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忘れられない、たった一つの願いごと  作者:
最終章:想いの果てに

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繋がる世界Ⅲ

 村に帰った翌日、私は人目を避けながらある場所へ一人で向かった。



〈私が戻ってきたら最後にもう一度会えるかな?〉

〈会いたいね〉



 あの時二人で交わした会話が、私にまだ会えるかもしれないという気持ちにさせた。できればあの子が何処かへ行ってしまう前に、ちゃんと伝えたい。



 琥珀さんが言っていた。人間に騒ぎを起こして、自分の正体が知れてしまったあやかしは、その人たちの前に二度と姿を見せてはならないと。



 きっと、私がばあちゃんがいた温泉街に行くと決めた時にはもう分かっていたんだ。もう自分はもうここにはいられないって。私と会えなくなるって。




 日が暮れそうな時間の、誰もいない神社の境内。

 赤い鳥居を潜って、鳥居のそばにそびえ立つ大きな太い木に、私は視線を注いだ。



『かーごめーかーごーめー かーごのなーかのとーりーいはー』



 みんなの歌声が聞こえてきて、あの頃の情景が目に浮かぶよう。



 あの時鬼だった私は、うしろのしょうめんにいたユキちゃんを言い当てた。鏡の中で、ばあちゃんが牡丹ちゃんを言い当てたように。



 でもあの日を境に、私はまわりから目を背けるようになった。視えている全てのものから、逃げるようになった――



「――桃ちゃん」

 不意に呼ばれて、私はパッと後ろを振り返った。



 ()()のしめ縄のようにしっかりと編まれたお下げを見て私は安心する。あの時からずっと何一つ変わっていない。



 夕陽が地面を照らしていて、そこに私の影しかうつっていなかった。地面のどこを探しても、彼女の影は見当たらない。それは以前にも気付いていたこと。どうして私はずっと気付いていない振りをしていたんだろう。

 理由は分かっている。



 あの日の出来事を思い出したくなくて、いつの日か、仲が良かった近所に住んでいた麻衣ちゃんとあの子を、自分の中で置き換えてしまっていたんだ。

 麻衣ちゃんが村から引っ越していったあとも、ずっと――



「ごめんね、ユキちゃん」

 私はずっと言いたかったことを、言わなきゃならなかったことをやっとユキちゃんに言えた。



「ずっと私のこと、忘れないでいてくれてたのに。私がひとりぼっちにならないように、寂しくならないように、私に会いに来てくれてたんだよね? それなのに私、自分のことしか考えてなくて、知らない振りして、ユキちゃんにずっと酷いことしてた」



「私の方こそ。あの頃、桃ちゃんが私に気付いてくれて、一緒に遊んでくれて、それがただ嬉しかった。そして桃ちゃんにまた元気になってほしかった」

 間があってから、「桃ちゃんちの大事な薬を盗ってごめんなさい」とユキちゃんは頭を下げた。



「ううん。そのおかげで私は前に踏み出せたから。ユキちゃんは悪くないよ。だって私を想ってしたことなんでしょう?」

 


「うん」

 ユキちゃんは笑みを浮かべながら頷いた。



「私、もう行くね?」



「本当にもう行っちゃうんだね?」



「約束だから。最後に桃ちゃんに会えて良かった」



「私も。ユキちゃんに会えて良かったよ。ありがとう。ユキちゃんのこと、もう私忘れないから」



「うん、ありがとう桃ちゃん。私も忘れない」

 そう言ってユキちゃんは、橙色の夕陽に溶け込むようにして消えていった。



 ユキちゃんはそれきり、本当に私の前から姿を見せなくなった――

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