表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

魔王様、勇者と出会う

トリン大陸は自然豊かな大陸である。

人は神を崇め、神聖魔法を用いて国々をより豊かにした。

しかし、その大陸に暗黒魔法を使う者たちが現れた。


愛や慈悲をもって使う神聖魔法に対し、憎悪や暴力をもって使う暗黒魔法。


人は暗黒魔法を使う者を「魔人」と呼び、迫害し、大陸の北へと追いやった。


「人の心に負の感情があるのは当たり前。それなのに暗黒魔法が使えるというだけでなぜ迫害されなければならないのか?許さない!」


魔人たちは異形の物を召喚し、彼らを利用して神聖魔法を使う人々に襲い掛かった。

これをきっかけに神聖魔法と暗黒魔法の無限に近い長い戦いが始まった。

神聖魔法を率いる者は「勇者」、暗黒魔法を率いる者は「魔王」と呼ばれ、現在も繰り広げられている。


*****


トリン大陸北部、魔王が統治する魔人領域。

その中央部にある魔王城、王の間。

玉座には腰まで届く漆黒の髪と血のような真紅の瞳をした女性が頬杖をしながら臣下を見下ろし座っていた。


名はエル・ジェリル、魔人を統治している現魔王である。

歴代の魔王で初めての女性だった。

傍には白銀の髪と黄金の瞳をした男性、ルークが魔王を守るように立っていた。


「まだ駆除できねーのか?」

「は、はい」


一昨日から魔人領域に侵入してきた人間を始末できていないことにエルは苛ついていた。


「領域に入ってきた人間は一人と聞いている。只人なら魔王のオレが出なくても駆除できるだろ?召喚獣はどうした?」

「エル・ジェリル様」


ルークが苛つくエルの前に自分の右手を差し出す。

エルは不機嫌な表情でその手を握り、目を閉じる。

エルはルークの千里眼を通して現状を見た。

魔王城の先、そう遠くない距離に全身から青白い光を放つ金髪の男性が近付いてきている。

男性の背後には魔獣や魔人の屍が無数に横たわっていた。

エルはゾクゾクとした感覚に囚われ、不気味に笑いながら目を見開く。


「ルーク、どう思う?」

「たった一人でここまで倒したとなると、神聖魔法の使い手の上級者、勇者だと思われます」

「だよな!勇者気取りのバカかと思ったら本物みてーだ」

「私が駆除してきます」

「いや、もうすぐ傍に来ているんだ、オレが行く。本物の勇者ならオレが相手をしてやらねーとな!ルーク、勇者を丁重に出迎えるぞ!」

「はい」


エルはルースを伴い、王城の城壁へと向かった。


*****


魔王城の周辺は草木が生えていない荒野である。


魔王の敵は人間だけではない。

魔王は世襲ではなく、その時に一番強い者が統治していた。

それ故に魔王の座を狙って挑みに来る魔人も少なくない。

内外からの終わりのない戦いに、魔王城周辺は荒れ地と化していた。


そして現在、その戦いの頂点に立っているのがエルである。

エルは女性でありながら強大な暗黒魔法の使い手と剣術、武術を持ち合わせている。

同じく強大な暗黒魔法の使い手、従者ルークを伴っているので、歴代の魔王は短期間で消えていく中、エルは5年間以上も統治し続けていた。


二人が外壁に辿り着いた時には、すでに金髪の男性は肉眼で見える距離まで来ていた。

エルが指を鳴らすと、四本足の大型の獣と二足歩行の異形の魔人を数匹出現させ、一瞬で金髪の男性を囲み、一斉に襲い掛かった。

しかし金髪の男性は、ふう…とため息をついて右手に握っていた白銀の剣を振り上げ、左手に魔法陣を出現させる。

左手の魔法陣がキラキラと光りながら消えていくと、金髪の男性の周りに青白い結界が現れ広がっていく。

その結界の中に入った魔獣はほとんど一瞬で消え去ったが、まだ生き残っていた魔獣が金髪の男性に襲い掛かる。

金髪の男性が振り上げた剣を上下に振り下ろすと、魔獣の体が真っ二つになった。

剣は魔獣に触れていない、剣から放たれた闘気だけで瞬殺されてしまった。


「弱い。この程度の召喚獣で私が倒せると思っているとは…なめられたものです」


本気を出していなかったとはいえ、エルが放った召喚獣は暗黒魔法では上級レベルである。

それを簡単に倒されてエルは怒るどころか楽しくて心が躍っていた。


「オレが統治してここまで来られた人間は初めてだ」


外壁に立っているエルの声と気配に気付いた金髪の男性は、立ち止まると、ゆっくりと声のほうに顔を上げた。

男性のサファイアの瞳が睨みつけるようにエルを見る。


勇者の眼から憎悪を感じる。


自分に向けられる憎しみの感情にエルは小馬鹿にしたように見下して笑っていた。

しかしエルと金髪の男性の眼が合った瞬間、金髪の男性は頬を染め、目をキラキラと輝かせている。

先程まで感じていた憎しみの感情が全くなくなり、なぜか満面の笑みを見せた。

右手を胸に当て、礼儀正しくエルに会釈をする。


「はじめまして。私はロイ・クライシスと申します。あなた方の世界では勇者と呼ばれています」

「魔王エル・ジェリルだ。どうせオレを殺すのが目的だろ」

「はい、人類の災いであるあなたを殺すのが私の課せられた使命ですが…気が変わりました」

「あ?」

「魔王様、私との一騎打ちを所望します。私が負ければこの命、ご自由にしてもかまいません。ただし、私が勝てば私の願いを叶えていただきます」

「へー、オレが勝ったら軍門に下って人間を殺せと命じてもいいんだな?」

「はい」


その瞬間、勇者から激しい闘気が上がる。

エルもほぼ同時に闘気を放ち、右手をかざして空間から大鎌を取り出した。


「挑発にのってはなりません!」


ルークの忠告も今のエルには聞こえない。

ロイを千里眼で見た時からゾクゾク感が止まらない。


久しぶりに本物との戦いだ。


本気でやり合える喜びに血が沸騰しそうだった。

ルークが止める間もなくエルは飛び出し、ロイに向かって大鎌を振りかざす。

ロイがニコリと微笑むと純白の剣を抜いて待ち構えていた。

ガキイィン!という鈍い音が響く。

武器が交わった瞬間、二人の足元に白い魔法陣が浮かび上がり、ゴオオ!という音とともに光の柱が天まで立ち昇った。


(結界!?本気の一騎打ちか、面白れー!)


「さあ、本気でやり合おうぜ!勇者!」

「はい、喜んで」


勇者と魔王の闘いが始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ