7話 枠を作れ
7話 枠を作れ
実家に戻ったその夜
二階の空気はまだよそよそしい
荷物は段ボールのまま
机だけを先に整えた
郊外の住宅街
遠くで犬が一度だけ吠える
探索者便利ツールが震えた
正式制度はまだ施行前
それでも
通知は届く
【管理層限定通知】
真田は静かに開く
秩序なき侵入は効率低下
探索者管理機構を設立する場合
施設提供を許可
受付
ロッカー
更衣室
衛生区画
シャワー
テナント区画
期限 三日
真田は画面を見つめる
「三日」
国家単位でも無茶な時間
「交渉だな」
影が揺れる
少女が現れる
人の形をしているが
人ではない
「お願い」
「お願いじゃない」
真田は椅子にもたれる
「俺が触れるのは、はじめてのだんじょんだけだろ」
少女は頷く
「うん」
「だから、そこで試して」
「良いと思ったものは、他の迷宮にも取り入れる」
「実験場か」
否定しない
「観察は大事」
「あなたの設計、わりと好き」
「楽したいだけだろ」
少女は小さく笑う
「効率化」
間
「責任は取れよ」
「もちろん」
少し間
「たぶん」
真田はため息を吐く
「効率って何だ」
「BP効率」
「BPって何だ」
「ブラックパワー」
「宇宙に漂うエネルギー」
「ダンジョンはそれを変換してる」
部屋の温度が一段下がる
「誰のエネルギーだ」
少女は少しだけ視線を逸らす
「借り物」
「返すのか」
「使いすぎなければ平気」
軽い
だが軽くない
「直接文明を変えるのはダメ」
「自分たちで成長してる形じゃないと」
「だから枠」
枠
制度
管理
「人間が出入りするたびに、少しだけ回収できる」
「余剰で別の星を温める」
真田は窓の外を見る
住宅街の灯り
遠い赤い星
「滅ぼしたいわけじゃないんだな」
少女は即答する
「滅ぼしたくない」
間
「今が一番 面白い」
音楽
映画
漫画
アニメ
物語
祈り
「うるさくて 騒がしくて 愚かで」
少し笑う
「でも飽きない」
打算と本音
混ざっている
「枠は作る」
真田が言う
「ただし」
「はじめてのだんじょんは俺が決める」
少女は楽しそうに目を細める
「だから好き」
⸻
翌朝
はじめてのだんじょんから全世界へ通知
【探索者管理機構設立要請】
【三日以内に設立されない場合 施設提供停止】
ニュースは臨時放送
市場が揺れる
専門家が語る
「資源独占は戦争を招く」
「国際機関は合理的選択」
画面右上
探索者ランキング
1位
ID JPSH0001
到達階層 地下100階
実名は出ていない
だが
最深層踏破者の存在が
制度を急がせる
実家二階
少女が小さく笑う
「動くね」
真田は静かに言う
「枠は作る」
だが
枠の中に収まるつもりはない
六階はまだ誰も知らない
はじめてのだんじょんは
実験場
そして
最前線




