最終話「明るい未来は、平和の先にあるーっ!」
最強の魔王四天王をも瞬殺したヤリオとセレティーンは歴戦のような顔で、魔王のいるべきはるか向こうの魔族領域を見据えた。
向こうの空から渦巻いている暗雲は稲光を迸らせ、常に大地は揺れ続けていた。
まるで終末の世かと思わせられる。
「おいおい! ヤバいじゃないかーっ!」
「ああ! しかし、ここから数百キロもの遠いのでは間に合わないーっ!」
なぜか生きていた【氷河勇者ハドガーラ】と【天光勇者ソロアルクス】は焦りを滲ませて絶叫するしかないーっ!
一方で魔王ドロデンスは歓喜に湧いていた。
「フハハハハーッ!! 宇宙さえも掌握できるほどの究極魔法を試すかーっ!!」
星の核にまで届くほどの大穴からは眩い光が出ていて、稲光が走っている。
それを前に魔王は両手をかざして高笑いしている。
「まずはこの星の人類を滅ぼしてから、宇宙侵略だーっ!!」
片手を振り下ろすと、大きく地鳴りがして、地表を切り裂くような衝撃波が走って大国に直撃すると空高く衝撃波を噴き上げて消し飛ばした。
逆の片手を振り下ろすと、地表を裂く衝撃波が軌道上の村や町を粉砕し、大国に直撃すると天高く噴き上げた。
魔王が軽く挙動するだけで、各地の国は滅んでいく。
ただ、そこにいるだけで人類は滅ぼせてしまう。それほどの力なのだ。
その気になれば太陽系まるごと消し飛ばせるだろう。
「最強の勇者も、ここまで来る頃には人類滅んでおるわーっ!!」
そんな凄惨で、どうしようもない絶望に、ヤリオは歯ぎしりして悔しがる。
ここから数百キロも離れていては、例えマッハで駆け抜けたとしても間に合わない。
するとセレティーンは神妙な顔で肩を掴んでくる。
「ヤリオ! あなたには女神から授かった能力があるでしょーっ!」
「ハッ! そうか!! わざわざ駆けつけなくても、オレの能力なら……!」
セレティーンはヤリオの聖槍を握る手に手をそえた。
二人分の魔力が上乗せされ、更に周囲から精霊の力があちこちから集まってきて、莫大なエネルギーがヤリオに溜め込まれていく。
信じられないような力が沸いてきて、ヤリオは聖槍を魔王に向けた。
「行きなさい!! ヤリオ!!」
「行けーっ!! シャイニングサン・ファイナル・インフィニティ・ストライクランサーッ!!」
太陽の輝きがヤリオの全身から溢れて、聖槍は超高速で刃先を伸ばし続けていった。
光り輝く穂先はまるで閃光のように、真っすぐの軌跡を描きながら魔王へと伸び続けていく。
それは大地を、森を裂き、幾重の山脈を貫き、魔王へと一直線に伸び続ける。
それを阻むべき、大型のゴーレムも邪悪竜も巨人も自らを盾に立ち塞がる。
「そうはさせんーっ!」
「この命に代えても、魔王さまを守るのだーっ!」
「我らが魔族! 誇りを持って人類を滅ぼすべき、魔王さまに命を捧げるーっ!」
「「「通させはさせんぞーっ! 勇者ヤリオよーっ!!」」」
凄まじい威圧とオーラで巨人な肉壁として阻むが、それでも「ギャアーッ!」と破竹の勢いで貫かれて次々と絶命していく。もはや邪魔する者は誰もいないーっ。
「くうっ! だが、数百キロも伸ばし続けるのはキツいぜ……!」
「ヤリオーっ! がんばってー!!」
莫大な力を放射する反動と疲労感にヤリオは呻く。
目が霞むも、必死に力を注いで超長距離伸縮に集中させた。
「やってやりおおおおおっ!! 届けェェェェエッ!!!」
裂帛の気合いでヤリオは最後の力を振り絞った。
その岩をも貫くほどの一念が、伸びる聖槍に更なる力を与えて、魔王へと届かせた。それに魔王は見開く。そのまま聖槍は魔王の心臓を一気にグサッと刺し貫いた。
「ギャアーッ!!!」
魔王は苦悶の顔で絶命した。
しかし、魔王の支配から解き放たれた星の力は暴走して魔族領域で大爆発を起こす。
その凄まじい爆風は数百キロにも吹き荒れていって、地響きと共に世界を覆い尽くしていった。
しかも星の穴から莫大なエネルギーが連発レーザーのように乱射されて太陽、他の惑星をことごとく粉砕し続けて、恒星系が破壊し尽くされて、しかも太陽系外にも破壊が及んでいく。
「しまったーっ!! このままでは銀河系ごと壊れてしまうーっ!」
「今度は私が頑張る番ねーっ!」
セレティーンは四大精霊を召喚し、同時に属性魔法をぶつけ合って極限超圧縮させる事で通常の数千億倍もの超重力の球体が生まれる。
いわゆるブラックホールで、その事象は光すら捻じ曲げてしまう。だから空間や時空にも影響を及ぼせる。
これによって未来へ加速する事は有名だが、実は過去に戻る事も可能なのだ。
そう重力の流れを逆流させればいいのだ。
「さぁ! これを反転ーっ! 魔王が星に穴を開ける前にまで時を戻すわよーっ!」
「さすがエルフの魔法は底知れないーっ!」
魔王の命以外の全てが巻き戻っていって、吹き荒れていた余波と破片は全て星の穴へ埋まっていって、何事もなかったかのように塞がってしまった。
その瞬間、超重力の球体を消す。これ以上の逆行は必要ないからな。
こうして、銀河系の危機は避けられたのであった……。
「……これで魔王は死んだーっ! そして世は平和になったんだーっ!」
ヤリオは聖槍掲げて、後方の朝日で煌めいた。
これからの明るい未来は平和の先にある。
この壮絶な冒険譚は、後の世まで永く語り継がれていった……。
~完~




