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惑星は推しを滅ぼせない 〜文明保護ダンジョンとフレブル連れの探索者〜  作者: まえった


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35話 悪化は止まった

35話 悪化は止まった


ダンジョン建物の自動ドアが閉まる


背後に残るのは

近未来スキャンゲートの青白い光


巨大な外殻


あの建物の地下に

六階がある


静かな大広間

温泉

転移陣


整えた場所


真田は一度だけ振り返る


戻る


だが今は帰る



駐車場


コンクリートの照り返し


ジム兄が駐車してある


まだ壊れていない相棒


ダンジョンに足を踏み入れて

まだ長くはない


それでも今日は

確実に一線を越えた日だった


真田は運転席に乗り込む


エンジンがかかる


現実の音



郊外の住宅地


古い一戸建て


塀は色あせ

門灯は少し傾いている


ジム兄を車庫に入れる


エンジンを切る


静寂


バッグの中


ヒルポーションE 一本


それだけが重い



玄関


鍵を回す


「ただいま」


中から声


「……おかえり」


細い


だが崩れてはいない


母は

治療法の確立していない難病を抱えている


医療は進行を遅らせることしかできない


完治はない


ただ

少しずつ

体力が落ちていく


それを止めたいだけ



リビング


布団

薬の袋


母は横になっている


軽い咳

微熱


真田は座る


バッグを開ける


青い小瓶


ヒルポーションE


母が目を細める


「それ、例のポーション?」


「ヒルE」


「売れば高いんでしょう?」


「売らない」


母は小さく笑う


「無理しないでよ」


真田は瓶を開ける


「飲め」



ゆっくり口に含む


飲み込む


静寂


光は出ない

音もない


派手な奇跡はない


だが


呼吸が変わる


肩の上下が穏やかになる


咳が止まる


額の熱が下がる


真田は目を離さない


数秒


母が目を開ける


「……あ、楽」


劇的ではない


だが


進行の波が止まる


落ちない

崩れない


止まった



数分後


顔色が戻る


呼吸は安定


咳は完全には消えない


だが悪化しない


真田はゆっくり息を吐く


「治ったわけじゃない」


母がうなずく


「でも、楽になった」


それでいい


今はそれでいい



マロンが足元に来る


母が微笑む


「かわいいわね」


真田は軽くうなずく


六階より

今の方が緊張していた




母は眠っている


呼吸は穏やか


乱れない

崩れない


真田は窓の外を見る


遠くにダンジョン建物の光


地下六階


整えた場所


次は


Dランク


止めるだけじゃない


少しでも良くする


真田は小さく呟く


「拾う」


静かに

確実に


悪化は止まった


だから


次へ行ける


六階を越えて、

初めての帰宅回でした


ヒルポーションは奇跡ではありません

ですが「止める」ことはできます


進行を止めること

悪化を止めること


それだけでも、人は前を向ける


ダンジョンは強くなる物語ですが

同時に、守る物語でもあります


次は再び六階


整えた場所で、

本当に必要なものを拾いにいきます


もし少しでも心に残るものがあれば

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです


六階は、まだ始まったばかりです

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