表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】妹にすべてを奪われたので今世は悪女になって奪還することにしました  作者: もぁらす


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/44

9話『縁談の報せ、決意は胸の奥に』


 母の命を脅かす毒の香草袋を未然に発見してから数日。


 使用人たちの間には、妙な緊張感が漂っていた。誰もが互いの顔色を窺い、ミスひとつが命取りになると理解し始めている。

 

 わたしに逆らえば故郷に返すと告げたからだろうか。


 それでいい。私は“恐れられても構わない”。



 守るべき者を守るためなら、私は“悪女”の名を背負うと決めたのだから。



 だが、そんな矢先、さらなる火種が――王宮から届けられた。


 一通の書状だった。



「公爵家からの縁談?」



 私の手の中には、金の封蝋が施された厚手の羊皮紙があった。


 宛先は、私の名前。


 そしてその差出人は――第一王子ルシアンではなく、彼の叔父にあたるマルグレーヴ公爵家。



「これは……」



 王太子を取り巻く派閥争いの中、ローズウッド家を手に入れたいという思惑が働いている。ローズウッド家の“従順な令嬢”が手に入れば、公爵家としても都合がいい。



 そしてリリーがその筋書きを助けている可能性は――極めて高い。



「……確か」



 前世でこの縁談はなかった。母の勧めに従って“王家との縁”を優先しようとした――だが母が亡き後、誰からも守られずに孤立してしまった。




 だが今回は違う。




 私はリリーの思う壺にはならない。




***


 


 母のもとへ出向き、縁談の件を告げると、彼女は不安げな顔を見せた。



「マルグレーヴ公は……確かに由緒ある家門ではあるけれど、あなたにはまだ早い話ね……」


「ええ、そう思います。……だから私は、断るつもりです」




 私は、“自分で選ぶ”と決めた


 そう心で言いながら、胸のネックレスを握りしめた。




 “運命を一度だけ巻き戻す”力。その代償と重みを、私は誰よりも知っている。

 だからこそ、二度と他人の意志に流されるわけにはいかない。



「お母様。私を信じてくれますか?」



 問いかけに、母は少し目を見張ったあと、そっと微笑んだ。




「……ええ。信じるわ」




 その言葉が、胸に染みた。




 この笑顔を守るために、私は“選び続ける”。




***




 その日の夕刻、王宮からの使者がふたたび訪れた。



「ローズウッド家のアメリア嬢に、王子殿下よりお手紙がございます」



 届けられた手紙には、簡潔な筆致でこう綴られていた。




『君の選択を、僕は見届けたい。


  君の決断を、王宮で待っている。 ルシアン』




 ルシアン――。




 あなたは私の“味方”なの?




 それとも、ただの“傍観者”?




 前世では、あなたは私の処刑命令に署名をした。




 でも、今のあなたは、違う目で私を見ているように思う私がいる。



 だからこそ、答えが欲しい。




「……ルシアン」




***




 夜。


 リリーが、廊下で待っていた。



「お姉さま、お忙しそうですね。縁談のことでお悩みかと思って……お力になれることがあれば」



 その顔は、いつものように“天使の妹”を装っていた。


 けれど、その目の奥にある期待と嘲りが、私には手に取るように見えた。




 おそらく彼女は、私が公爵との縁談を受け入れると思っている。



「ありがとう、リリー。でも私は、誰の手も借りずに決められるから。あなたの優しさは、いつか誰か別の人にあげて」



 一瞬だけ、リリーの微笑が凍った。


 でもすぐに、柔らかく笑って言う。




「……そう。では、良き未来を、お姉さま」




 その言葉が、毒のように甘く響いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ