25話「恐怖の黄金都市! アンデット族最強のリッチ!」
ヤリオとセレティーンは、山岳地帯の頂上で出会ったリーザフ、フェクルセ、ギャンザ、クアウブの四人を仲間に加えて下山していた。
その時、切り立った丘の上に六人は足を止めた。
その隣で滝が凄まじい水流で流れ落ちている。
「腹が減ったでしょう? 見てて!」
何を思ったかダークエルフのギャンザは滝へ指さす。
怒涛の滝をものともせず登ろうとするコイが数匹見かけた。
「こ、コイが滝登りをーっ!?」
「聞いてたけど見るのは初めてねーっ」
驚くヤリオ、感心するセレティーン。
やがて登りきろうとするコイに、ギャンザは身構えたようだ。彼女は両手十指に指輪型聖剣がはめられている。
「コイはそのまま食べるよりも、進化させてからのほうが美味しいわーっ」
「進化……?」
「まぁ、見てなさい」
疑問に思ったヤリオにリーザフは知ってるかのような素振りで見聞を促してくる。
コイが滝を登りきって飛び出た時、その魚の体がググググと伸びていって緑色に変色していって、一般的に龍といえるモンスターに変貌していく。
その瞬間、ギャンザは両腕を振るって指輪から発生した赤い糸で進化したばかりの龍をグルグル巻きつけて絡め取ってしまう。
「その瞬間、血抜きと寄生虫殺害のデバフを付加させて輪切りよーっ!」
「ギャアーッ!」
シュバッとギャンザは両腕を振るい切ると、龍は輪切りにされて宙を舞う。
それをヤリオ、セレティーン、リーザフ、フェクルセ、ギャンザ、クアウブは輪切りにされた肉片を上手く手に取って口に入れた。
「美味い!!」
「美味いわねーっ!」
「でしょうーっ!」
ギャンザは得意げだ。
続いて昇ってくるコイが進化した龍を次々と輪切りにして、昼飯の足しにした。
せっかく龍になって天を駆け抜ける運命が彼らによって絶たれてしまった。しょうがない。
「プウーッ! 満腹だぜ。しかし、ここは回りこんで下山できる地形を探すしかない」
切り立った丘から降りるわけには行かない。普通死ぬ。
しかしリーザフは「その必要ありませんよ。そんな事したら日が暮れちゃいますよ」と止めてくる。
「で、でも空を飛べるのがフェクルセだけでは……」
「私ではない」
「そうだ。そのためにオレがいる」
「クアウブが!?」
なんとスライムの転生者クアウブが空気をありったけ吸う。
たちまちプクーッと膨らんでいく体。
そして触手を複数伸ばして、ヤリオ、セレティーン、リーザフ、フェクルセ、ギャンザを捕らえると体内へ取り込んでしまう。
「く、食われたーっ!?」
「落ち着けヤリオ! ここからがクアウブの真価だーっ!」
柔らかく弾力のある体内でヤリオとセレティーンは戸惑うが、同じく取り込まれたリーザフ、フェクルセ、ギャンザは落ち着いている。
すると大きく丸くなったクアウブが丘から転がり落ちた。
「うわあああああああああーっ!!」
高い所から急速落下して、そのまま森へ激突するとポヨンポヨンと跳ねて更に坂を転がり始めた。
木々の間を通り抜けて屈折しながら転がっていくのだ。
その時、オークやゴブリンなどが「うわああああ!!」と出くわすが、転がってきたクアウブに潰されて「ギャアーッ!」と絶命していった。
このように次々とイノシシ、クマ、オーガ、トロル、虫人間、獣人ウルフマンを「ギャアーッ!」とひき殺していった。
「ほっほっほ。こうして私たちはレベルアップしたのですよ。こういう風に勝手に経験値が転がってきますからね」
「あ、確かに……」
「こうして強くなっていったのねーっ!」
モンスターを倒すたびにレベルアップしていくのは転移者転生者にとっては周知。
なので、クアウブがひき殺した事によりパーティーに経験値が累積していってレベルアップする要因となった。
転がり終わる頃には、山脈は遠い彼方。
「ちんたら歩いていたら、日が暮れていたぜーっ」
「下手したら一日分の距離なのよーっ! それをわずか一時間そこらでーっ!」
クアウブから抜け出した一行は、向こうの山脈を見ていた。
そして体感としてはレベルが一〇くらい上がった感じだ。こうやってリーザフたちはレベルアップして、初心者から歴戦の勇者に変身したのだろう。
「さ……さすがは歴戦の勇者だ……」
「そうねーっ。わたしたちは魔王四天王や魔轟六将を倒してたけど、この方法もあったなんてーっ」
「おい! 見ろ!!」
フェクルセの警戒を含む声に、リーザフたちは振り向く。
なんと眼前に黄金にキラキラする都市があるではないか。物のたとえではなく、屋根も壁も床も木も人々も黄金にきらめいているのだ。
しかし人々は黄金像っていうよりも、まるで凍って固まったかのように見える。
「一体何があったんだーっ!?」
するとボワ~ッと浮かび上がってくるガイコツ。
「ま、また骸骨剣士かーっ!?」
「いや、待って! 高そうなローブを着ているーっ!?」
動くガイコツがまるで高貴な魔道士ローブを着ていて、黄金の王冠、指輪、腕輪などを身につけている。
そして底知れない魔力を滲ませてきている。
「リチリチリチーッ! 初めましてーっ! 我はアンデット族最強の骸骨富豪よーっ!」
豪勢な装飾を身につけた骸骨富豪がニヤリと不敵な笑みを見せていた。
自信満々と手をかざすと電撃ビームを放ち、それを浴びたクアウブが黄金化してコチーンと固まって絶命した。
こうやって都市ごと黄金化させて壊滅したのだ。恐るべし。
「ク、クアウブーッ!?」
「リチリチリチリチリチーッ! 我が【富豪魔術】を浴びれば、黄金となって死ぬのだーっ! そして最大出力で皆殺しだーっ!!」
バッと両手を掲げて電撃をまとわせていくが、ヤリオは駆け出して聖剣を槍に伸ばす。
「ストライクランサーッ!!」
「バカめーっ! その槍ごと黄金化して死ねーっ!!」
両手を差し出して強烈電撃を放つが、伸びてくる聖槍はそれすら切り裂く。
なんでも切り裂く聖槍アブゾリュートに、超強力な富豪魔術も例外ではなく裂かれたのだ。
そのまま骸骨富豪を貫通して血飛沫が四方に舞った。
「ギャアーッ!! バ、バカなーっ!?」
哀れ、骸骨富豪は絶命した。
リーザフ、ギャンザ、フェクルセは「ああ……!」と呆気にとられた。
普通に戦えば苦戦するかもしれないし、下手すれば即死の黄金化で全滅もあり得る。
「さすがヤリオよーっ! 一撃でしとめたわーっ!」
「ああ、だがその為にクアウブは犠牲になったんだ……。みんなで弔おうぜ」
沈んだ気持ちでリーザフたちは祈りを捧げた。
あと次の町で、黄金のクアウブを黄金像として売って億万長者となった。




