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30話「多頭竜ヒドラの大進撃!」

 翌日の朝、リーザフの死骸を埋めて簡易的な木の墓を立てた。

 ヤリオ、セレティーン、フェクルセ、ギャンザは静かに合掌して祈りを捧げた。


「しかし……次々と死んでしまうのは忍びないな……」

「ヤリオ、死んだら二度と生き返らない。異世界といえども例外はない。ゲームのようにいかないんだ」


 沈むヤリオに、フェクルセは首を振る。

 同じ移転者転生者として共感はしているが、今は魔王を倒す為に前を進むしかない。


「クアウブの所で楽しくやってくれるんじゃないーっ?」

「そう願いたいわね」


 落ち込むギャンザは気丈に振る舞い、セレティーンは悲しげに笑う。


 そしてアルラウネが朽ち果てた荒野を後に、ヤリオたちは旅立った。

 魔王を倒すまで止まれないと決意を新たに……。

 黄金馬車も破壊されているので、徒歩で険しい旅路を進んでいった。


 すると丘の上から大きな王国が見えてきた。そばに広大な湖がある。


「見えてきたぞ。あれが魔法都市キュプリリンだ」

「久しぶりねーっ! あそこ魔法文明が盛んで学校もある華やかなところよーっ!」

「あたしはそこの魔導小学校で学んだのよーっ!」


 魔法に精通しているセレティーンに加え、小学校へ通っていたというギャンザは懐かしんだ。

 ヤリオはフェクルセと顔を見合わせて笑む。

 すると、遠目で見える王国の中から爆炎がドンドン断続的に吹き上げていた。


「まさか! 魔王軍かーっ!?」

「行かねばならんーっ!」

「ええ!」

「滅ぼしはさせないんだからーっ!」


 ヤリオたちは急いで魔法都市キュプリリンへ向かっていったーっ!



 その頃、魔法都市キュプリリンの都市部で、無数の龍の頭を生やした四足歩行の竜がのしのし侵攻していた。


「ギャヒヒヒーッ! 我は多頭竜(ヒドラ)のクサナギよーっ! 死ねーっ!!」


 一斉に複数の頭がそう喋ると、同時に炎を吐く。

 しかもそれぞれ頭の方向で四方八方へ火炎を撒き散らすので被害は甚大だ。


「ギャアーッ!!」

「ウギャアーッ!」

「グギャアーッ!!」

「ギャアーッ!!」


 次々と建物が破壊され、罪のない人々が焼かれ死んでいく。

 なおもクサナギはズンズン進撃しながら、火炎放射を続けて被害を拡大していった。


「おのれーっ! この魔法都市キュプリリンへ侵攻するとはーっ!」

「だが、それもここまでーっ! 魔法騎士団が来たからにーっ!」

「魔法の専門となる国へ攻め込んだ事を、死んで後悔するがいいわーっ!」


「ギャヒヒヒヒヒヒーッ! ほざけーっ!! 多連火炎放射(ラッシュ・フレイム)ーっ!!」


 集中砲火と頭を束ねて、一斉に火炎放射して一つの巨大な火炎ブレスとなった。

 しかし魔法騎士は「マジカルシールドーッ!」と一斉に、半透明の盾を具現化し、それを重ねる事で絶壁となった。

 轟音とともに火炎ブレスは弾き散らされてしまう。

 魔法騎士団は不敵に笑む。


「そちらが束ねた攻撃するなら、こっちも同じ条件で防御できるんだーっ!」

「ギャヒヒヒヒヒヒーッ! 少しはやるようだなーっ!」


 多頭竜(ヒドラ)のクサナギは下卑た笑みで、素早く四足で駆け出して多頭による連続噛み付きで猛攻を仕掛ける。

 しかし魔法騎士団もただではやられない。


「アイスアローッ!!」


 氷塊を浮かせると、杖でスィングして砕くとともに氷の矢として無数飛ばした。

 しかしクサナギは前足でズンと踏みしめると火炎の壁が生えてきて、氷の矢をことごとく防ぐ。


「これが火炎放射壁(フレイムウォール)だーっ!」

「ならば、今度はこれだーっ!!」


 あらかじめ氷塊を複数浮かせて、次々と杖で砕いて無数の氷の矢を放つ。

 やはりクサナギは火炎放射壁(フレイムウォール)を前方に敷いて迎撃する構え。


「今だーっ!! トルネードジャイローッ!」


 なんと杖を扇風機のようにグルグル高速回転で振り回すと竜巻が巻き起こって、無数の氷の矢を飲み込む。

 そして竜巻による風速での遠心力で氷の矢を高速で飛ばす。

 しかも、竜巻を経由して軌道を変えれるのだ。


「ギャヒヒーッ!! 甘いわーっ!! 火炎放射壁(フレイムウォール)は前方だけじゃないぜーっ!」


 なんと四足で同時に踏みしめる事で、クサナギ自身を覆う火炎の壁が無数の氷の矢を蒸発させてしまった。


「そ……そんな……!?」

「まだ、終わらん! まだまだ終わらんよーっ!」

「今度はくらえーっ!! アースカタストロフィーッ!!」


 魔法騎士団はそろって足を振り上げて、四股を踏む事で地盤が砕けるほどの地震をクサナギの足元で炸裂した。

 しかし今度はマグマのクッションがクサナギを乗せて吹き上げた。


「ギャヒヒーッ!! まさか溶岩放射壁(フレイムラヴァ)を出させるとはなーっ!」


 絶句する魔法騎士団。

 もはや勝敗は決したようなもの。勝ちを確信したクサナギはニヤリと笑む。

 ここからは一方的な殺戮劇だと……。


「そうはさせんーっ! 秘奥義テンペストホーンーっ!!」


 なんと巨体の魔族が高速で突進してきて自慢のツノでクサナギを痛烈に弾いた。

 さしものクサナギも「ギャアーッ!!」ときりもみ回転で宙を舞う。落ちてくるところを再び魔族は突進してきてツノで弾く。

 それの繰り返しで巨体の多頭竜(ヒドラ)は「グギャアーッ!!」と次々と頭が飛んでいった。

 さしものクサナギもバラバラ死骸で白目ひん剥いて絶命……。


「ガーッガガガガッ! 最強竜(バハムート)ならいざ知らず、多頭竜(ヒドラ)ごとき我の敵ではないわーっ!」



「あ、ありがとう……」

「こやつは元魔王軍の悪魔騎士ガイアだーっ!」

「なんにしても、やっぱ元四天王だけあって強すぎるぜーっ!」

「頼もしい援軍助かったーっ!」


 魔法騎士団はもちろん、住民も歓喜に湧き上がった。わああああーっ!

 ようやくたどりつけたヤリオたちは見開いた。

 なんと大怪我して戦線を退いたはずの悪魔騎士ガイアが馳せ参じてきたのだ。


「おまえは! ガイアじゃないかーっ!」

「バハムートの戦いで負った怪我も治ったのねーっ!」

「ガッガッガッガ! この通り元気よーっ!」


 ヤリオとセレティーンは再会を喜び、ガイアと和む笑いを向けあった。

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