1 異世界ってやつですか?
楽しかった夏休みはあっという間に過ぎ2学期が始まろうとしている。
あんなに耳障りだった蝉の声も落ち着いてきた。
眠い目を擦りながら教室のドアを開ける。
教室には誰もいなかった。
流石に来るのが早過ぎたかと思いつつ自分の席へと向かう。
夏休みの宿題を整理していると教室に担任の佐藤先生が入ってきた。
「おっ朔こんな早い時間に登校とは珍しいな」
「おはようございます」
「いま暇か?職員室の前に書類が置いてあるから取りに行ってくれ。じゃあ任せたぞー」
先生はそういうと持っていた日直日誌と生徒名簿を置いて何処かへ去ってしまった。
「えぇ…めんどくさ…」
めんどくさくはあったがやることがなく暇だったし先生に頼まれたことなので職員室に向かうことにした。
教室のドアを開けるとむわっと熱気が入ってきた。
暑さのピークは過ぎたとはいえまだまだ暑い。
廊下を歩いているがさっきの佐藤先生以外人を見かけない。
まだ早い時間とはいえここまで人がいないものなのだろうか。
その時だった。
足元に紫色に光輝く見慣れない模様が浮かび上がる。
体が固まり視界が真っ白になっていく。
「は?え…ちょっとまt―」
―――
目を開けると森の中にいた?
「お?…ん?……はぁ⁈」
突然のことに一瞬脳が処理落ちしたが即座に緊張が走った。
いやどこだよここ
遭難したのか?
さっきまで学校いたのに?
意味わからんわ〜
そのときバサバサと何かが羽ばたく音が聞こえた。
その瞬間森の上を人よりも遥かに巨大な鳥が通り過ぎていく。
驚いて見上げてみるとその景色に目を見開いた。
「なんだよあれ」
それは鳥よりも遥か上空に広がっていた。
なんと金色に輝く巨大な木が空を覆っていたのだ。
だがそのことから一つの答えが導き出された。
ここは異世界だ。
黄金の木に驚いて十数秒ほど思考停止してたが自分を必死に落ち着かせる。
まずは深呼吸
すぅーはぁー
…それでも全然意味わからんけどな?
とりあえず黄金の木を目印にその方向に歩いてみることにした。
―――
しばらく歩き続けたものの特に変わったことはなかった。
異世界とはいえ普通に森を歩いているだけでtheモンスターって感じのものは見かけない。
まあ転移して初っ端からドラゴンに遭遇したらたまったもんじゃないけどな。
全く生き物を見ていないというわけではない。
角が生えたリスみたいなやつだったり翼が生えたうさぎみたいなやつだったり温厚そうな感じのは何匹か見かけた。
そういえばここは異世界だが魔法とかあるのだろうか。
俺も魔法とか使えるのだろうか。
そう思うとなんかワクワクしてきた。
ひゅっ
何かが耳元を掠める。
「痛っ」
耳を触ると手にべっとりと血がついていた。
耳が切れているようだ。
あとなんか耳がビリビリしびれた感じがする。
そして木の幹に一本の矢が刺さっているのに気がついた。
背後を見ると何人かの狼の頭を持つ武器を持った人型のなにがが立っていた。
剣や弓などさまざまな武器を持っていた。
これってまずいんじゃね?
するとその中の剣を持った1人がこちらへ駆けてくる。
やばいやばい
俺は必死に足を動かしてその場から逃げようとした。
足に鋭い痛みが走り力が抜けた。
ふくらはぎに矢が刺さったようだ。
「あがっ」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い
なんだよこれ
なんで俺がこんなこと
矢に毒が塗ってあるのだろうか、全く足が動かない。
「やめろ…来るな!…っっっっっ!」
痛みによる衝撃で声にならなくなった声でもがき苦しんだ。
剣が腹を貫ぬき引き抜かれる。
腹からはドバドバと血が流れる。
痛みのせいだろうか、うまく呼吸ができない。
俺こんなとこで死ぬのか?
その人型のなにかが俺にとどめを刺そうとした瞬間。
何者かの矢がそいつの脳天を貫いた。
霞んでいく視界の奥で奴らが倒されていくのが見えた。
気づけば視界が真っ暗になった。




