45話 地下七階 ― 引き返す者
45話 地下七階 ― 引き返す者
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地下七階 大空間
広い
天井はさらに高い
白い発光鉱石が淡く灯る
だが空気が違う
湿り気がある
土の匂い
遠くから葉擦れの音
森
地下に森
マロンが落ち着かない
鼻を鳴らす
尻尾が短く震える
真田 一は黙って立っている
風を読むように
空気を感じる
「……重いな」
六階とは違う
圧ではない
“未知”
あーちゃんの声は耳ではない
壁の内側から響く
『七階 想定生存率 62%』
『六階上位個体 SP効率 68%』
数字が冷静に刺さる
真田は階段を振り返る
「六階で苦戦するなら、七階は無理だ」
マロンが七階通路を見つめる
真田は首を振る
「今は挑戦じゃない」
「準備だ」
六階へ戻る
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地下六階 再突入
空気が変わる
慣れた重さ
石の匂い
濃縮済み
通常個体の気配は薄い
だが
奥から来る
重い足音
金属が擦れる音
カン
カン
真田はハルバートを握る
「上位だけ狩る」
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六階北側 ― 混成上位群れ
通路が開ける
そこにいた
武装オーク 二体
半鎧装備
一体は大斧
一体は鉄棍
その背後
武装ゴブリン 五体
全員鎖帷子
盾持ち二
槍三
さらに
通路右
イレギュラー武装ゴブリン
赤い目
大剣装備
合計 八
真田は息を整える
「ちょうどいい」
同時突進
床が砕ける
ゴブリン盾が前へ
槍が突き出る
真田は後退しない
踏み込む
ハルバート横薙ぎ
盾を弾く
隙間
打刀抜刀
喉
血
一体目崩れる
だが止まらない
オークが踏み潰す勢いで来る
大斧振り下ろし
転がる
床が裂ける
衝撃が背骨を打つ
DEFが受け止める
だが重い
「……効くな」
鉄棍が横から走る
籠手で受ける
火花
腕が痺れる
マロンが跳ぶ
槍持ちの脚へ噛みつく
振り回す
壁へ叩きつける
骨が砕ける音
炎はまだ
温存
真田は身体強化D 発動
血流が加速する
視界が澄む
大斧オークへ踏み込む
鎧の脇下
突く
深く
だが抜けない
鉄棍が背へ
壁へ叩きつけられる
肺が潰れる
一瞬白
ゴブリン大剣が迫る
寸前
ハルバートで弾く
火花
距離を詰める
首へ一閃
イレギュラー崩れる
オーク一体が倒れる
残り
鉄棍オーク
ゴブリン三
混戦
槍が背を掠める
血
「……まだ甘い」
マロン
「今だ」
炎
三秒
扇状
通路が赤く染まる
ゴブリン二体焼け崩れる
最後の一体は盾を捨て逃げようとする
真田が追う
ハルバート
背中
貫く
残るは鉄棍オーク
単体
だが重い
真正面から来る
床が震える
真田は真正面で受ける
鉄棍を滑らせる
踏み込む
脇腹へ刺す
抜く
返す
首
深く
押し込む
巨体が揺れる
崩れる
静寂
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呼吸が荒い
身体強化が切れる
膝が震える
あーちゃん
『六階上位個体 SP吸収率 71%』
上がった
真田は息を吐く
「……まだ吸えるな」
マロンが戻る
尻尾が短く揺れる
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ドロップ
大斧 ×1
鉄棍 ×1
長剣 ×3
大盾 ×2
鎖帷子 ×3
胸当て ×2
籠手 ×4
魔石
中 ×4
大 ×1
ポーション
ヒルD ×2
ライフD ×1
床に散らばる
真田は影を開く
吸い込ませる
「六階は、まだ使える」
だが
完全ではない
疲労は残る
七階はまだ先
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真田は階段方向を見る
「今日はここまでだ」
マロンが並ぶ
六階は制圧した
七階は待っている
だが今は、売りに行こう
大広間の転移陣が淡く光る
だが真田はすぐに乗らない
まず整える
温泉区画の奥
シャワー室
湯気
石壁に反射する光
鎧を外す
籠手
胸当て
ブーツ
汗の匂い
鉄の匂い
血の痕
シャワーをひねる
冷水
一瞬で意識が締まる
熱を落とす
六階の匂いを洗い流す
戦闘の顔を落とす
あーちゃん
『社会モード切替』
声は影の内側から響く
真田は無言
タオルで水気を拭く
影から着替えを出す
黒の長袖
シンプルなパンツ
軽量ジャケット
髪を整える
軽く櫛を通す
無精ひげを剃るか迷い
やめる
少しだけ残す
疲労は隠せないが
荒れは見せない
「よし」
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転移陣へ歩く
足元の紋様が光る
浮遊感
青白い閃光
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