28話 地下五階 ― 炎と刃の更新
28話 地下五階 ― 炎と刃の更新
地下五階探索通路
安全区域は遠い
折れ曲がる石壁
自衛官の視線は届かない
影の奥
ズシン
ズシン
武装オーク三
戦斧
鉄盾
鉄輪
殺気が重い
五階は“止まらない階”
⸻
「解放」
マロンの喉が赤く爆ぜる
低く
太い炎
ゴォォッ
胸部を焼く
脂が弾ける
一瞬怯む
真田が踏み込む
ハルバート
横一線
首
半分飛ぶ
沈む
⸻
盾持ちが押す
マロンが足元を焼く
石が赤くなる
バランス崩壊
顎下へ突き
貫通
沈黙
⸻
最後の一体
炎を浴びながら突進
五階はしぶとい
三秒
突破口だけ
真田が牙の内側へ滑る
喉奥
深く裂く
ようやく崩れる
消滅は遅い
長い
光粒
⸻
その時
速い足音
イレギュラーゴブリン
革鎧
鉄板肩当て
打刀
銀線が走る
本物
⸻
踏み込む
速い
ハルバートの内側
連撃
三合
四合
押される
懐が弱い
⸻
「三秒」
マロンが一点焼き
顔面
片目が潰れる
だが止まらない
執念
真田が体当たり
距離を壊す
模造刀を抜く
受ける
火花
だが
刃先が
欠ける
五階の鋼
人の鋼では削り切れない
⸻
再び間合い
マロンが足元を焼く
石が赤く染まる
跳ぶ
その瞬間
ハルバートを拾う
柄尻で顎を打つ
怯む
横一線
首を裂く
最後は突き
喉奥へ
沈む
⸻
消滅は遅い
長い
光粒
床に残る
打刀
消えない
⸻
静寂
焦げた匂い
血の蒸気
⸻
真田は模造刀を見る
刃先が細かく欠けている
削り
研ぎ
磨いた
T10鋼
だが
これは人の鋼
五階では足りない
静かに背へ戻す
捨てない
だが主役は交代
打刀を抜く
軽い
吸い付く
振る
速い
格が違う
⸻
その間
マロンが歩く
てくてく
転がる魔石を鼻でつつく
ころん
一つ咥える
ぱく
喉が赤く灯る
【SP +0.027】
二つ目
ぱく
【SP +0.041】
三つ目
ごくん
尻尾ぶんぶん
真田は止めない
「……まぁいいか」
マロンが顔を上げる
「食べてもいいけどな」
指を一本立てる
「珍しいやつや大きいのは残しとけ」
首を傾げる
「生活費があるんだからな」
真顔
五階の死地で
家計の話
マロンが
大きめの魔石を前足で押し出す
ころん
真田の足元へ
小さいのを
ぱく
【SP +0.018】
「……賢いな」
尻尾ぶんぶん
完全に甘やかし
⸻
人の気配はない
石壁の影
その奥で
あーちゃんが小さく笑う
『世界災害級が家計を気にしてる』
真田は小さく答える
「犬だ」
『魔石を食べる存在は本来、世界を滅ぼす側なんだけど』
「聞こえない」
マロンがもう一つ食べる
『契約共有でSPは全部こっちに流れてるよ』
「ありがとな」
『ちゃんと大きいの残させたね』
「生活費は大事だ」
あーちゃんは少しだけ静かになる
『でもね』
『五階でそれだけ食べられる存在は、もう普通じゃない』
真田は打刀を腰へ差す
ハルバートを担ぐ
「普通じゃなくても、生きて帰れればいい」
マロンが隣に立つ
炎は消えている
だが
目は赤い
⸻
通路奥
さらに重い足音
武装オーク
混成
五階はまだ底を見せない
だが
今は違う
炎で削り
長柄で支配し
刀で止めを刺す
戦い方は完成した
⸻
地下五階
刃の格が上がった
そして
主従の格も
一段上がった




