7話「驚愕すべき吸血鬼の真の姿!?」
聖斧を振るう強かったセンプさえ、吸血鬼レンゾーマには歯が立たず絶命してしまった。
「フフフ! 次はきさまらの番だーっ!」
「く、来るぞっ!!」
「やる前にやるしかないわーっ!」
黒い翼を広げて身軽に飛びかかる吸血鬼に、ヤリオは聖剣を槍に変えて突く。
「ギャアーッ!」
なんと槍という間合いによって、吸血鬼の肩を貫いて血飛沫をぶちまけたのだ。
斧と違って、上にも突き出せるのが槍の利点だ。
その事に吸血鬼レンゾーマは失念していたのだ……。
「や、やったわーっ!」
しかし吸血鬼はズボッと槍から抜けて、退避するように天井へ止まる。貫かれた肩に手を当てて呻く。
「グ……グゥ~! なかなかやるではないか~っ!」
「そうと決まれば、トドメを刺せるぜーっ!」
勝ち目が見えたのでヤリオは駆け出した。
しかし吸血鬼は意地でもと、軽やかに飛び回ってかわしていく。それでもヤリオは聖槍を振り回して当てようと頑張る。
「ハハハハ! きさまの槍なんぞが当たるかーっ!」
ひょいひょいと、蝶々のように素早く舞ってヤリオの攻撃をかわしていく。
セレティーンは杖から出した火炎球を蹴り上げた。
「ファイアーシュートーッ!!」
「バカめーっ! 見え見えだーっ!!」
なんなく宙返りして、火炎球をかわす。
「な……なんという身軽さだ……。突きさえすれば勝てるのに……! ハァハァ……」
「魔法で撃っても全然当たらないわーっ!」
ヤリオは聖槍で、セレティーンは魔法で攻撃を繰り出すが、吸血鬼レンゾーマは翻弄するばかり。
「フフフ! 飽きてきたなーっ! こちらの番だぜーっ!」
両手を突き出して鋭い爪を立てながら急降下する。しかしヤリオはカッと見開いて聖槍を突き出す。
「ギャアーッ!」
吸血鬼レンゾーマの掌を貫いて血飛沫が上がる。たまらず吸血鬼は急上昇して天井へ止まった。
ハァハァ、苦悶の顔を浮かべる。
「攻撃してくれさえすれば、当たるぜーっ!」
ヤリオは勝ち目が見えて、カウンター狙いに切り替えたようだ。
吸血鬼レンゾーマは悔しそうに見下ろす。
また攻撃すればカウンターでやられかねん、ここは警戒するしかない。
「ぎ……疑問になっていた……! 勇者ヤリオ! 吸血鬼は防御力が高い……! 大抵の武器は弾けるはずだ!」
「フフフ! この聖剣アブゾリュートはなんでも切り裂ける能力を持っているのさ」
「そ……そうか……! それで私の防御力を貫いたのか……!」
セレティーンは火炎球を何個も浮かせていた。
「こっちは遠くにいても攻撃ができるのよーっ! 降りてきたら攻撃してーっ!」
「なっ!?」
「ファイアーシュートーッ!!」
セレティーンは次々と火炎球を蹴り飛ばす。吸血鬼は天井から離れてバゴンバゴン爆発をやり過ごした。
無事な方の天井へ飛び移るも、燃やされて面積が減っていく。
「そうか! 天井がなくなると降りるしかない!」
ヤリオは聖槍で身構える。
追い詰められて苦い顔の吸血鬼は天井の全てを失い、降りるしかない。
翼をもがれた鳥のようだ。
「くっ……! 私の屋根が焼けてしまっては、止めるところがない……!」
天井が焼けるという事は屋根も消えるという事。
満月が見える夜空が広がっている。
「フフフ! さすがの吸血鬼も夜空に止まる事などできはしまい。さぁ観念しろーっ!」
ヤリオは駆け出す。もはや勝ち目がないと悟った吸血鬼レンゾーマはビキビキと自らの体を肥大化させていく。
体格が膨れ上がっていって筋肉隆々になっていって、本物の翼がバサッと広がる。
そして頭は竜となった。
「グアアアアーッ!! ドラゴンに変身せざるを得ないのは、きさまらが初めてだぜーっ!」
なんと吸血鬼レンゾーマはドラゴンに変身したのだ。
一気に攻撃力も防御力も爆増し、更に翼で空中戦もできる。完全無欠となってしまった。
「そ、そうかーっ! 吸血鬼から竜血鬼になったんだーっ!!」
「ドラキュラの頭の部分がドラになっている……! つまりドラゴン族の仲間ね!!」
「ウム!」
セレティーンの的確な言葉にヤリオは頷くしかなかった。
「グアアアーッ! これできさまらの最期だーっ!! 死ねーっ!」
巨体で突進してくるが、ヤリオは聖槍で薙ぎ払って真っ二つに裂いた。
「グギャアーッ!!」
血飛沫を撒き散らしながら、上下真っ二つに絶命してしまった。
哀れな竜血鬼は、己自身が攻撃すればカウンターを食らう事を失念していた為、敗因となった。
いくら身軽でも、どんなに強い竜血鬼に変身しても、聖剣アブゾリュートの前に敵はいなかった……。
「しかし、これで骸骨剣士もいなくなるだろう。平和になった」
「そうね」
惨殺魔城を後に、二人は旅立った……。