筋肉トレーニングで事件を解決する探偵事務所の話。
ここは枡流探偵事務所。
筋肉トレーニングが生き甲斐の所長、枡流と助手の少女、力石が二人三脚で営んでいる。
今日は迷子猫の行方を追っていた。
枡流は猫の写真と特徴を書いた特大ポスターを背おい、駅で前スクワットをはじめた。
「おいっち、にぃ、さん、しぃー! 皆さん、こちらの猫を見ませんでしたか? 名前は白、左目が青、右目が緑、カギしっぽのかわい子ちゃんです!」
と、屈伸を繰り返しながら迷子猫の特徴を叫ぶ。
「何だあの人? こんな大通りで筋トレしてんのか?」
「なんか迷子猫探してるみたいだよ。声かけてみる?」
大男が迷子猫のポスターを背負いながらスクワットする姿はたいへん目立つ。
瞬く間に注目を集め、周囲に人だかりができていく。
力石はその横でポスターの縮小版ビラを配る。
「あら、この猫、昨日の夕方うちの庭に来ていたわ!」
「本当ですか! おいっちにー!」
枡流はスクワットを続けながら、情報提供者に詳細を尋ねる。目撃場所は迷子猫の家から300m程度の地点だった。
「ありがとうございます! 筋肉に新たな希望が宿りました!」
情報を得た二人は、ポスターを背負ったまま情報提供場所に向かった。
近所の子どもたちが枡流の背負うポスターを指差して、「さっきの猫だ!」と声をあげる。
子どもたちに聞いて目撃場所に向かうと、白は民家の軒下で震えていた。
白のお気に入りのひざ掛けと座布団、おもちゃを捕獲カゴに入れて、点々と猫おやつと水を設置する。
そして待つこと30分。
最初は警戒していたが、ついに白はカゴに入ってきた。
すぐに飼い主のもとに連れていき、間違いなく白だと確認された。
「やりましたね所長! 今日も迷える猫ちゃんを救いました!」
「ハッハッハ! やはり筋肉はすべてを解決する!」
白の飼い主から口コミを聞いた人から依頼が入り、枡流探偵事務所は今日もまた事件解決のために筋肉を活かして奔走するのである。