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29話「植物魔人アルラウネの暴食!」

 際限なく再生し続ける魔族サイクロプスを撃退したセンプは、ビビーテ町で在留騎士になった。

 つまり同じように魔族が襲ってきても彼が守ってくれる。

 そうしてヤリオとセレティーンはリーザフ、フェクルセ、ギャンザとともに旅立っていった。

 すると、巨人が不意に阻んできたぞ。


「サイサイサイーッ!! ボクはドウカー! 兄者の仇だーっ!」

「なにっ!? まだいたのか!?」

「兄者と同じく、無制限の再生力を……」


「どけーっ!!」


 ヤリオは聖剣アブゾリュートを伸ばし、ドウカーの胸板を貫いて血飛沫を撒き散らす。


「バカめーっ! この再生……しないっ!? ギャアーッ!!」


 なんでも切り裂く聖槍アブゾリュートの前に再生力など無意味。

 哀れドウカーは苦悶して絶命した。



 約五時間進んでいると、ツルがあちこち垂れている奇妙な森になっていた。


「き、奇妙な森だぜ……」

「やっぱりよーっ! ここは植物魔人アルラウネの領地よーっ!」


 セレティーンが声を張り上げた。


「まずい事になったわねーっ! 魔王軍にも与しないほど巨大勢力になってると聞くわーっ」


 ダークエルフのギャンザも苦い顔だ。

 エルフの二人なら、長生きしているのと森の事情に詳しい。


《ウネウネウネーッ! 獲物がやってきたようねーっ!》

「だ、誰だーっ!?」


 声が響いてきて、ヤリオは汗を垂らしながら見わたす。

 するとツルが急に動き出して、黄金馬車を絡め取っていく。慌ててヤリオたちは抜け出した。それが幸いか、巨大なツルが巻きついていて黄金馬車はグシャッと締め壊されてしまった。

 それに戦慄する。


「抜け出さなければ危なかったですね……」

「しかし、ツルを操っているヤツは一体!?」


 地響きが大きくなっていくと、森が騒ぎ出す。ザワザワ小刻みに震えて葉っぱを散らしていく。

 すると巨大な影が覆ってくる。思わず見上げる。


「あれを見ろーっ!」

「ゲ、ゲェ────ッ!! デカいーっ!!」


 なんと先ほどの一つ目巨人が可愛く見えるぐらい、超巨大な世界樹がメリメリ伸びてくるではないか。

 いや、世界樹の幹は女性の体で、おいしげる葉っぱが髪の毛のようでその下で冷徹な女性の顔が窺える。

 ニヤリと笑んでくる。

 セレティーンとギャンザは汗を頬に垂らす。


「あ、あれが……植物魔人アルラウネよーっ!!」

「前よりも巨大になってるわーっ!!」


《ウネウネウネーッ! そうだーっ! 私こそが植物魔人アルラウネさまよーっ! もはや600キロ範囲は私の領地ーっ! あらゆる全てを食らいつくし、人類も魔族も、そして惑星ごと食らってやるわーっ!!》


 なんと、そう語ってくるアルラウネは巨体に見合った野望を滾らせていた。

 まさに全てを喰らい尽くす暴食魔ともいえる。

 すると森がざわめいて、あちこちから巨大アリの軍団が群がってきた。


《アリとは、アルラウネの名前を冠した下僕なのよーっ!》

「そ、そうだったのかーっ!?」


 驚愕すべき真実にヤリオは一つ物を知った。


《だが死ねーっ! 勇者の旅もこれまでよーっ!》


 植物魔人アルラウネの叫びに、アリ軍団は一斉に襲いかかってくる。

 ヤリオ、セレティーン、リーザフ、フェクルセ、ギャンザは「くっ!」と戦慄を感じながら、各々の聖剣を手に戦い始めた。


「ストライクランサーッ!!」


 ヤリオはなんでも斬れる聖剣アブゾリュートを槍に変えて、振り回してアリをことごとく切り裂いていく。


「ファイアーシュートーッ!!」


 セレティーンは火炎球を並べて、次々蹴り出していってアリごと森を燃やす。


「デスアロー!!」


 リーザフは左腕の聖弓デスボウから、無限に光線を放ってアリを撃ち貫いていく。


「パーフェクト・ジェノサイドーっ!!」


 フェクルセは聖剣ハカメで電撃ほとばしるオーラを全身にまとって、高まった身体能力で剣技を披露してアリ軍団をことごとく切り裂く。


「負けないわよーっ! レインボーネットーッ!!」


 ギャンザは両手十指の聖糸アカイトから、炎、氷、風、雷、岩、闇を付加した糸を繰り出して爆炎を、凍結を、裂傷を、感電を、撲殺を、闇の衝撃をレインボーがごとく繰り出してアリ軍団を駆逐していく。


《この森は自分自身でもあるーっ! 故に無制限よーっ!!》


 次々とアリ軍団が押し寄せてきて、幾度も駆逐しようがキリがない。

 しかも植物にとって弱点になるはずの火炎も、アルラウネ自身が水の魔法を操る為に防炎されてしまう。既に対策済み。


「も……、もう……四時間は戦っているぜ……!」

「先にこっちが力尽きるわーっ!」


 ヤリオとセレティーンは背中をあずけ合って息を切らし、疲労に悩ませられる。

 リーザフ、フェクルセ、ギャンザはハァハァと苦しい息をしていた。

 そろそろ日が暮れて空が橙に滲んでいく。暗くなれば魔族の独壇場、更に劣勢に追い込まれるだろう。


《そうやってみんな力尽きたのよーっ! ウネウネウネーッ!》

「きさまーっ!」


 ヤリオは聖剣アブゾリュートを更に長く伸ばして、ブンブン大回転して周囲の森ごとアリを切り裂いていく。

 それでも際限なくアリ軍団が押し寄せて、切り裂くそばから補充される始末。

 魔力を無制限にできないヤリオはハァハァと息を切らして、動きが鈍っていく。


《今だ! 死ねーっ!!》


 枝の矢が飛んできてヤリオは見開く。悲惨にも血飛沫が噴き上がった。


「ギャアーッ!!」


 なんとリーザフが背中を盾に飛び出していて、枝の矢が貫いたのだ。

 落下したリーザフに駆け寄るヤリオ。


「なぜかばったーっ!?」

「ハァハァ……、ほっほっほ……。勘違いしては……困りますね……。私は……あなたが邪魔だったから……追い出そうとしただけです…………」

「リーザフーッ!!」


 涙を流すヤリオにリーザフは微笑む。


「い……今まで……楽しかったでした……。さぁ……逃げなさい……ガクッ」


 満足な笑顔でリーザフは絶命した。

 ヤリオは天へ向かって「うおおおお~~っ!!」と慟哭ーっ!

 セレティーンもギャンザも涙を流して嗚咽している。


「……ヤリオ、セレティーン、ギャンザ! きさまらは逃げろ! ここは私が引き受ける!」


 フェクルセは残った体力をオーラに変えてボウッと全身から噴き上げる。

 例え力尽きようとも時間稼ぎはしてみせると心意気を見せた。


「さぁ、私が相t……」

「もう許さんーっ!! きさまは絶対に倒してやるーっ!!」


 怒り狂ったヤリオは自ら発光して、聖槍アブゾリュートを高速で伸ばし続けた。

 まるで怒髪天がごとく、勢いよく伸びる聖槍は輝いている。その神々しさにアルラウネは見開いた。


「な、なにーっ!? 人間ごときが、これほどの魔力をーっ!?」

「これが人類の底力だーっ!! 貫けーっ!! ファイナル・ストライクランサーッ!!」


 後光から放たれたかのような光の聖槍がアルラウネの胸板を見事貫き、血飛沫を撒き散らした。


「ギャアーッ!!」


 こうしてアルラウネは絶命し、壮大な野望とともに潰えた。

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