意志がすべてを決める』




 私は手を握りしめた。



 私は間違えないようにしなければならない。




***




 翌朝。


 食堂の席に着いた私に、母が声をかけた。




「そういえば、アメリア。次の社交会、あなたも出席するようにと招待状が届いているのよ」



 前世でも、すべての地獄が加速し始めた“きっかけの夜”。舞踏会。それが、もう目前に迫っている。




「もちろん、出席します」


 私は、きっぱりと答えた。


 リリーの計画は、すでにその中に組み込まれているだろう。


 ――前世と同じ服の仕立て屋を使えば、ドレスは破れる。


 ――靴を信頼していた侍女に任せれば、舞踏中に転倒する。




 そして、恥をかいた姉の代わりに妹が“美しく踊る”。それが、リリーの筋書きだった。




 でも今回は――そうはいかないわ




 私は、そう心の中で静かに呟いた。




 笑顔は変わらずとも、瞳の奥には、確かな“決意”が宿っていた。





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